オカンの片鱗
「ちょっと待って!先にご主人様に話してくるからここで待ってて。」
リアさんが慌てて脱衣所を出ようとした私達を止めた。
「シス、私が話してくるから、ここで待っててもらってね。」
シスさんを残しリアさんが出ていく。
「よし、じゃあちょっと覗いてみましょう。」
私が少し扉を開けて外を覗くと双子も私の下から覗きだした。
扉のむこうは大きな部屋になっていて男の人が1人いる。
何故か、大量のセメント袋のような物を出したり消したりしてる。
あれがシリアスさんなのだろう。
後ろ姿しか見えないが中々いい感じだ。
「キョウカ殿、覗くならもう少し扉を閉めてもらった方が・・・。」
「2人とも準備は良い?行くけど走っちゃ駄目よ。淑女なんだからシズシズ歩くのよ。」
「淑女。」
「シズシズ。」
女は度胸よ。
さぁ、行くわ!
俺が砂糖吸収をして心を落ち着けていると脱衣所からリアがやって来た。
どうやら無事終わったようだ。
「ご主人様~ちょっと相談したいことが・・・・。」
俺がリアの話を聞こうとしていると脱衣所の扉が開き、3人娘が突進してきた。
走ってるわけでは無いのに何気に早く、上半身がまったくブレずに近づいてくるので気持ち悪い。
「なっ!」
「シリアスさんですね。リアさんからお話があったと思いますがご挨拶に伺いました。私がキョウカです。」
「魔乳のザキ。」
「魔乳のルド。」
双子の言葉が俺を混乱させる。
逃げだす事も出来ずに固まる俺の手をキョウカが握りしめる。
マズイ!捕まった。
「あのような素晴らしいお風呂を用意して頂いて有難う御座います。」
「あり。」
「がと。」
「あ、あぁ、別にあれくらい気にする必要はない。シスやリアと仲良くしてくれて有難いくらいだ。」
もう帰れ!
「あの・・・少しでいいのでお話出来ませんか?」
上目遣いで聞いて来たが、断ったら襲われたりするのだろうか。
「じゃあ、食堂でどうだ?風呂上がりだし冷たい物でも飲んで水分補給をするといい。」
マズイな。
1人が死ぬ気で攻撃してきたら終わりだ。
なんとか誤魔化して穏便に帰ってもらうしかない。
食堂に案内するとシスが少し遅れて入ってきた。
風呂場の後始末をしていてくれたようだ。
フルーツ牛乳を渡すと双子は躊躇なく飲み干し、お替りを要求してきた。
苦笑しながらキョウカが謝って常識人を装ってくるが、押しの強さからおばさん臭がする。
「それで話とはなんだ?」
「そんなたいそうな話しじゃ無いんです。同じ日本人として交友を深められたらなぁと思いまして。」
キョウカが赤い顔をして言うが、俺の警戒心はMAX状態だ。
「私達は今日からここに住む。」
「首輪を着けてるから問題ない。」
双子の爆弾発言に俺ばかりかキョウカもギョッとする。
「ゴルドの従者じゃないのか?」
「あれは駄目。」
「だから廃棄。」
ゴルドを殺す気だ!
「なぜ、ここに住みたい?」
「美味しい物がある。」
「魔乳になる。」
リアとシスの胸を見ながらそう答えやがった。
この2人は危険だ。
「だ、駄目よ、ザキちゃんルドちゃん。我儘言って困らせたら駄目よ。」
「困る?」
「困った?」
「まぁ、ゴルドを廃棄するとか言われたら、なんと言っていいのか分からなくなるな。」
「わかった。」
「正規の手順を踏む。」
何をするつもりだ。
「あ、あの~・・・。」
「なんだ?」
「差し出がましいお願いなんですが、また時々お風呂使わせてもらえたらと思いまして。・・・お願い出来ますか?もちろん無料とは言いません。」
キョウカが鼻息荒くお願いしてきたが意図が読み切れない。
「まぁ、風呂くらいならいつでも使ってくれ。」
引き攣った笑みに見えないように気を付けて笑いかけると、キョウカがクネクネしだした。
「有難う御座います。それでスキンケアの説明なんですが、この部屋を借りてやってもいいですか?それと品物の方も頂けると助かるのですが・・・。」
そう言えばそんな事を言っていたな。
俺はキョウカに促されるまま、言われたケア用品をまとめて購入し渡した。
「じゃあ、俺は席を外す。帰るときに声をかけてくれ。」
そう言いながら席を立つと双子も席を立った。
「一緒に。」
「いく。」
殺害対象としてロックオンされてるのか?
「駄目よ、2人とも我儘言っちゃ。ほら、こっち来て。」
キョウカは物分かりがいいお姉さんを気取っているが、全ての原因はお前だ!
俺は女性陣を食堂に残し退散した。




