第十四章・踏み出した一歩
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「皆さん昨日はお疲れさまです。先生は皆さんと無事会えて嬉しいです」
いつものように小さい体を精一杯に伸ばしながらリース先生が朝のHRを始める。
「今日から皆さんは依頼をこなして単位を取らなければいけません。しかし、依頼には危険が付き物なので無理せずに自分に適した依頼を選んでください。依頼を受ける時は職員室のクラス担任に報告を入れてください」
話が終わり、リース先生が教室から出て行くと同時に教室内は騒めき始めた。
「ナキ、早速依頼をやるわよ」
「別に良いが…その前に話がある」
「良いわよ、何?」
「レンの両親を探すのをロロさんも協力してくれる事になったんだが…良いか?」
「え…協力…?」
レンは急に席を立ち、驚いた様子だった。
「勝手に話したのは悪いと思ってる…だけど、仲良くなったロロさんならきっとレンも大丈夫だと思ったんだ」
「いいのナキ…本当にありがとう。サーシェティルさんにもお礼を言わないと…」
レンは微笑を浮かべながらどこか照れていた。
「私の事はロロで良いよ!」
「うわあっ!!」
いつの間にかレンの後ろにはロロさんがいた。周りを和ませる優しい空気を纏っていた。
「私そんなに影薄いかな…」
驚かれた事がショックだったのか、ロロさんがいつもより小さく見える。
「じゃあ、よろしく…ロロ」
「うん、よろしくレンちゃん!」
「何だかよくわからないが俺も力になるぜ」
「カイト…せめてこっちに来て言ってくれ」
カイトは自分の席に座っていた。どうやらロロさんの近くに寄るのがダメらしい。
依頼の難易度はA〜Dがあり、Aに近いほど難しい依頼だが報酬もそれ相応なものだ。依頼には学園側から最低限必要な資金や道具を支給される。時には依頼中に命を落とす事もある。
「初めての依頼が薬草探しとは…」
森の中を歩きながらカイトが呟いた。
「仕方ないでしょう、掲示板にこれしかなかったんだから。それとも…いきなりCランクでも受ける気?」
「プノンの実ってどんな薬草なんだ?俺見たこと無いからわからないんだが」
「プノンの実は緑色のひし形の葉についている丸い赤い実の事だよ。1年中咲いていて、薬によく使われるんだ」
レンとロロさんに俺とカイトが続く形で歩きながら薬草を探していると、木の根元にそれらしい草を見つけた。
「ロロさんこれってプノンの実?」
「うん、そうだよ。えーと…プノンの実を80個取ってきて下さい」
「80個か…ちょっと多いな」
ナキが取った草には直径1cm程の赤い実が5個ついていた。
「プノンの実は1カ所に固まって沢山生えるから、この辺りで探しましょう」
俺とレンが左側、ロロさんとカイトが右側を探す事にした。
「ナキ…場所を交換しないか?」
「カイト頑張れ!、何か克服できるきっかけがあるかもしれないぞ?」
「そ、そうだな…何かきっかけが……」
「カイトく〜ん!、見てみてこんなにあったよ!」
「や、やっぱり無理だー!!!」
怖がるカイトを笑顔で追いかけるロロさん。今だけはロロさんの笑顔が怖い。
「全く騒がしいわね…」
「騒がしいというか、賑やかって感じだな…俺は」
「賑やか…確かにその方が良いかもしれないわね」
そんな風に俺達は賑やかに薬草を探し始めた。カイトはロロさんと距離を置きながら作業していた。
「37個か…そっちは何個あった?」
「こっちは36個だよ。あと7個だね」
ふと空をみると夕日で空が赤く染まっているようだった。
「早く見つけないとな……お、あったあった…よし、これで80個だ!」
木の陰にあったプノンの実を手に入れ喜んでいると後ろに何かがいるのに気付いた。
ギギ…シー…
振り返るとそこには紫色の体に水色の模様で毒々しさ漂わせる巨大な蛇がいた。
ネックバイト
全長2mの巨大な毒蛇。牙から出る毒液で噛みついた対象を溶かしながら喰いちぎる。植物しか食べないが外敵には容赦なく襲いかかる。
…シャー!!
「何で来るんだよっ!」
ギギィイ!!
左足で蹴り飛ばし怯んだ隙にナキは走り出した。
[お困りですか?]
[モラ!、見ての通りピンチだよ!だけど…頼らないからな]
[分かりました…くれぐれも死なないように頑張って下さい]
心配しているのか分からない言葉を残してモラは会話を閉じた。
シャー!!
背中の方から地面をジグザグに這って近づいてきているのが分かる。
「スカイバレット!」
ギギャー!!
聞き慣れた声と共に、ナキの目の前から2羽の鳥のような物が左右を通りネックバイトに命中した。
「今だナキ!決めろ!」
「スラッシュモード…衝波刃!」
腕を交差させ目の前に斬撃波を飛ばす。
真っ直ぐに飛んだ斬撃波は、ネックバイトに当たり体を切り裂いた。
「助かったぜ…カイト」
「ナキだけいないと思って探しに来たらあんなのに襲われてるとはな…」
「俺も驚いたよ…まあ、ちゃんとプノンの実も手に入れた事だし戻ろうぜ」
街に戻りリース先生に依頼の報告を入れた後、俺達は暗くなった街を歩いていた。
「学園からの支給はなにもなし、報酬はプノンの実で作られた傷薬に1人600G…か」
「このやり場のない気持ちはどうしたらいいのかしら…」
レンとカイトが言うとおりDランクの依頼ではこんな物なのだろうかと思ってしまう。
「1つの依頼だとこんな物だよ。幾つも依頼をこなせばきっと資金もあっという間に溜まるよ!」
「そうね、明日も頑張らないと」
「とりあえず……一歩前進だな」
全員で踏み出したこの一歩は本当に大きな一歩だったと思う。ただ、踏み出した足はもう…退けない。




