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caseC Mrs. yamashita

 山下かつみ。旧姓君原。ちなみに「かつみ」は男だ。かつみは婿養子としてこの山下家に入った。といっても姑も、舅もいない。別の所で生活しているのだが、舅はかつて診療所をやっていた。それがここ山下診療所である。息子のいない山下家の為にかつみは婿養子となったのだ。それも、もう昔の話。

 診療所の電話が鳴る。

「もしもし、ああ兄さん? どうしたの、どっか具合でも悪いの? ・・・え、遊園地・・・珍しいじゃない、兄さん休みとれるの? ・・・そうなの、じゃあみんなで・・・大丈夫だよ、アイツは今パート無いし。もちろんサクラも連れてっていいだろ? ・・・明日は休診日だから。うん。・・・じゃあ楽しみにしてるよ」

  

 かつみは地元ではかなり名前の通った開業医だった。「腕は良いが口が悪い」そんなことを言われる彼も、兄のヨシオにだけは態度が変わる。いや。正確には「家族にだけは」。とくに妻にはめっぽう弱い。二人が結婚して多くの年月が流れたが、子宝には恵まれなかった。サクラは養子だ。しかし、かつみはサクラを実の子のように育てている。そんなサクラも今年で3歳。そう、ヨシオの息子と同い年なのだ。

 今日はあまり患者は無い。閉院まではまだ20分以上あるが今日は早々に閉めることにした。

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