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1.悲劇は突然に・・・ caseA yoshio kimihara

 右の生垣から猫が飛び出してきた。右のペダルか? 左のペダルか? ペーパードライバーを長年続けていた君原ヨシオにはどちらがブレーキなのか、とっさの判断がつかない。一瞬の迷いの後思いきってペダルを踏み込む。加速。

「ちがーう!!」

慌ててブレーキに踏み換えた時には、もう猫の姿は見当たらなかった。ヨシオは恐る恐る車を降りてあたりを見回す。

「にゃー」

間抜けな鳴き声が別の生垣から聞こえた。なんとか人身事故(?)は免れたらしい。「ほっ」と安堵の息がもれる。


 ヨシオの勤めるコンピューター関係の会社はこのたびマイカー通勤が認められたのだった。正直なところ長い時間をかけた電車通勤には参っていた。毎日息子のハルが目を覚ます前に出勤し、寝静まってから帰宅していた。車を使えば面倒な乗換えは無いから、せめて一緒に朝飯くらいは家族と食べられるのだ。

 

「お盆休みはどこかに行きましょうよ、遊園地とか」


 今朝、妻がそんなことを言っていた。ハルが生まれてから3年。思えば家族旅行なんかした記憶が無い。もっとも会社が忙しくてそんな暇が無かったのだ。しかし今年は盆休みもとれた。

 猫の生存を見届けて車に乗り込んだヨシオは、ささやかで、そして強い決意をした。


 今年こそは家族サービスするぞ!!

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