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ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた  作者: 八又ナガト
第二章 最強の背中

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096 荒野にて

()()は……!」


 転移直後、思わず声を上げた俺の視界に映っていたのは、遠方に小さく見える魔王城跡地――ではなかった。


 その遥か手前。

 見渡す限りの荒野の一角で、数体の魔物が、一人のローブ姿の女冒険者に襲い掛かっていたのだ。

 魔物たちから放たれる魔力の圧は、どれもAランク級。

 並の冒険者であれば、一体を相手取るだけでも命懸けとなる相手だ。


(こんな場所にたった一人で……状況から考えて、まず間違いない。エルナさんとパーティーを組んでいるSランク冒険者の一人だ)


 なぜ一人きりなのか。他の仲間たちはどうしたのか。

 疑問は幾つも浮かんだが、呑気に考えていられる余裕はなかった。

 なにせ女性は既に全身傷だらけで、息も絶え絶え。今にもその場に崩れ落ちてしまいそうな有様だったからだ。


「せめて、これだけでも――」


 不意に、風に乗って女性の呟きが耳に届く。


 見れば、彼女は魔物たちを前にしながら、両掌を上に向けている。

 そして、その掌の上に魔力が集まっていくのが分かった。

 やがて形を成したのは、淡く輝く青色の鳥。

 彼女はそれを胸元へと引き寄せ、何かを吹き込むように囁き始めた。


 その間にも、魔物たちは無防備な彼女へと迫っていた。

 当然、女性もそれに気付いているはずだ。

 しかし彼女は回避や防御を試みる素振りは一切見せず、ただひたすらに言葉を紡ぎ続けていた。


「【蒼脈律動そうみゃくりつどう】」


 俺は即座に蒼脈律動を発動し、力強く駆け出した。


「ガァァァァアアアアア!」


 直後、先頭の獣型魔物が跳躍。

 その鋭い牙が、女性のもとへと振り下ろされ――


「――【纏装てんそう風断かぜたち】」


 すんでのところで割り込んだ俺の一振りが、獣の巨躯を両断した。


「……え?」


 崩れ落ちる魔物と、間に立つ俺の姿。

 目まぐるしく変わる状況に、女性は呆けたような声を漏らす。


「ガルゥ!」


「ブルァァァッ!」


「ォォォォォオ!」


 だが、まだ終わりではない。

 残る三体――獣型魔物が二体に、人型魔物が一体――が、続けざまに襲い掛かってきた。


「――遅い」


 とはいえ、Aランク魔物の動きに、今さら翻弄される俺ではない。

 俺は瞬く間に距離を詰めると、風を纏った鉄鎚剣てっついけんで残る三体を瞬時に切り伏せた。


「う、そ……」


 信じられないとばかりに、女性が声を震わせる。

 俺は鉄鎚剣を一振りして刀身に付いた血を払うと、彼女へと向き直った。


「あ、貴方は……いったい……」


 突然の救援に、まだ状況を呑み込めていないのだろう。

 困惑しながら問いかけてくる女性へ、俺は簡潔に告げる。


「俺はレスト・アルビオン。エルナさんの弟子です」


「エルナさんの、お弟子さん……? え、ということは確か、まだスキルを授かったばかりのはずじゃ……それで、今の一撃を……?」


 この反応からして、エルナから俺たち(弟子)について聞いたことがあるのだろうか。

 いずれにせよ、やはり同じパーティーメンバーで間違いないなさそうだ。

 よほど衝撃が大きかったのか、女性はしばし呆然と俺を見つめていたが……やがてハッと我に返ったように顔を上げた。


「い、いえ、それよりも! そんな方がどうして、この場所に……?」


「エルナさんを連れ戻しに来たんです」


 俺は迷いなく即答する。


「教えてください、何があったんですか!? エルナさんたちはいったい……」


 焦りを抑えきれないまま、俺は問いを重ねた。

 明らかに普通ではない状況。既に取り返しのつかない事態になっている可能性すらある。


 そう考える俺の前で、女性はしばらく逡巡するような素振りを見せた後。

 覚悟を決めたかのような表情で、真っ直ぐに俺を見上げて言った。


「お願いです。貴方に、どうしても頼みたいことが――」


 そんな前置きの後、彼女は今に至る経緯を語り始めるのだった――



 ◇◆◇



 ――数十分前。魔王城跡地。


 エルナたち一行は、目的の場所へと辿り着いていた。

 そこはかつて、魔王が拠点としていた城。

 1000年という極めて長い時間が経っているにもかかわらず、その姿は健在で、ただならぬ威容を放っている。


 もっとも、エルナたちの視線は魔王城ではなく、前庭と思しき巨大な広場に君臨する()()に向けられていた。


「元凶は、コイツか……」


 エルナの口から、静かな呟きが零れる。


 一言で表すのなら、異形。

 その全体像は、辛うじて女性の輪郭を保っていた。

 だが顔に理性の色はなく、正気を失ったように見開かれた瞳が、意味もなく宙を彷徨っている。


 何よりも目を引くのは、異様なまでに膨れ上がった腹部。

 それが不規則に脈動するたびに表面が裂け、中から新たな魔物が這い出てくる。

 一体、また一体と、生み落とされた魔物たちは産声のような咆哮を上げ、次々と大地へ降り立っていった。


 そして下半身からは、蛇によく似た触手が幾重にも伸びている。

 太く長いそれらは絡まり合うように蠢き、周囲を薙ぎ払っていた。


 極めつけは、全身から放たれるオーラだ。

 尋常ではない密度の魔力が、大気を軋ませるように場を支配している。


『■■■■ォォォォォォォォ!!!』


 人や獣はおろか、この世のものとは思えない雄叫びを上げる怪物。

 魔物の異常発生――その元凶がこの異形であることは、もはや疑う余地もなかった。

 同時に、エルナたちはこれまでの長きにわたる経験から、この怪物が優にSランクに達する存在であることを理解していた。


 過去戦ってきた相手の中でも、間違いなく最大の強敵。

 一行は視線を交わし、それぞれの得物を構える。


「――――行くぞ!」


 こうして、エルナたちと異形の魔物との戦いが幕を開けた。

 魔王城からその光景を眺める、()()()()に気付くこともなく。

補足情報

次回以降に備え、Sランク冒険者たちの振り返り(エルナ除く)。


①トール・ウルヘンテ

 職業は戦士、二つ名は『千軍粉砕者』。

 茶髪のツンツン頭と顔中の傷跡が特徴的な40歳近い見た目の男性。リーダー格。


②ジュード・アズヴェルト

 職業は魔法使い、二つ名は『叡智の万華鏡』。

 紫の髪に、黒縁の眼鏡と長い杖、青色のローブが目立つ30代中頃の男性。


③フィーネ・ブルーム

 職業は治癒師、二つ名は『生命の聖泉』。

 亜麻色の長い髪を後ろで編み込み、白と緑を基調とした軽装のローブを身に纏う、優し気な表情が特徴的な20代後半の女性。レスト視点なので名前は出ませんでしたが、今回登場した女性は彼女です。


④レイヴン

 職業は斥候、二つ名は『静寂の影法師』。

 常に口元を覆う黒い布と、全身を覆う暗色の軽装が特徴的な20代後半の男性。


詳しく振り返りたい方は『070 断章 魔王城跡地【エルナ視点】』か、あるいはコミカライズ版の『【第66話】“跡地”』ならビジュアル付きで登場しておりイメージしやすいと思うので、マガポケやヤンマガWebにて確認していただけると良いかなと思います!

どうぞよろしくお願いいたします!

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ニコニコ静画にてコミカライズ連載中!

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― 新着の感想 ―
ギリギリでエルナさんのパーティーメンバーの女性を救えたレスト。 エルナさん達の身に何が起きたのか…間に合うのか気になります!
更新ありがとうございます! なるほど、エルナのお仲間さんからの登場とは…。 死を覚悟した上で何か伝言を飛ばそうとするほど切羽詰まる状況っていったい………?
更新ありがとうございます!! シリアス回もすごく楽しめます [一言] ここからの展開が予想できん Sランク一人で解決できるもんなのか? レストの知識なにも通用しない状況だからな がんばれ
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