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地底の月  作者: 赤羽 黒兎
記-情報/タイディングズ
5/5

二著

大ッ変ッ! 遅くなって申し訳ありません!!

いや、全然ですけど、説明っぽくならない説明回って、難しいんですね……。

ま、まあ、説明回らしくはないですけど……。

 パシック大陸の中心部に存在する世界一大きな都市。過去、本しかないと言われていた国は今ではさまざまな分野で世界に名を轟かせ、世界の過去と現在、その全てがあるとされる。

 情報は武器になる。剣や槍等よりもよっぽど上質な武器。そんな武器を大量に保持しているが故に、駐在している兵力も世界随一のものがある。故に他所から侵略されることもなく、変わらぬ日々を送れる国。

「世界随一の大きさと偉大さを誇る国、それが——って、聞いてるのか?」

 とある居酒屋の一角であるそこで威圧感満載な大きな男、会長は隣に座る少年、アルティンに呆れた声をあげる。

「ん? ここの、卵乗せうどん? 美味いな!」

「良い食い意地だな! だが、ボウズが効いてきたことなんだ、話は聞けや」

 コツンと頭を小突く。

「いてっ……聞いてるよ、おっさん。情報と兵力がすげぇ国ってことだろ? あと、ボウズじゃない、アルティンだ」

 頭をさすりながらもうどんを啜る手を止めない。アルティンの前には、既に丼が七つも積み重なっていた。

「アルティン……なかなか聞かない語感だな……。にしても、なんだ、ちゃんと理解してんじゃねえか」

 感心したように頷き、アルティンの頭を乱雑に撫でる。食べにくい、と思いつつも、黙って受け入れている。

 しばらくアルティンがうどんを啜る音だけが辺りに響く。アルティンが九つ目の丼を置いた時、会長が口を開いた。

「そんで? 害はないと俺が判断してこの国に入れたが、ガキ一人だ。何用だ」

 空気がピリつく。その威圧感により重力が強くなったかのような錯覚を受け、アルティンの額に脂汗が滲む。

「……用なんて、なかった……」

「あ?」

「たまたま……ここに着いただけだ」

 その言葉に威圧感が掻き消える。口を大きく開けた会長は、ポカーンと無様な姿を晒している。

「おっさん? おーい?」

 固まってしまった会長の前で手を振る。目をパチクリとさせ、急に吹き出した。

「あっはははははッ! 面白いな! ボウ、じゃなかった、アルティン!」

「そ、そうか」

 態度の急変さに戸惑いを隠せないアルティンとなおも笑い続ける会長。店の店主である男は、この何とも言えない空気に居た堪れないで苦笑いを浮かべている。

「〜〜ッ! いつまで笑ってんだ!」

「あっはははは! 悪い悪い! あまりにも真っ直ぐでな」

「ったく……。おやじ! もう一杯!」

 少し恥ずかしくなったのか、隠すようにまた卵乗せうどんを一杯頼んだ。おやじと呼ばれた店主は救いとばかりにいい笑顔で厨房に篭った。

「まだ食うのかよ。まあいいけどよ」

 よっこらせ、と椅子に座り直し、少し真剣な顔になる。一○杯目のうどんを啜るアルティンを見、呆れながらも口を開く。

「んで? 『用なんてなかった』ってことは、用ができたんだよな。一体何だ?」

 ピタッ。アルティンの手が止まる。一秒、一○秒、一分。動かないアルティンに、まずったか? と会長が思った時、

「すべての情報が、あるんだろ……?」

「あ? まあそうだな。ある」

「……なら、”月”についてだって、あっておかしくは、ない……よな?」

「”ツキ”? それが何かはわからんが、あると思うぞ」

 聞き慣れない単語に首を傾げる会長をよそに、大きく深呼吸をするアルティンは目をキラキラとさせながら会長を見る。

「俺は、”月”について、”月”に行けるように、ここで暮らす!」

「ほお、そうかそうか……暮らす!? 随分と唐突に、思い切ったな!? どういうこった!?」

 アルティンの『暮らす』という発言に目を丸くする。その衝撃に、持っていたグラスを落とす。

 パリーン。ガラスが割れる音が響く。反響が小さくなるにつれ、会長も冷静さを取り戻していく。

「……あ、あー。暮らすか、そうか……。なるほどな」

 反芻し、徐々に言葉を理解していく。会長の様子を見て、食べ切るか、と残ったうどんを啜っていく。

「よし、ウチ、くるか?」

「…………。……は?」

 唐突な会長の言葉に、今度はアルティンが目を丸くすることとなった。

「ウチ? ウチって、おっさんの家ってことか? ……いやいや、そんなワケ……いや、しかし……。だが、身元も知らない余所者だぞ? そんなふざけた話があるワケ……だが、そういう意味にしか受け取れねぇよな……」

 アレコレと唸っており、。ところどころアルティンらしくない頭の良さそうな単語が見受けられる。頭から煙を出し始めたアルティンを置いて、会長は続ける。

「ウチならある程度のカバーはできる。情報を取り終えるなり、住む場所を見つけるなりするまでは、どうだ? 実際、この国で空き家見つけるなんて、至難の業だしな」

 提案する様に言ってはいるが、その目には連れて帰るという魂胆が見え見えであった。考え過ぎてぐったりとうつ伏せるアルティンは、そのことに気づかず、お願いします……、と掠れた声で返答した。

「よしっ! そうと決まれば、行くぞ!」

 会長はいくつかの紙を店主に渡すと、釣りはいらねぇ! とアルティンの首元を掴み、退店していく。

 大笑いする会長と抗議し続けるアルティンの声が、店内に、街中に響いていく。

「……またいらっしゃい」

 店主の声は、静寂の中に消えていった。

次回はできるだけ早く出せるよう、死ぬ気で執筆きます!

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