表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐっど喪ぉにんぐ!! 〜土葬少女のセカンドライフ〜  作者: わた氏
12章 きらめく、大切な思い出
74/77

挑戦、人間わなげ!

 オムライスを完食した俺たちは、その後も色んな店を巡っていた。

 ザラメのヤツ、前を歩きながら「次はどこにしましょう?」なんて鼻歌を歌うみたいに唱えている。


「郡さんはどこに行きたいですか?」

「家。さらに言えば俺の部屋」

「もうっ、面白みがありません。まだまだ楽しまなくちゃです!」


 っつってもなぁ。

 もう十分回っただろ。

 この辺でお開きにして、俺は俺で遊びに行きたいんだが。

 デート券の入った上着のポッケに手を突っ込みつつ、切なる願いを心の中で唱えていると。


「次はあれにしましょう!」


 突然腕を引っ張られる。

 そしてザラメの白い手が指差す先にあったのは、“カラフルわなげ”と書かれた看板。

 その下部に小さく書いてあったとある催しには、“カップル限定!”などと吹き出しで注釈を付けられていて。

 それこそが、ザラメが目を輝かせるものの正体。そして……俺が眉根を寄せる原因でもあった。


「……人間わなげ?」

「です! 1等賞はお菓子ですって。コスズちゃんやニケル君へのお土産にぴったりですよ!」


 確かにあの2人は喜びそうだが。


「やってみましょう!!」


 ザラメに腕を引かれ、扉をくぐる。進む俺の足は半ば引きずる形になっていた。

 ……激しく嫌な予感がするんだが。





 ————


「およヨっ、運命のお2人だヨ!! 人間わなげに挑戦するの?!」


 入るや否や、ミドウのお出ましだ。

 件のポルターガイストは、色とりどりの輪を包帯に通して宙に浮かべていた。


 デート券を2枚確認したミドウは、包帯で俺とザラメの背を押す。


「2名様ご案内だヨ~!!」


 その言葉を合図として、5人ほどの生徒がこっちを振り返る。制服の上から朱色のはっぴを纏い、手軽に縁日感を演出していた。

 ……いつぞや骨格標本と筋肉標本もはっぴを着て出迎えている。ポルターガイストって何でも有りだよな。


「お客様はこちらへどうぞ」

「はっ、はい!」


 生徒の1人がザラメを案内する傍らで、俺はミドウに促されて後に続いた。


「そうそうっ! この間の続き、まだちゃんと言ってなかったヨ」

「あ? 続き?」

「うんっ」


 振り向いたミドウは俺の耳元で囁いた。


「昨日聞いたでしょ? “元の自分になりたいのか”って」


 鼓膜を震わせる声音は、甘く柔らかく……溶けたチョコレート菓子みたいに粘り気と重みを感じさせた。


「アタシはね。“ミドウ”のアタシを手放せないよ」


 ステップを踏むようにして俺から一歩離れ、つま先を軸にしてくるりと回る。

 ミドウはそのまま、右の袖を口元に寄せて。


「せんせーには言わないでね。恥ずかしいもん」


 控えめな調子で、言葉を探って紡ぐ。

 出会うたび跳ね回って燥いでばかりのツカイマが、今は頬を仄かに染めている。それが意外に思えて、返答に困る。

 しかし沈黙は瞬きの間だけ。すぐさま、歓喜の声に上書きされた。


「じゃっ、気を取り直して輪投げだヨ!!」

「切り替えはええな!!」


 “ビシッ!”と擬音が飛んできそうな勢いで、包帯が俺を指した。


「郡さんは人間役だヨ!」

「どゆこと?!」

「ザラメの投げた輪を、身体でキャッチするんだヨ。“人間わなげ”の“人間”部分が、アナタだヨ!」

「そゆこと!?」


 演目から分かりきっていたが、こりゃまたバラエティー番組みたいなことを。


 一方ザラメも生徒から説明を聞いている。

 受け取った輪をぐにぐにと弄り、感嘆の声を出していた。


「ほええ、すっごく柔らかいですね!」

「はい、安全性には十分配慮しておりますから」

「なるほど、これなら思いっきりやっても大丈夫ですっ」


 加減しろ、お前の“思いっきり”はシャレにならねぇ。


「アナタはこっちだヨ。裸足になって、この中に入ってね」


 ミドウに促されるまま、輪を受ける体勢につく。

 穴の開いた箱に身体を入れて、首から上を外に出した。

 箱の中に収まった下半身は膝立ち状態。何故か素足を箱の外に出す形になっているが、輪投げには関係が無いだろうし、些末なことだ。

 胴体の幅ほどの直径の穴からは、腕を出すことができない。

 可動域は外に出ている部分だけ。つまりこの状態で、飛んでくる輪をキャッチしないといけないということだ。

 チンアナゴみたく顔を出した状態で、じっと待っていると。


「始める前に、ルール説明タイムだヨ!」


 ミドウがマイクを片手に説明を始めた。口を動かしながら、俺やザラメの元に寄っては離れ。縦横無尽に教室を浮遊する様は、落ち着きのないガキそのものだ。


「投げられる輪は5つ! 終了の合図をした時点で、郡さんが持っている輪からポイントを算出するヨ」


 続いてミドウは、骨格標本を袖の先で指す。

 標本は景品であるお菓子の詰め合わせを掲げた。


「3ポイント獲得したら1等賞! ポイントを獲得するたびに難易度が上がるけど、運命の2人なら大丈夫!! 他にもルールはあるけど、実際にやりながら説明するヨ」


 ミドウが足を床に着けたのが、説明の終わった合図。


「目指すはお菓子詰め合わせです!」


 俺の入っている箱から10メートルほど離れた、黒板下にある教壇の手前で。

 教室を横切るように貼り付けられたビニールテープにつま先を合わせ、ザラメも輪を構えた。


 説明を聞く限り、やること自体は普通の輪投げと同じ。

 ザラメが投げるってのが不安材料だが、それさえカバーできれば余裕で突破できそうだ。




 ……本当に“普通のわなげ”と同じなら、な。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ザラメちゃん、目いっぱい楽しんでますね〜。 ザラメちゃんが楽しそうにしていると、不思議と私も安心します。 それと、箱から顔と四肢だけ出す郡くんを想像したら笑いそうになりました(笑)。具体的な名前は思…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ