第17話
「って、あれ? 手に持ってる本ってもしかしなくても『時間遡行』?」
「そうだよ。前に紹介してもらって、気になってたんだよね。まだ始めの方しか読んでいないけど、確かに面白いね」
「そうでしょ、そうでしょ。私、この作者の小説が全部好きなんだけど、特にこの『時間遡行』が好きなの」
「どうせだったら、これを買ってこうかな。先が気になるし」
「いいと思う。おすすめした甲斐があったよ。ちなみに、玲為くんって普段どんな種類の本を読むの? 好きな作家さんとかいる?」
買うときにまた取りに来ればいいだろう。そう思って本を棚に戻す。
「いつもは話題になっている本をなんとなく読んでいるかな。特に誰が好きとかはないんだよね」
「好きな作家さんがいなくても、話題の本を追えるのすごいと思うよ。私は話題になってる本が逆に手を伸ばしづらくって」
本と本の間をゆっくりと歩きながら澪さんは言う。
「どうして?」
「なんというか、好みに合わなかったらどうしようとか、逆に好みだとその作家さんの全ての本を買い集めたくなっちゃうとかで」
「それもそうだね。全部買い集めるってなったら、いくらあっても足らないよ。あと、どの作家が好きなの?」
えっとね、確かこっちの方に、と言って本棚を進んでいく。迷う素振りが見えなくて、この本屋に行き慣れていることがわかる。びっしりと並んだ本から、行っ猿の本を取り出して、本のジャンルとあらすじ、魅力を話し始めた。
*
「ちょっと話しすぎちゃったかな」
「そんなことないよ。いろんな本を知れたし、澪さんってこういう本も読むんだなって知れたから」
「それならいいんだけどさ。あれ、もう十二時過ぎちゃってる。どうする? ご飯食べに行く?」
「うん、食べに行こうよ。歩きながら探そうよ」
僕は澪さんと並んで歩き始めた。楽しい気持ちでいっぱいで、こんな時間が続けばいいのに。本棚を抜けて出口に差し掛かったところで、声をかけられた。
「あれ、そこにいるのってもしかして玲為?」
振り返ると、そこには芽依が立っていた。
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