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第16話

 休み当日。普段は寝ている土曜の朝方。いつもだったら何もない休みの始まりだが、今日はデート、とは言えないかもしれないが澪さんとの約束がある。少し気合を入れて準備をする。奥に眠っていた少しおしゃれな服を取り出す。黒のジーンズに白のTシャツ、それにカーキの上着を羽織る。悪くないコーデだとは思っている。少し約束の時間より早いが、最低限の荷物を背負って待ち合わせの本屋まで向かおう。



                    *



 予定よりも1時間ほど早く着いてしまった。流石に澪さんは来ていなそうだ。ならば、本でも物色していようかと思って本棚を眺めているが、そもそも本をあまり読まない。流行になっている本をちょくちょく読むだけであってこの作家が好きとかはない。棚に並べられた本のタイトルたちが目の中を横切っている時、ある小説が目に止まった。『時間遡行』という名の本。これは、前に澪さんが勧めてくれたミステリー小説だったはず。そういえば気になりはしていたが、まだ読んでいなかった。時間潰しにはなるだろうと思って、本を手にとって一ページ目を開く。



 確かに面白い。まだ四分の一すら読めていないが、出てくるどのキャラクターも魅力的で、息が詰まるような展開ばかりだ。あんなに推薦したくなるのもわかる。まだ時間はあるだろうから、と次のページへ手を掛ける。


「あれ、もしかして玲為くん?」


 その時、後ろから声をかけられた。驚いて振り返ってみると、そこには澪さんが立っていた。慌てて時間を確認するが、まだ待ち合わせ時刻より三十分も早い。


「え、澪さん? なんでここに」


「なんでって、今日合う約束だったでしょ?」


「だってまだ待ち合わせ時間じゃないのに」


「なんだか待ちきれなくなっちゃって。そういう玲為くんだってこんなに早く来てるじゃん」


「それは、まあ待ちきれなかったっておんなじ理由」


 澪さんも同じ理由で早く来たとは。なんだか心が通っているみたいで嬉しい。


「それじゃあ、早いけど色々紹介してあげるよ」

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