9、長兄と姉の鑑定
王都のタウンハウスへ向かう途中、お父様とお母様の鑑定を表示しました。
二人は総監督と裏番長に頭を抱え、私を睨み、その後に続くそれぞれのフェチにお互いを見合ったあと赤くなります。私は気まずい空気に耐えられないと王都の街並みを眺めます。
夕日に陰る街並みはハーレクイン小説の中に出てくるヨーロッパ南部の雰囲気です。ロマンスがはじまりそうですね。
タウンハウスにはすでにミールとジーナ、エネミルが私を待っていました。
「ミール!ただいま」
ミールがいるとホッとするのは赤ちゃんのころから一緒で、育児スキル持ちだからでしょう。ミールに駆け寄ります。あとは、後ろに感じる夫婦の時間を邪魔してはいけませんからね。
「リーリアお嬢様、鑑定結果はいかがでしたでしょうか?」
「創造神の加護と女神の祝福、2つよ」
出迎えた使用人達がどよめきます。
「公表は国からの報告を待ってからとなるから、まだ内密に。もちろん公表されたあとは他国からも狙われるだろう。今以上、十分に警戒してくれ。明日、陛下に公表日を確認する」
お父様が箝口令を出します。生まれてから王太子殿下婚約者筆頭として狙われているとして、外出もまともにできずに早5年、もちろんその間領地から一度も出たことはありませんでした。そんなに外は危険なのでしょうか。領地の街へはお母様と一緒に2回だけ。ずっと領地の屋敷におりました。
王都の街並みを眺めて楽しい気持ちになっていましたのに、今度はこちらのタウンハウスで警護を固められて動けない状態にさせられるのでしょうか。
「またお出かけできないのかしら」
ひとりボソッと不満を呟くと、
「家庭教師のルーカン先生から課題がありましてよ」
とお母様。ありがとう、先生、抜け毛予防のための育毛書も探しておきます。是非に。
「トレミエールはもう帰ってきているかな?」
「はい。ブルーナス坊ちゃまと食堂でお待ちです」
ブルーナス兄様、トレミエール姉様、久しぶりですね。さあ、鑑定させてもらいましょう。
私の部屋は2階の1番奥に用意されていました。部屋着へとさっと着替えて夕食の間へむかいます。フリルとレースがたっぷり入ったロリータ風の部屋着です。部屋からでたら、ジーナがずっと付き添うことになるようです。領地より自由度が低くなりそうな予感です。
「「リーリア!」」
食堂へ入ると、久しぶりの美男美女が出迎えてくださいました。再会に私も嬉しくなります。
「ブルーナス兄様、トレミエール姉様、私、ついに王都に来れましたわ」
「でもすぐ戻るんでしょう?6歳の試験後も貴方なら飛び級制度で中等部スタートでしょうし」
お姉様が長期間でないことに不満を述べます。
「それでもしばらくは王都にいるだろう?私がもうすぐ婚約する彼女も紹介するよ。来年には婚約する予定なんだ」
幸せそうなお兄様を鑑定します。マイクスお兄様は騎士団入りを目指して寮生活なので、週末に帰ってくると話すお兄様。
【ブルーナス・オーキッド・クリサンセマム(男)18歳、参謀スキル、経理スキル、次期宰相補佐候補(仮)、弟妹を愛する者、尻フェチだが、まだ触らせてもらえない不満継続中】
神様は私の表情筋を鍛えたいのでしょうか。情報に呆然としていると、話を聞いていない、鑑定中とわかったのでしょう。
「リーリア?今私を鑑定しただろう?表示してくれないか」
鑑定結果の表示を求められました。いや、これは表示してはいけないやつです。私でもわかります。両親が見たらどんな顔をするのでしょう。うなじフェチと腰フェチの二人ですから、大丈夫だとは思いますが。食堂の間にちょうどやってきた両親をちらっと見ます。私の顔で判断したのでしょう。
「いや、こっそり見せてもらいなさい。婚約者も一緒がいいかもね」
とナイスフォローのお父様。
「最初の部分は知りたいわ。話してくれる?」
とお母様。裏番長を超える権力名は今の所知りませんね。
「参謀スキル、経理スキル、次期宰相補佐候補(仮)ですわ」
「次期宰相補佐候補(仮)か、どれほど正確なのか。まだ打診もされていないがおそらく総務省から次は軍部へと研修、経理部へというところだな。王太子殿下の側近という表示はないか。やはり年齢的に難しいか。マイクスも後で鑑定してくれ」
「はい」
私の鑑定が将来の伯爵家に影響するとは思いもしませんでした。
夕飯は領地と同じ洋食メインのコースです。この世界にはお子様ランチのようなものがないのでしょう。子供用に小さくカットされただけです。少しだけ工夫するだけで気持ちの上がるあのお子様ランチを知らないなんてもったいないわ。前世では大人のお子様ランチが流行った時もあったはずよ。戻ったら、領地の厨房で作りましょう。そして、料理人のシアンを鑑定しましょう。
次はお姉様よね。
【トレミエール・オーキッド・クリサンセマム(女)13歳、芸術スキル、高等部の新星歌姫、無意識に男を誑かし、同性からは不満爆発寸前】
いやいやいや、特記事項が盛りすぎです。さすがに表情筋も平和な仕事ができません。
「お姉様にも、後で見せますわ」
頬を引きつらせて精一杯微笑む。私、頑張りました。
お母様に促され、最初部分を話します。
「芸術スキル、高等部の新星歌姫と表示されていますわ」
「嬉しい!!王国が誇る歌姫になれるよう、精進いたしますわ」
その前に不満爆発寸前の高等部のお姉様達をなんとかしなければなりませんよ。お姉様。