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エネルギー世界の棒人間

「ここは一体……」


 炎だらけの世界から脱出した俺たちが次に見た光景は、大量のビルが立ち並び、あちこちで車が飛び回り、エネルギーが充満している光景だった。ここのところ初めて見る光景ばっかりだな。


「エネルギー世界さ」

「もしかして、周りの建物も全てエネルギーなのか?」

「いやいや、何もかもがエネルギーって訳じゃねえ。電気や車の動力とかに活用されてるんだぜ」

「そうなんだな」


 なるほど、エネルギーがこの世界の生活の要になっているのか。


「活用するだけじゃなく、研究もされてるんだぜ!俺は見た事ねえけど」

「無いのかよ」


 エネルギーの研究か。もしかしたら俺たちのエネルギーについて何か情報が得られるかもしれないな。頭の片隅にでも入れておこう。


『赤棒、応答しろ』


 ん、赤棒の腕輪から声が。


「おっ、青棒!転送ありがとな!」

『無事で何より……だが、通信中に名前で呼ぶのは止めろ』

「あっ、わりぃ、つい」

『炎世界の事だが、お前が話していた通り、爆発で綺麗さっぱり消滅した』

「そうかー……あの世界、結構気に入ってたんだけどな」

『俺にとっても、熱さの研究を行う上で重宝する世界だった。惜しい世界を無くしたな……ところで、例の物は回収できたか?』

「あっ、そうだった。火炎棒の事だろ?それならバッチリ手に入れてきたぜっ!」


 赤棒が青い箱から燃え盛る一本の棒を取り出し、勢い良く掲げる。


『……確認した。転送機能でこちらへワープさせる』


 棒が青い光に包まれ、消失する。


『よし、転送完了。いつも助かる』

「親友の頼みなんだ、聞くのは当たり前だろ?とはいっても、この棒は炎世界にあったもんだし、消えちまった以上、もう回収はできねえな」

『問題ない、この一本で十分だ』


 ん、確認?という事は、腕輪越しに光景を見る機能があるのか。便利だな。


『……さっきから気になっていたが、背後にいる三人組は誰だ?』

「ああ、まだ紹介してなかったな。そんじゃあ一人ずつザックリと。まずは棒人間二人だけど、白い方が白棒、黒い方が黒棒。そして星型の黄色い生物が星だ。俺を助けてくれた良い奴らなんだぜ!」

「よろしく頼む」

「よろしくな!」

「よろしく!」


 なんというか、ストレートに良い奴と言われるとムズムズする。少しニヤけてるかも。


『そうか。赤棒、腕輪をそいつらに近付けてくれ。エネルギーを調べる』

「了解!」


 腕輪の指示に従い、赤棒が俺たち三人組に腕輪を近付ける。そういえば、星がどんなエネルギーを持っているか、まだ知らなかったな。この機会に覚えておこう。


『……よし、把握した』

「おっ、早速か!それでどんなエネルギーだったんだ?」

『赤棒、悪い事は言わない。すぐにそいつらから離れろ』

「えっ!?」


 結果を言う前に離れろって、そんなに不味い結果が出たのか?


「いやいや、どういう事だよ!?街に入れるつもりなんてないぞ!?」

『そいつらのエネルギーは、必ずトラブルの元になる。お前に巻き添えになってほしくない』

「トラブルって……じゃあ何のエネルギーかだけでも教えてくれよ!」


 トラブル……そういう事か。そういえば、俺と黒棒のエネルギーはそれぞれ狙われる危険があるんだったな。前者は珍しさで、後者は危険度で。


『……出会った時に気付かなかったのか?白棒がライフエネルギー、黒棒が暗黒物質、星がスターエネルギーだ』

「ライフ、暗黒、スター……」

『そうだ。説明は長くなるから省くが、どれも命を狙われるエネルギーだ』

「えっ、僕殺されるの!?」


 星も俺たちと同じ、狙われるタイプのエネルギーだったのか。その理由までは分からないが。


「だったら尚更離れる訳にはいかねえだろ!?こんな良い奴らが酷い目に遭うのを見逃す事なんて俺にはできねえ!」

『良い奴ら……本当にそう断言できるか?助けるだけなら悪人でもできる。そうやって油断させて近付き、寝首を掻く奴もいる』

「助けてくれる奴に対してそんなに疑ってちゃキリがねえぞ!?信じてからでも遅くはねえだろ?」

『……裏切られれば手遅れだ。俺は既に一度失敗を犯している。もう二度と同じ失敗をする訳にはいかない。お前も知っているはずだ』

「っ!だけど……」


 青棒の言う失敗、それを聞いて無言で俯く赤棒。一体どんな失敗をしてしまったのか、少し気にはなるが……まあその話は置いておこう。


「……青棒、一つ提案がある」

『さっきも言ったが、通信中は名前で』

「既にやらかして漏らしちまってるし、もういいだろ?」

『まあ、それもそうか。それで提案とはなんだ?』

「俺とこの三人組をこれからしばらく監視してくれ」

『監視だと?』


 監視、という事は、俺たちの行動が全て青棒に筒抜けになるという事か。迂闊に変な行動はできないな。


「こいつらの行動を見て、それから信じられるのか離れた方がいいのか判断してくれないか?」

『……だが、何かあってからでは…...』

「大丈夫だ。万が一の事があっても、絶対に生き残ってやるさ!俺を信じてくれ青棒!」

『……分かった。だが、少しでも不審な行動があれば、即座に排除してお前をこっちに帰還させる。いいな?』

「っ!ありがとな青棒!」


 この会話だけでも、青棒が心配性で、いかに赤棒を大事に思っているのかが十二分に伝わってくる。


「よーし!改めて、これからも青棒共々よろしく頼むぜ!仲間としてな!」

「こちらこそ」

「おう!」

「うん!」

『訂正。俺はよろしく頼んでいない。そしてお前たち三人の仲間でもない』

「そんな事言うなって青棒ー!」


 知り合いから仲間への変化。もしかしたら、ここで赤棒と別れる事になるのかもしれないとは思っていたが、杞憂だったな。


『ん、この音は一体……っ!?誰だおまーー』

「なっ、青棒!?」


 青棒が何かに気付いた……と思ったら途中で声が途切れる事態に。一体何があったんだ?


「おい!応答してくれ!俺たちをワープでそっちに送ってくれよ!青棒っ!!」


 いくら赤棒が声をかけても応答無し。これは相当不味い事態なのではないか……?


「これから青棒の所に向かう!ついて来てくれ!」

「ああ、分かった!」


 青棒の安否が不安だ。早く向かわなければ。

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