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燃え盛る世界へ

「あっつ!?」


 ワープゲートを抜け、真っ先に感じたのはその熱さ。まるで全身が焼かれてるような……いや、実際に焼かれそうだなこれ。


「なんだこりゃ、炎ばっかりじゃねえか!?」


 そう、どこを見渡しても炎ばかり。名付けるなら炎世界、といった所だろうか……なんて呑気な事を考えてる場合じゃない。今はまだ空中にいるから大丈夫だが、落下して少しでも炎の中に入ってしまえば即黒焦げ。命の保障はない。


「バリア!」


 俺と黒棒にバリアを張る。落下の衝撃は抑えられるだろうが、熱までは……あ、防げた。結構便利だなこの技。


「がっ、熱っ!?」

「アチチチ!!」


 地面に着地し、ワンバウンド。衝撃でバリアが割れ、再び強烈な熱が身体に襲いかかる。


「くっ、もう一度!」


 すかさずバリアを張り直す。そのまま俺たちは何回かバウンドしながら地面を転がって行き、しばらくして止まった。


「ふう、なんとかなったな……」

「助かったぁ……」


 空を見上げ、空中に浮かぶワープゲートを見つめる。地面スレスレに展開されていなくて良かった。


「ひゃぁああああっ!?」


 アレは……さっき拠点に落下していた黄色い物体!でも、声が出てるから生物か。とにかく助けなければ。


「バリーー」

「あっ、僕浮けるんだった」

「アガッ!?」


 余計なお世話だった。いやでも熱は防げるし必要っちゃ必要か。


「それにしても、ここは一体……?」


 辺りを見回してる様子だ。声をかけるか。


「おーい!」

「あっ、君たちはさっきの…….ごめんなさい!僕が落下したせいでーー」

「大丈夫だ。元々逃げようとしてたし、ダメージを受けた訳でもないし、むしろ助かった」

「そ、そうなの?僕、助けになってた?」

「おう!バッチリ助かったぜ!」

「そ、そっかあ、良かったぁ…….」


 こうして話しているだけでも分かる。良い奴だ。見た目も一筆書きで書ける星型で黄色く、俺たちよりも一回り小さい。マスコットキャラクターみたいで安心感がある。


「あのっ、一つお願いしたい事が!」

「ん、何だ?」

「僕も一緒について行ってもいい?」

「ああ、もちろんだ」

「いいぜ、大歓迎だ!」

「わーい、ありがとう!」


 即決。仲間の数は多いに越した事はない。


「あっ、名乗り忘れてた。僕は星、よろしくね!」

「俺は白棒。よろしく頼む」

「黒棒だ、よろしくな!」

「うんっ、よろしく!」


 星か。分かりやすい名前だ。


「えっと、因みにこのバリアって君たちが張ってくれたの?」

「ああ、俺が張った」

「そっか。僕、熱さは平気だから解除しても大丈夫だよ!」

「そ、そうか、分かった」


 少し躊躇しながらも星に張られたバリアを解除……特に熱がる様子は無いから、本当に大丈夫そうだ。少しエネルギーを節約できた。


「それで、これからどうするんだ?」

「そうだな……」


 さっきのワープホール、は既に消滅してしまったか。自分で生み出す事は出来ないし、それ以外に他の世界に移動する方法も無さそうだし、正直手詰まりだな。


「星ってワープホールは出せるのか?」

「さっき通った穴の事だよね?ごめん、僕には出せないや」


 ダメ元で尋ねてみたがやはりダメだった。うーん、何か良い方法はーー


「どわぁああああっ!?」


 なんて考えていたら、突然目の前を極太の赤い光線が通過。本当に突然過ぎて腰を抜かしてしまった。直撃していたら恐らく即死だっただろう。


「さっきのってエネルギービームだよな?それも超特大の」

「あ、ああ。いきなり過ぎてちょっと腰が抜けた……よっこらせい」

「放った奴がいるんじゃねえか?えーと、ビームが飛んで来た方向が……」

「あっ、見て見て!地面が抉れてるから目印にできそうだよ!」

「あっ、そうか」

「よし、行くぞ黒棒、星。今は少しでも手がかりが欲しい」

「うん!」

「おうよ!」


 ビームを放った人探しが始まった。歩き出して少し時間が経った頃……


「ん?あそこに誰か倒れてるぞ」


 地面に仰向けで倒れている赤い人物を発見。目を瞑っている様子だ。身体が焼けてないから熱さは平気そうだ。それと身体が細い、という事はもしかして棒人間なのか?声をかけようとしたその時、何かが空から赤いのに近付きーー


「まずい、止めろ!」


 攻撃しようとしている!?


「バリア!」


 赤い人物にバリアを張り、間一髪で突撃を食い止める。


「炎……いや、全身火だるまの鳥だ!」


 その正体は、全身を炎で纏った鳥。炎だらけの世界ならではの生物だな。修行で学んだエネルギーを試す良い機会だ。


「ショッーー」


 いや、ダメだ。バリアを纏ってる状態だと攻撃が全てそこに当たるから意味が無い。かといって解く訳にはいかない。なら……


「星!俺をあの鳥に向かってぶん投げてくれ!」

「えっ!?う、うん、分かった、いくよ!」


 星が俺をバリアごと両手?で持ち上げーー


「よいしょ……えーいっ!!」


 焼き鳥に向かってスローイング!


「って速度速っ!?」


 これだけの速度で物を投げれるって、もしかして俺や黒棒にも引けを取らないくらいの怪力?流石に師匠ほどではないだろうけれど。


「いっけぇーっ!!」

「当たれーっ!!」


 避けられる事無く激突。焼き鳥は空の彼方へと吹っ飛んで行った。


「よし、追い払……わぁあああっ!?」


 うん、まあ、そうだよな。空中に飛んだら落ちる。当たり前の事だ。落下の衝撃で割れたらさっきみたいにまた張り直そう。


「キャーッチ!」


 地面に激突する直前に星がダイビングキャッチ!張り直す手間が省けて良かった。


「セーフ……」

「ありがとう星、色々と助かった」


 ひとまず難は去った。だが……


「なあ白棒、これってマズイんじゃないか?」

「ああ……」


 黒棒も気付いている感じだな。


「このままだと、まともに戦えない」

「えっ?あっ、そっか。バリアに攻撃が防がれてしまうから……」

「そうだ。だからといって解除すれば丸焦げ。何か解決策があればいいんだが……ただ、今は目の前で倒れている人を優先しよう」

「おっとそうだった。先にそっちだよな」


 そう、忘れてはならない。俺たちの目の前に赤い倒れ人がいる事を……正直少し忘れてた。


「おーい、生きてるか?」

「……フニャ…もうダメ……」


 黒棒が近付き声をかけると、寝言のような返事が返って来た。見た感じ、死にかけている訳では無さそうだし、ライフエネルギーは必要無いか。ただ、エネルギーを感じ取れないので、枯渇している可能性が高い。さっきエネルギーを使って身体に空きがある状態だから、空気中のエネルギーを取り込んで……って、今はバリアのせいでエネルギーを一切通さない状態だからダメか。かといって解除する訳にもいかない。ならばーー


「白棒、いきなりジャンプしてどうしたんだ?」


 空中だ。ジャンプしてから着地するまでの猶予は僅かだが、その間は炎から離れるおかげで熱気は多少マシになる。これなら大丈夫だ。


「バリア解除、エネルギーチャージ!」


 そして右手を赤い棒人間に向けてーー


「受け取れ!」


 溜めたエネルギーを送り込む。すかさずバリアを再展開し、着地。我ながら無駄の無い流れ。さて、反応はどうか。


「……」


 あれ、動きが無いな。もしかして上手くーー


「うぉおおおおっ!!」

「いいっ!?」


 突然大声を出すなよビックリするだろ!?


「完全復活っ!!」


 そしてドヤ顔と決めポーズ。テンションが高すぎる。


「助かったぜそこの白あだっ!?」

「あっ」


 バリアに気付かなかったのか俺の所にダッシュで近付きそのまま衝突。痛そう。


「だ、大丈夫か?」

「こんくらい全然平気だ!」

「あ、ああ、そうか……」


 ああそうだ、さっきのビームについて聞いておくか。


「ところで、さっき大きな赤いビームを目撃したんだけど、お前が放ったのか?」

「ああ、俺の全力の技なんだ。すっげえだろ?」

「とんでもなく驚いた」

「そうだろそうだろ?でも、一発でエネルギー切れになってぶっ倒れてしまうのが弱点なんだよな」


 一発のみか。あれだけ大きなビームなら頷ける。俺が放っても同じ事になるだろう。


「っと、初対面の相手には名乗るんだった。俺は赤棒、棒人間だ。よろしくなっ!」


 やはり棒人間か。故郷にしかいないのかと思っていたが、他の世界にもいるんだな。次はこっちが名乗る番だ。


「俺は白棒、同じく棒人間だ。そしてこの二人が」

「同じく棒人間の黒棒だ、よろしく頼むぜ!」

「僕は星!棒人間ではないけれど、よろしくね!」

「おうよ!」


 こうして、同族の知り合いが一人できた。ひとまずはこの世界から脱出するのを当面の目的にしよう。ワープゲートかそれ以外に何か脱出方法があれば良いのだが。

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