49. いってきます
闇の使者は生まれた瞬間から自身が闇の使者だと知る事は無い。
それは闇の使者であるナギアの証言が証明している。
アイリは記憶障害や不思議な力から自らが闇の使者ではないかと疑っていた。その不安は闇の使者を打倒しようとするコナミには話せずにいた。人には隠す事無く話して欲しいと言っておきながら、後ろめたい気持ちだけが付き纏っていた。
「ドロドロしたキモい奴を見たりしたの?あとマナが使えない~とか」
闇の使者であるナギアは質問した。
「いえ、それは見た事が無いデス。マナは微量ですが魔法都市プライベリウムで浮く事が出来たのでそれも違うと思うデス」
「じゃあそれ違うくない?アーシとジークは同じ症状的なとこあったし、神命だって貰ってないわけなんでしょ?」
異なる事象がある事に変わりはないのだが、それでもアイリの中での記憶障害が一番気になっていた。
「ワタシが剣を持つと急に意識が遠くへ行ってしまう感覚があるのデス。もしかすれば剣を持つという行為が神命に繋がっているのかも……」
「でも今フィルスの大剣背負ってるじゃん。それ持ってもおかしくなるの?」
「いえ、そういう訳ではないのデスが……」
「じゃあそれ違うくない?」
ナギアに論破され続けて自身が話している事の矛盾が多くなりアイリは混乱した。本当は闇の使者であると信じたくはないが、期待をすればするほどコナミを裏切っているのではないかという強い疑念だけが残る。
「もしアイリちゃんが闇の使者だったとしても、きっとコナミっちなら受け入れてくれると思うけどな~」
「そ、そうデスか?だってワタシが闇の使者なら敵デスよ?」
「じゃあアーシも敵ってコト?」
アイリは首をぶんぶん振って否定しているのを見て可愛く思えたナギアはゲラゲラと笑う。
「アーシもウロボロスと同じだと思うとゾッとするけどアーシはアーシだし、アイリちゃんはアイリちゃんでしょ?そういうの気にする必要無いと思うかな」
ナギアは本当に自身が闇の使者である事を気にしていなさそうだ。というよりコナミに受け入れて貰えた事で心の拠り所を得たのかもしれない。
「……コナミさんが起きたら話してみようと思うデス」
「好きだってコトもちゃんと伝えなきゃダメだぞ!」
「ちちちちち違うデス!!!」
話した事で何かから解放されたアイリは心が落ち着いた。ナギアが心の拠り所になったのかもしれないとアイリは気付いた。
「もし、もし良かったらデスが、ナギアさんと一緒に旅に出たいデス。ワタシが本当は何者なのかを知りたいデスし、ウロボロスを止めなくちゃ……」
「うん、いーよ。アーシもそうしたいと思ってたし」
二つ返事で返してきたナギアはニッコリと笑う。
ロバートフットに揺られながら見る景色は先程よりもずっと明るく見えた。
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「わかりました。コナミさんは僕とアルマさんに任せてください。こうなる事を想定して魔道具を作る事が出来ました。僕のフルエウロンとまではいきませんが、傷や呪いの治癒効力を高めてくれる"聖堂の指輪"です。是非受け取ってください」
「まじ!?レイテさんマジイイ人過ぎ!神!」
ナギアに頬にキスをされたレイテは顔を真っ赤にしてアタフタとして転げた。みんなはそれを見て大いに笑った。闇の使者に支配されてあれだけ暗かった教会都市ジンライムは今こんなにも明るい。
これも全てコナミが街を救ったから。
「見て見てアイリちゃん。お揃っち!」
指輪を付けてはしゃぐナギアを見て心がワクワクする。コナミと一緒に冒険都市ビルダーズインを出た時のような。
「カッカッカッ。じゃがのう、次に向かう街は決めておるのか?」
「一度故郷である王都ブレイブへ向かう予定デス。今は何も無いと話してましたけどきっとワタシの記憶の手掛かりになるキッカケがあるかも知れないデス」
それを聞いたレイテはアイリをしっかりと抱き締めた。慈愛の精神が流れ込んでくる程にそれは愛を感じた為、恥ずかしい等という感情よりも親の様な温かみにアイリは嬉しくなった。
「いってらっしゃい。必ず帰ってくるのですよ」
「いってきます」
そしてアイリは背丈に合わないフィルスの大剣を背負い、自身の記憶を巡る旅をナギアと一緒に始めた。だがしかし知らなくてもいい事実というのは世に多く存在する。
アイリの記憶が良い方向かはたまた悪い方向か、どちらに傾くのか今はまだ誰も知らない。




