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47. アイリの死


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 「ではコナミ、さようなら」


 気が付いた時にはコナミはもう会議室から居なくなっていた。更にはその場にはウロボロスが立っている。これは―――!!


 「貴様、コナミに何をしたぁ!!」


 イヴは凄まじい殺気と共にウロボロスに剣を向け突進した。アイリはコナミが消えた事への動揺に頭の処理が追い付かず動けなかった。


 「ハハハ!始めよう、僕たちの戦争を!!ファイスドラグニアル!!!!」


 炎と氷の竜はアイリに向かって突っ込んでくる。ハッと気づいた時には既に避ける事は出来ない距離にあった。


 「アイリッシュ!!」


 イヴがアイリの身体を庇い魔導の攻撃をその身に受けた。会議室はそのまま破壊され城の半分は崩れ落ちていく。外にいた兵士や街の人がその瓦礫を避けられず潰れ、賑わっていた街は途端に悲鳴で埋め尽くされた。


 「お優しいですね。それで私を倒せるとでも?」


 まだ吹き飛ばされている最中、ウロボロスは追撃に出ていた。イヴは急いで霊剣を構えウロボロスの攻撃を受け止めるが、その威力は凄まじい上にアイリを抱いたままのせいで地面に叩きつけられた。


 「キャアアアア!!」

 「ぐああ!!」


 アイリも地面に強く頭を打ち付け血が流れ落ち、杖が重いと感じるようになった右腕は既に折れていた。


 「私は【霊剣】を。お前は小娘を」

 「闇の使者の恐ろしさを刻んでやろう」


 パチンと指を鳴らすと城が揺れる様な地ならしが起き始める。すると城から大量のグリフォが現れ兵や人々を襲い始めた。


 「グリフォ様、何を、ぐああああ!!!」

 「お辞めくださぐぼあ!!」「きゃあああああ!!」


 「いい悲鳴だ。これがシガレットが望んだ世界。そして世界を終わらせる為の第一歩。僕の使命だ!!」


 ジークは手に炎と雷のマナ込め始める両手を広げた。


 「鬼ごっこか!いいだろう!その身に刻め!!ライトニングブレイズ!!!」


 炎に雷が交じり合った魔導が街に襲い掛かる。家々の中にいる人すら丸焦げになって死んでいった。


 「ハハハ!凄いだろう、魔法では単属性しか使えないが僕は複合属性を扱う事が出来る。それも自らのマナ消費無しでな。これが僕の神命【魔導】の能力だ!」


 空中を風の魔導で飛び回り空からアイリを追うジークにはその姿が直ぐに見える。そして空から魔導を放ち攻撃を仕掛けるが街の地形を使って上手く交わしていく。だがしかし、その度に街の人が魔導の力で殺されていくのをアイリは唇を噛んで耐えていた。


 「コナミさんが……コナミさんが来るまでは……!!」


 アイリにはコナミが助けに来てくれると信じていた。どんな時も頼りになっていたからアイリにとってコナミは英雄(ヒーロー)だった。闇の使者との戦い生き延び、これまで大都市を2つも救った。きっと今回だって助けに来てくれる―――。


 「しつこいんだよクソアマがぁ!!」


 土属性の魔導により地面が急に泥状になりアイリは足を取られてしまった。そこに魔導は使わずジークは直接殴り掛かりに来た。アイリの歯はへし折れて血が流れ落ち、頭の傷も相まって視界がふらつく。


 「やっぱり殴った方がスカっとするな!ハハハ!ああ、気分がいい。逃げまくりやがってこのガキが!」


 何度も何度も殴られる。抵抗して杖を振ろうとするが、左腕を凍らされて動かせなくなっていた。


 「ジーク様!何をやって……その子に何をしている!今すぐやめろ!」


 そこにいたのは魔道具を売っていた小太りの店主だった。他にも店員らしき人達も何人かいて売り物になっていた魔道具の武器の剣を構えてジークに向ける。


 「魔道具屋のポジョイか。その魔道具は誰が作ったのか忘れたのか?」


 そういうとジークは手を握るとポジョイ達が持つ剣が震えだし勝手に魔道具が発動すると炎が人々を焼き尽くし全身燃え盛る。


 「ぎゃあああああ!!」「熱い!!熱い!!!」

 「や、やめるデスよ!!!!」


 「ほおら、止めてみろ。その身体で止められるものならな!!」

 「そんな事をしてナギアさんが許すと思ってるんデスか!?」


 ピクッと目を引きつるとポジョイの身体から炎が消えた。


 「ナギア……。そうだ。ナギア。僕は何をやって……。こんな、ぐっ!ハァハァ……頭が、割れ……る!!」


 取り乱しながら壁に何度も頭を叩きつけるジークの異常性にアイリは震えた。


 「ナギア……、うぅ……怒りが、憎しみが、溢れ……。くくく……ふはは……何を迷っている。破壊してしまえばいい!この世界が僕たちを否定し続けるなら僕も否定しよう!!」


 支離滅裂とも言える情緒不安定な言葉を放つとジークはまた襲い掛かってきた。後ろには痛みに苦しみもがくポジョイ達の姿。戦闘に巻き込まれない様にこの場所を離れないと――!!


 そう思ったアイリはボロボロの状態で逃げ回った。少し離れた所で爆発音とも言える音が鳴り響き戦闘が繰り広げられている。今は少しでも時間を稼いでコナミの到着を待つしかなかった。


 『剣を持て―――』


 いつも頭に響くこの言葉。声というより暗示に近い程脳内に言葉が駆け巡る。剣、剣、剣。ポジョイ達の持っていた剣は既に遠くにあり戻る事は出来ない。


 『剣を持て―――』

 「はぁ……はぁ……うるさいデスね。剣なんか無くたって……」


 背後を空から追いかけてくるジークに向かって杖をかざす。一緒に買いに行った一定量のマナを放出出来る魔道具が手元にはある。


 「アクアスプリット!!」


 本来は高圧の水を放出出来る技なのだが、練度の差なのか、マナ量の問題なのか、理由は定かではないが蛇口を捻った程度の水しか出ない。


 「ハハハハハ!なんだその魔法は!マナを全く使いこなせていないじゃないか!!」


 恥をかいたアイリは何も言い返せず顔を赤らめてしまった。ジークは両手をこちらに構え始める。


 「水属性はこうやって使うんだよ!!アクアプリズナー!!!!」


 空気中に水玉が浮かんだと思ったらそれらは急速にアイリに集まり始め、まるで水の牢獄とも言えるように閉じ込めてしまった。


 「ガボボ……!(息が、出来ない!!)」


 ジタバタと手足を動かすが泳ぐことも出来ず、外から内へ圧縮されているようだ。


 「苦しいか?息をしたいか?言ってみろホラホラホラ!!」

 「ゴボ……ゴボ……」


 意識が遠のいて身体はいう事を聞かず溺れていく。


 「おい。まだ死ぬなよ?僕の怒りはこんなものじゃないぞ!」


 外から内へ圧縮していた水は急激に方向転換し、内から外へと放出される。まるで内側から爆発されたかのような衝撃にアイリの全身とも言える骨は砕かれた。


 「あ……あ……」


 視界もぼやけている。指は動かない。呼吸すらままならない。


 『剣を持て―――』


 頭が働かない。何も聞こえない。

 血が温かい。死ぬ。

 続け様に放たれようとしている炎の竜に恐怖心すら感じなくなっていた。


 『ああ、コナミさんに、会いたい』


 炎の竜はアイリの身体を燃やし尽くした。



―――――――――――――――



 その後は目を覚ますと傷を引き継いで死に絶えたコナミがそこにいた。後ろでナギアはジークと戦闘しているがアイリにはコナミしか見えていなかった。何度呼んでも起きる事は無く、ズタボロになったコナミを抱きしめる他ない。


 いつも傍に居て、いつも守ってくれて助けてくれるワタシの英雄(ヒーロー)。

 お願い、目を覚まして、お願い……!!



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 「悪いな、アイリッシュ。気持ちは嬉しいんだが私は一人で行くよ」

 「そう、デスよね。イヴさんなら一人でも十分強いデスし……」

 「ああ。あとお前に言わなければならない事がある」


 イヴは手を前に出し剣を一本出す。その剣は、会議室に置いてあったはずの"フィルスの大剣"だった。


 「会議室に置いてあったフィルスの大剣だが、あれは魔導によって精工に作られたレプリカだ。これが、私が回収した本物のフィルスの大剣だ。お前が持て」


 「あ、いや、その……」


 『剣を持て―――』


 頭にまた声が響いてくる。以前は闇の使者を討つ為に仕方なく剣を握ったが、あの時も身体が言う事を聞かず秘剣・聖光斬を撃つと目の前が真っ暗になってしまった。


 イヴはアイリの肩に手を置く、


 「剣を恐れるな。これはみんなを守る剣だ」


 そう言うとイヴはアイリの手を取り剣を握らせる。




※※सत्यं※ गो※प※※※य※न्※※※※



 目の前が暗くなっていく。意識を保つのに精一杯だ。

 何かに飲み込まれていく感覚に近い。

 怖い怖い怖い怖い。


 『剣を持て―――『剣を恐れるな。』


 被せるようにイヴの言葉が聞こえてくる。

 守る剣。コナミさん、コナミさん、コナミさん!

 ニヤついた顔もへっぴり腰も真剣な顔も、全部が愛おしい。

 今度こそワタシが守って――――



अ※हं※※ त※त्र ※ना※※स्मि※※※※



 「アイリッシュ」


 ハッと目を覚ますとアイリはいつの間にかフィルスの大剣を握っていた。自分の背丈を超える程の大剣だったが、重い等と感じる事もない。むしろいつも握っていたかの様にしっくりくる程馴染みがいい剣だ。


 「お前なら大丈夫だ、アイリッシュ。もしも迷う事があったら剣を見て私の言葉を思い出せ」

 「ありがとう……ございますデス……」


 まだ意識が戻ってぼーっとしているアイリの頭を撫でてイヴは去って行く。なぜかはハッキリと言えないが去り行くイヴの背中を見てもう二度と会えないと感じてしまった。

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