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閑話 アッシュからの手紙


 ゾルヴァル達がアイデールを落としに行ってた頃、俺はアッシュの手紙を前に悶々としていた。

 何が書いてあるのか怖くて見れない……、だけど何を書いてあるのか気になる。

 もし俺について行けないって事が書かれていたら、俺が怖いなんて書いてあったら俺はどうなってしなうのか怖かった。

 でもほんのちょっとの期待もある。

 今まで俺の事を見捨てずに一緒に居てくれたアッシュなら……なんて淡い期待もしているけど、それよりも不安が勝った。


 俺は今まで暴走したり変なってアッシュを沢山悲しませて迷惑かけてきた。

 いよいよ愛想尽きたんじゃないかとそう言うことがずっと頭の中でぐるぐるしていたのだ。


「はぁ……。

怖がってちゃ本当の家族じゃないよな……。

でもなぁ……、はぁあああああああ……」


 アッシュが居てくれたから俺は俺のままでいられる部分がある。

 失いたくない!でも怖い!


 良くわからない感情も相まって苛立ちも感じていた。



 アデルが悶々としている頃、アッシュは吹っ切れてアデルを待っていた。

 アデルの元から離れるなんてもとより考えていなかった。


 離れていけば自分はこの世界で本当に一人になってしまうと考えていたのだ。

 アッシュはアデルの元に居続けるのはアデルの為でもあり自分の為でもある。


 お互いがお互いを必要とし大事に思っているのだ。


「手紙ちゃんと読んでくれたかな……」


 アデルが村を襲い、変になっていた時、アデルの目は真っ赤になっていた。

 自分と同じ赤い目だけど自分とは全く異質なもの。


 あれはアデルではなく別の何かと感じてしまったのだ。

 それに戸惑いあの時だけとはいえアデルを避けてしまった事は後悔したし、俺の態度を見て酷く悲しそうな顔をしたアデルにもっと後悔した。


 この城に戻ってきた時も戸惑いは続いたけど、なんとなくこんなの自分じゃないような気がして、振り払うようにとにかく体を動かして頭の中を空っぽにした。


 そんでいろいろ考え行き着いた結論はアデルが変わってしまっても、それでもアデルは大事なんだとう事。 


 あれ以来アデルは部屋に引きこもっているから会えることも会いに行くことも出来なかった。

 だから気持ちをなんとか伝えたくて手紙にして、唯一アデルの部屋に入る事を許されているアデレスに託した。


 アデレスはちゃんと渡したと言っていたから後は読んでくれるのを待つだけだ。

 だけどその待つ時間がもの凄く長く感じてしまう。


「はぁ……。

ずっとアデルの顔見てない気がするな……」




 アッシュがそんな事を思い、別の感情で悶々としているのを知らないアデルは未だ手紙を睨みつけて手を出したり引っ込めたりをする。


「よ、よし……せーの!で封を切って最初だけ……最初だけ読もう……」


 ようやく手に取り、恐怖に手が震えながら封を開ける。


 “読んでくれてありがとう。

 本当は直接言いたかったけど部屋から出てこないから手紙にしました。

 僕はアデルが少しずつ変わっていく事に戸惑いを感じた。

 僕の知るアデルではなくなった時、僕はアデルという居場所を失うんじゃないかと恐怖もした。

 でもそれ以上にアデル自身が自分が変わってしまう事へ恐怖しているのをわかっていたのに、あの時に変に避けるような真似をしてごめんない。

 村の唯一の生き残りである僕達二人、出来ればこれからもずっと支えあっていきたいと思ってます。

 だから、僕はアデルがどんな事になってもアデルを信じて支えます。

 僕達二人と悪魔達と助けた亜人達で頑張っていこう。

 僕達のあの村のような幸せで楽しい居場所を取り戻して今度こそ僕とアデルの力を合わせて守っていこう。

 だからこれからもよろしくアデル”


 最初だけだと決めていたのに思わず最後まで読んでしまった。

 俺も謝りたい……。

 涙が溢れながらそう思った。


 心配かけた事、いじけて引きこもってたことを。


 そしてこの気持ちを伝えたい。


 俺もアッシュと一緒に頑張りたいと。


 手紙を握りしめ部屋を出てアッシュの所へ行く。

 居場所なんてわかっている。

 地下の訓練場で体を動かしている事は魔力視で見えている。


 途中アデレスとすれ違ったけど、ニコニコ笑っているだけで何も言って来なかった。

 言ってきても無視するつもりだったけど。


 途中浮遊して急いで向かい、たどり着く。


「あ、アッシュ……」


 俺に気がついたアッシュは笑顔で駆け寄ってくる。

 いざこうして彼の前に立つと変に緊張してしまう。


「お、俺の方こそごめんなさい……。

俺もアッシュと頑張りたい!」


「プッ」


 アッシュは唐突に噴き出す。

 なんで!?と思って顔をあげたら、頭を撫でられた。


「アデル泣いてたでしょ。

目真っ赤だよ」


 直ぐに見ぬかれ恥ずかしくなる。


「もう僕は戸惑ったりしないから。

アッシュ兄ちゃんが支えてあげるからどーんときなさい!」


 そう言って笑うアッシュの笑顔が眩しかった。


 アッシュらしさに俺もつい笑顔になる。


 その後は俺の私室で二人だけで村の思い出などいろいろ話し、笑いあった。

 久しぶりも本当に楽しい時間を過ごした。



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