弔い ※閲覧注意
俺が母を抱きしめ泣き叫んでいた頃、アッシュは両親を、そしてレミを探していた。
あちこちに倒れている魔族に混じって人間も何人か倒れていた。
アッシュは憎しみの籠もった目でその死体を見るが今はそれどころではないと思い探す。
最悪な形でアッシュは父と母に再開した。
「お、お父さん……お母さん!!」
いくつも並べられた首の中に二人の頭があった。
胴体は乱雑に置かれ、首だけが一直線に並ばれている。
その行為の意味はわからないがアッシュは両親の頭部を抱き締め大きく泣き声を上げた。
一頻り泣いたあとは両親の頭部を大事に置いておく。
「後で……必ず埋めてあげるから。
だから……ウゥッ……待ってて……。
レミちゃんを……レミちゃんを探さないと……」
ヨロヨロと立ち上がり歩きまわって探してもどこにも居ない。
どこを探しても居ないことでアッシュはレミが何処かに隠れていて生きているかもと希望を見出し力強く探す。
「レミ~!!レミ~~!!
アッシュだ!!隠れていたら出てきてくれ~~!!
レミ~~~~!!」
もう日が暮れ、燃えている家の灯だけを頼りに呼び掛けながら探しまわる。
村の隅々を。
そして……。
見つけた。
村のはずれの収穫物を保管する倉庫の裏手で。
「……」
アッシュは動かなくなっている愛おしい人を呆然と見ていた。
顔は暴行されたのかなんとか誰か判別する事が出来るくらいに腫れていて、服ははだけ、薄汚れた白濁の液に穢され虚ろな目をした変わり果てた恋人を目の当たりにしてアッシュの心にヒビが入った。
「ううううううああああああああ!!
レミイイイイイイイイイイ!!」
体中が穢らわしい液に濡れていてもお構いなしにレミを抱きしめ声が枯れるまで泣き叫んだ。
憎イ……人間ガ憎イ……。
レミを、両親を、この村を滅茶苦茶にした人間が憎い!!
復讐の炎がアッシュの心で燃え上がる。
アッシュはレミの遺体を優しく抱き上げ村の中央へ運び、アベルを探した。
いや、探すと言うまでもなくアベルの喉を張り裂けんとばかりに叫び泣いている声が聞こえ、その元へ歩みを進むる。
比較的綺麗に残っているサーシアの家の中でアデルはサーシアを抱いて泣いていた。
「アッシュ」
泣き叫んでせいで喉は酷く傷つき声は醜く響く。
「アデル……皆……皆っ」
皆……。
無魔法の魔力腕でそっと母を持ち上げ藁ベッドに寝かせる。
俺はアッシュと共に外に出て確認していく。
村人に抵抗して殺されたのとドラグルによって殺された人間という名の蛆虫を無視して、村人を一人ずつ確認して遺体を集めていく。
「こんな……小さな子まで……」
赤ん坊は胸を刃物で貫かれていた。
「アッシュ、弔おう。
祈ろう。
皆が生まれ変わった時……幸せに……なれるように……」
アッシュは涙を流しながら無言で頷いた。
無事な家を壊し木材を積み上げ村の皆がしっかり火葬できるようにする。
火をつけ楽しかった日々の思い出を思い出しながら燃え盛る炎を二人で最後まで眺め続けた。
朝方には大きな穴を掘り、燃えきったそれを掘った穴に入れ土を被せていく。
「体は大地へ、魂は天に。
生まれ変わり再び出会う事を祈って」
ここへはもう戻って来ない。
だから墓石は作らない。
ここから俺は……俺達はこの村を、幸せを壊した奴等に復讐をする。
母さん。
仇は必ずとるから。
だから安らかに……。
もっと一緒に居たかったよ……母さん……。
俺は復讐するべき相手を調べるため、放置していた人間の遺体を調べる。
どこの誰で、どの国から来たのか知っておかなきゃいけない。
アッシュも自主的に手伝う。
その目には怒りに満ちていた。
出てきたのは冒険者の証。
ブダルダ王国冒険者ギルドゲダル支部発行と書いてある。
復讐するべき相手は判明した。
一応全部探ってみたけど全員ギルドカードを持つ冒険者だった。
そして、同じギルド支部発行だった。
先ずはここからだ。
でもその前に力をつけないと。
「アッシュ、こいつ等の親玉はこの街にいる。
だけど力が足りないから力をためてから蹂躙しよう」
「……うん。
僕達みたいな魔族が増えないように……徹底的にやらないと。
皆が……皆に……顔向けできない!!」
俺達は村人の皆が復讐を望まない何てことはわかっている。
皆はすごく優しいから。
でも、この心の憎しみは止まらない。
狂ってしまいそうな程に憎しみが深まっていく。
止められな。
「ドラグル、こいつ等の死体を一箇所に集めて」
ドラグルは命令通りにせっせと働く。
「こいつ等どうするの?」
「俺の今まで使ってこなかったスキルを試す」
スキルとして存在してるんだからちゃんと出来るはずだ。
生け贄はこいつ等で悪魔を召喚する。
願わくば、俺達に力を与えてくれる悪魔を。