13歳 幸せな日々
この魔人族の村に住み始めて二年目。
俺はだいぶ立ち直り、村人とも良好な関係だ。
魔法の練習は一日たりとも休まず行っていたお陰で魔力制御、魔力操作は村一番となった。
また、ドラグルの存在を明かしても誰も気味悪がる人は居なくて、受け入れられ、その力を村の為に発揮した。
畑は拡張され、食料に余裕が出来て俺とドラグルの力が認められて森に入る事を許された。
アッシュもあれから相当頑張り、無魔法と5歳になった時に得たスキルの雷魔法を自在に使いこなすようになっていた。
俺達が無魔法を便利に扱うものだから村の子供達は皆必死に無魔法を勉強している。
今ではアッシュとは親友同士になりいつも一緒に狩りに行ったりしている。
ちなみにアッシュは俺より一つ年上で14歳。
みんな俺がアッシュの一個下と知って一様に驚いていた。
拾われた当時は慢性的な栄養不足から体の成長が妨げられマイナス3歳程に見られていたから。
便利な無魔法に頼りっぱなしで今でも相変わらず貧相な体をしているが、毎日ちゃんとお腹いっぱい食べられるようになって多少は筋肉がついた。
ドラグルもあれから濃い俺の魔力を時折吸って狩ってくる獲物の内蔵をたらふく食べて少し成長した。
体が大きくなり力も強くなって知能が少し上がったと思う。
喋りも少し流暢になってきている。
サーシアは今では俺の母的存在で、森に入るときは相当心配される。
そんな俺が今何をしているかと言うと、アッシュとドラグルと一緒に肉を獲りに来ている。
「アッシュ、一旦ここで待機。
ドラグルが獲物を見つけたからこっちの方へ追いやってくる」
「了解」
アッシュはちゃんと手入れをされていない錆びてきている剣を肩に担いで獲物を待つ。
俺は俺は無魔法の技で魔力網を張り巡らせ待つ。
暫くすると、ドドドドという大きな足音が遠くから聞こえてくる。
「今回の獲物は大物だね」
「ああ!まあ俺達なら大丈夫だろうけど油断はするなよ」
「うん!」
見えてきた今日の獲物は巨大なレッドボアだった。
俺達の方へまっすぐ突進を……、いや逃げてきている。
今ではドラグルから放たれるプレッシャーは森の大物でも逃げるぐらいだ。
俺の魔力網にかかり勢いが殺され、その隙にアッシュがボアの横をすれ違いざまに体内で魔力を循環して身体強化して首を斬り込む。
ピギイイイイイイイイイイイイ!!
レッドボアの断末魔が森に響き渡る。
まだ生きているレッドボアを俺の魔力腕とドラグルが抑えこみ身動きを取れなくし、アッシュがトドメにもう一度首を刺す。
これが俺達の最も綺麗に肉を狩るパターンだ。
ドラグルがやると肉がグチャグチャになるし俺がやると時間がかかるからこれが一番安定している。
アッシュがレッドボアの腹をかっ捌き、ドラグルが美味しそうに内蔵を貪る。
しばらくするとドラグルは腹から顔を出し満足そうにしている。
その後は一番力持ちなドラグルがレッドボアを担ぎ村へ戻っていく。
俺達が村へ辿り着くと、女の子が心配そうにアッシュに駆け寄る。
「アッシュ!!おかえりなさい!
アデルくんもお帰り。
ドラちゃんも今日はお疲れ様!
今日は大きいね!」
この子はレミと言って、アッシュの幼馴染みだ。
アッシュは気が付いていないがレミはアッシュに惚れている。
というかアッシュ以外の村人全員はわかっている。
アッシュは鈍感だしレミは奥手だから二人はなかなかくっつかずに村全体は二人の関係にやきもきするばかりだ。
レミは俺にも懐いてくれていて、俺的には妹的な存在で、サーシア、アッシュの次に大事な人だ。
アッシュにはそのうち発破をかけてやろうと考えながら肉を村の中央へ持っていく。
村の中央では男たちが既に解体包丁を持ってスタンバイをしていた。
「ここまで凄い悲鳴聞こえたぞ。
凄いじゃないかなそんな大きな獲物を仕留めて」
アッシュの父ちゃん、ラズがアッシュと俺の頭を乱暴に撫でる。
ゴツゴツした手だけど嫌な気持ちにはならない。
アッシュとレミは何か楽しそうに話しているから俺はそっと離れて家に帰る。
「おかえりなさいアデル」
「ただいま母さん」
俺はサーシアの事を母さんと呼んでいる。
いつも俺を心配してくれて、俺の為に一生懸命色々してくれる、凄く愛情を感じて、「あぁ、こういうのがお母さんなんだろうな」って思ってついお母さんって口走ってしまったら、サーシアは泣いて喜び村中に自慢しに行っていた。
それからなんか名前で呼ぶのは気まずくなって恥ずかしさの僅かな抵抗として母さんと呼んでいる。
「今日はどうだったの?」
「おっきいレッドボアを狩ったんだ。
後でラズさんがお肉を届けてくれると思う」
「それなら今日はステーキにしないとね」
微笑み温かい手で俺の髪を撫でる。
これが幸せなのかと俺は一日一日を噛み締めた。
ドラグルも母さんもアッシュもレミもこの村の大人達、子供達皆が好きだと心から思える。
夕方位にラズさんが肉を届けに来てくれて、母さんは夕飯の支度を始める。
と言っても肉を焼くだけだけどそれでもすごく美味しい。
椅子に座って待っていると、外から男達が盛り上がっている声が聞こえる。
どうやらあの場で宴会を始めたみたいだ。
「食べたら宴会に行くのか?」
「俺は良いや。
ゆっくり休んでる」
頷くと焼いてる肉へ向き直る。
肉の焼ける香ばしい匂いが漂う。
その匂いに釣られてお腹がなってしまった。
サーシアは機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら肉の焼き加減を見ていた。
この何気ないヒトコマも俺にとっては最高の画だ。
自然と笑みが溢れる。
焼き上がったレッドボアの肉は俺が少し大きいくらい、ドラグルには大きいのが、母さんのは少し小さめのが食卓に並ぶ。
目の前の御馳走に我慢できず、腹の主は早くくれと催促する。
「さあ食べましょう」
母さんのこの言葉がいつもの合図で、俺とドラクルは豪快に齧り付く。
夕飯を終えれば母さんは椅子に座りお茶を飲み、俺は外のどんちゃん騒ぎを聞きながら椅子に座り日課の魔力練習をする。
今では毎日がこんな感じの繰り返しだ。




