第6話:因縁
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回のテーマは「承認と意地」
隼人と平乱人の激突、そして希の予想外の介入によって戦況が大きく動き出します。
正しさと意地、力と知略、それぞれの思惑が交錯する中で、隼人はひとつの“選択”へと導かれていく…
そんな物語になっています!
どうぞ、楽しんでいただければ幸いです。
濁りのない真っ直ぐな眼差し。自信に満ちあふれた表情。心を揺さぶる熱い言葉。
政界の大物・平 乱人の圧倒的なカッコよさが、隼人の心を捉える。
認められ、期待され、手を差し伸べられている。
隼人は生まれて初めて、
「この人の言う通りにすべきか」という、
胸が熱くなるような葛藤を感じていた。
「亜仁馬くん、悩むのはわかるよ!
キミは若い頃の私にそっくりだからね!」
悩んでいる気持ちさえも、
味方に変えてしまう交渉力。
いや、これはズルい交渉なんかじゃない。
長い人生を必死に生きた男の、
心からの「熱いつながり」だった。
「あんたの言ってる事は正しい……と思う。
けど……それでもやっぱり、俺は気に入らねえ!!」
しかし、隼人にも若さゆえの意地がある。
正しいか間違っているかではなく、
ただ「気に入らない」。
正しさを認めてしまえば、
今までの自分を否定することになる。
そんな安いプライドこそが、
隼人にとっては生きてきた証だった。
「ふむ……
気に入らないのなら、どうするのかね?」
乱人が余裕の笑みを浮かべる。
「当然……ぶっ倒す!!」
「ハッハッハッ!それはいいね!
男らしく拳で話そうじゃないか!」
【圧倒的な天才】
隼人はストリートファイトの独自の構えから、思い切り拳を突き出した。
つぎの瞬間、隼人の体に強い衝撃が走り、地面に叩きつけられた。
乱人の目にも留まらぬカウンターの突きだった。
「!?」
乱人は涼しい顔でネクタイを締め直しながら笑っている。
「うん、センスはいい。
だけど、若さゆえの油断があるね。
次は遠慮なく、狼の力も使いなさい」
隼人はガバッと立ち上がり、
ハクを呼び出しながら吠える。
「調子に乗りやがって!!
ハク、あのクソジジイを包囲するぞ!」
ハクが遠吠えをすると、7匹のオオカミが乱人を取り囲み、一斉に襲いかかる!
しかし、乱人は見事な空手の身のこなしで、
オオカミたちの攻撃をすべてかわし、鋭い蹴りでハクをぶっ飛ばした。
『……!? この男……強い!!
ハヤト、まともに戦っては勝てんぞ!』
【ペリカンの奇襲!】
「はっはっは! シラガミ様も形無しだね!」
乱人が勝ち誇り、ハヤトにトドメを刺そうとした、その時。
「だらしないですねぇ、隼人さん!
正面勝負だけが戦いじゃないって、言ったでしょ!」
背後から、希の声が響いた。
天から舞い降りたのは、
巨大な翼を持つ狂鳥・ペリカン!
ペリカンは大きなクチバシを開けると、
なんと乱人の頭の上から、その巨体をパックリと丸呑みにしようとしたのだ!
「むっ!? これは……!」
さしもの乱人も、
このおかしな鳥の奇襲には驚き、動きが止まる。
「今です、隼人さん!
あいつの視界を奪いました!」
「ナイスだ、女!! ぶっ飛べぇええ!!」
ハヤトの右手に
サファイアブルーの炎が燃え上がる。
希のナイスアシストにより、
ハヤトの全力の一撃が、
ついに乱人の胸元へと迫る!
「勝てる!」誰もがそう思った。
【王の咆哮】
「ふむ。素晴らしい連携だ」
クチバシに包まれながらも、
乱人は冷静に笑った。
乱人がスッと手を掲げる。
『乱人よ……
よもやこのような小鳥に手こずるとはな』
乱人の背後に、鋭い爪と黄金のたてがみを持つ、ケタ違いのバケモノ
――百獣の王・ライオンが姿を現した!
空気を引き裂くような、
凄まじい「王の咆哮」が響き渡る。
ズドォオオオン!!!
激しい音波の衝撃で、乱人を呑み込もうとしていたペリカンは一瞬で吹き飛ばされ、ハヤトの青い炎も、かき消されるように消滅した。
ハクも、ペリカンも、その圧倒的な「王の迫力」の前に、ただ本能が恐怖して、ひれ伏すことしかできない。
倒されたのではない。
戦うことすら許されないほどの「格の違い」だった。
隼人は、感動にすら近い震えで体がすくんで動けなくなる。
「亜仁馬くん、キミはまだ若い。
私の元へ来るか、考える時間はたっぷりあるよ」
乱人は満足そうに笑い、
ハヤトの肩をポンと叩いた。
【エリート眼鏡の“やらかし”】
「さて、金森くん。
この若者たちを、いったん安全な部屋へ連れていきなさい」
乱人が指示を出す。
その横で、メガネをクイッと光らせた金森利一が、スマホのような端末を操作した。
(平先生……
あなたが綺麗事で飼い慣らそうとしている男は、私の計画を狂わせる劇薬ですよ。
……ここで捕まえさせるわけにはいかない)
利一の目が、一瞬だけ冷徹に光る。
利一はわざと、大げさに慌てた声をあげた。
「あ、あわわわ!大変です平先生!
先ほどのアナコンダの落下の衝撃で、警備ドローンの制御システムが完全にバグってしまいました!」
ビーーーー!! ビーーーー!!
利一が手元のボタンをパチンと叩いた瞬間、ドローンたちが火花を散らしながら暴走を始めた。
そして、ハヤトと希の体をガシッと掴むと、ものすごいスピードで、窓の外へと強制的に「射出」してしまったのだ!
「あーーーれーーーー!?」
叫びながら夜空へ飛んでいく希とハヤト。
乱人が呆れた顔で利一を見る。
「……金森くん。キミの優秀な頭脳は、たまに大事なところで役に立たないね」
「申し訳ありません、平先生。
私の計算ミスでございます…」
利一は深く頭を下げながら、
ハヤトたちが飛んでいった夜空を見つめ、
不敵にニヤリと笑うのだった。
【会わなければならない】
ドローンによって、
REAの敷地の外へと放り出された二人。
行くあてのない隼人を、
希は自分の自宅へと連れ帰った。
部屋の中は、食べ散らかしたカップ麺やスイーツの袋がそのまま放置されている。
服も脱ぎっぱなし。
あまりにもガサツで汚すぎる空間で、隼人は体育座りをしながら真急に考え込んでいた。
「お前、昼は先生のフリして、家ではこんなに汚ねえのかよ……」
「うるさいですねぇ!
悔しいのはわかりますけどぉ……
何か食べません?」
チョコスナックをサクサクと齧りながら、希がのんきに声をかける。
「悪ぃ……
今、何か食える気分じゃねえんだ……」
「まったく、男ってのは意地だけで生きてるのかしら?
あ、ところで暇だったから、隼人さんが追い出された元アパートの監視カメラをハッキングして見てみたんですよ」
希は画面を隼人に見せる。
「そしたらね、大人しそうで可愛らしい女の子が、元あなたの部屋の前に、何度もやってきてるんですよねぇ……」
その言葉に、なぜか隼人の表情がピクッと引きつる。
「……あ! もしかしてぇ、隼人さんの彼女ぉ♡隼人さんって、ああいうタイプが好みなんですかぁ?」
希がニヤニヤしながらからかっていると、隼人が急に、何かが繋がったような顔で叫んだ。
「これだ!!」
「はい? 何か思いついたんですかぁ?」
「ああ! あいつは俺の妹だ。
あいつの”圧”はストリートファイトでも見たことがねぇ、俺の本能を揺さぶるものがあった。
あの平 乱人にやられたこの悔しさを晴らすには、あいつに会うしかねぇ!」
隼人は、つぎにあいつが部屋の前に現れるタイミングを狙い、かつて暮らしたアパートへと走り出すのだった。
第6話…完
第6話を最後までお読みいいただき、本当にありがとうございます。
今回はバトルと心理戦、そして少しコミカルな崩しを混ぜた回になりました。
平乱人という“圧倒的な存在”を前にして、隼人がどう抗うのか。そして希の行動が何を意味するのか…
隼人の物語はここから新たな展開へ!
次回もまた、読んでいただけると嬉しいです。




