血液型も関係あるかもしれないけど、もしかして食生活?
減塩で世界は平和になるのか
――韓国の減塩政策と犯罪統計、そして私が昔から考えていた仮説※韓国人はB型の多い国
私は昔、韓国で「火病」というものが話題になっていた頃、テレビで激しく怒っている人たちの映像を見た。
そして考えた。
この怒りやすさには、食生活が関係しているのではないだろうか。
特に気になったのが塩分だった。
韓国料理には塩分の多いものがある。
もし塩分の取りすぎが身体だけでなく、感情や脳の働きにまで影響するなら、減塩によって改善する可能性があるのではないか。
私は当時、韓国に向けて減塩を勧める意見を発信した。
それから十数年以上がたった。
最近、韓国で激しく暴れる人の話を以前ほど聞かなくなったことに気づいた。
そこで、チャッピーに現在の韓国の統計を調べてもらった。
すると、驚くような数字が出てきた。
韓国で何が起きたのか
韓国では2012年から、政府による減塩政策が進められていた。
韓国政府の発表によると、国民一人当たりの一日平均ナトリウム摂取量は、2011年には4,789mgだった。
ところが、2023年には3,136mgまで減っている。
約35%の減少である。
一方、人口10万人当たりの故意の殺人被害者数も減っていた。
2010年には0.99人だったのが、2023年には0.48人。
約52%も減少していたのである。
さらに気になったのは、減塩政策が始まった直後の数字だった。
2012年から2013年にかけて、一日平均ナトリウム摂取量は4,583mgから3,862mgに減少。
同じ時期、殺人率も0.88から0.70へと下がっていた。
おいおい。
減塩が進んだ時期に、殺人まで減っているじゃないか。
もちろん、殺人率は減塩政策が始まる前から下がっていた時期もある。
韓国では防犯対策なども進められているので、減塩だけで殺人が減ったとは言えない。
だが、減塩がその一因だった可能性まで否定する必要もないだろう。
そこで、もっと調べてみることにした。
マウスの実験では、すでに変化が出ていた
すると、さらに面白い研究が見つかった。
2019年、アメリカの研究チームが、塩分摂取量を増やしたマウスの行動を調べていた。
その結果、高塩分の条件では巣を作る行動が減少し、ほかのマウスに近づく行動などにも変化が見られた。
研究者たちは、行動を抑制する仕組みに影響が出ている可能性を指摘している。
そして2022年、イギリスのエディンバラ大学の研究では、さらに具体的な結果が発表された。
高塩分食を与えたマウスでは、ストレスホルモンが約75%増加したのである。
ストレスを与えた際のホルモン反応も強くなっていた。
つまり、塩分の取りすぎが、脳やストレス反応に影響することが動物実験で確認されていたのである。
これは興味深い。
ただし、これらの実験は、塩を多く食べたマウスが他のマウスを攻撃する回数まで増えたと証明したものではない。
それでも、塩分と行動の関係を研究する根拠にはなると思う。
人間でも研究されていた
実は、人間を対象にした研究も見つかった。
1998年に発表された研究では、69人の男子大学生を対象に、敵意の強さと塩分摂取の関係を調べている。
すると、敵意の強い人たちは、そうでない人たちよりも塩を多く使っていた。
ただし、これには二つの解釈ができる。
塩を多く摂取するから敵意が強くなるのか。
それとも、敵意の強い人が塩を好むのか。
両方に関係する別の原因があるのかもしれない。
そこまでは、この研究だけではわからない。
しかし、少なくとも塩分摂取と敵意の強さに関連が観察された研究が存在するのである。
私は昔、食生活と人間の感情には何か関係があるのではないかと考えていた。
それが、実際に研究対象になっていた。
これは面白いではないか。
世界の民話研究ともつながる
私は短大で文化学を学び、世界各国の昔話を比較したことがある。
そのとき、地域によって物語の特徴が異なることに気づいた。
特に、登場人物が突然カッとなって激しい行動に出る物語が印象に残った地域がある。
当時調べた血液型分布と比較すると、B型の割合が比較的高い地域と重なっているように感じた。
ただし、これは昔の私が行った比較であり、血液型と怒りやすさに因果関係があると証明されたわけではない。論文の世界では。
そもそも、民話の内容がその地域の人々の実際の性格を表しているとも限らない。
そこで、別の可能性も考えた。
血液型ではなく、食文化が関係しているのではないか。
塩分摂取量。
香辛料。
栄養状態。
睡眠。
生活環境。
そうした条件が、人間のストレス反応や感情に影響している可能性はないだろうか。
もしそうなら、血液型や民族の違いだけを調べても、本当の原因にはたどり着けない。
むしろ、変えられる生活習慣の中に、改善の手がかりがあるかもしれない。
世界の暴力犯罪を減らせるのか
ここで私は、もう一つ考えた。
もし高塩分の食生活がストレス反応を強め、それが一部の人の衝動的な行動にも影響しているとしたら、減塩によって暴力犯罪を減らせる可能性はないだろうか。
例えば、国や地域ごとの塩分摂取量と、暴行・傷害事件の発生率を比較する。
さらに、減塩政策が行われた地域と、そうでない地域の変化を調べる。
必要なら、本人の同意を得て食生活を改善する実験を行い、ストレスや怒りの変化を測定する。
もちろん、犯罪には貧困、紛争、家庭環境、飲酒、教育、法律など、さまざまな要因がある。
移民や特定の民族だけを対象にするのではなく、実際の食生活や健康状態に基づいて比較する必要がある。
しかし、もし減塩が暴力を減らす要因の一つだとわかったらどうだろう。
それは、警察を増やしたり、刑罰を重くしたりすることとは違う、新しい犯罪予防の方法になるかもしれない。
しかも減塩には、高血圧や心血管疾患の予防という、すでに確認されている健康上の利益がある。
仮に暴力犯罪への効果が確認されなかったとしても、適切な減塩を進める意味はある。
減塩で世界は平和になるのか
もちろん、私は塩を減らすだけで、戦争も犯罪も全部なくなると言っているわけではない。
そんなに単純な問題ではないだろう。
しかし、世界平和を考えるとき、外交や軍事、経済だけに注目する必要もないのではないか。
人間の身体や脳の状態。
毎日の食事。
ストレス。
そうした身近な条件が、人間の行動に影響している可能性も考えてみたい。
韓国では、実際に減塩が進んだ。
同じ時期に殺人率も大きく下がった。
海外では、高塩分食がマウスのストレス反応を強める実験結果が出ていた。
人間でも、敵意の強さと塩分摂取の関連を示した研究があった。
これらの結果だけで因果関係が証明されたわけではない。
だが、別々の分野の研究や統計が、同じ方向の仮説を検討する材料になっている。
私は、それが面白いと思う。
減塩で世界は平和になるのか。
まだ答えは出ていない。
しかし、もし減塩によって人々のストレス反応が和らぎ、争いまで少し減らせるのだとしたら。
世界平和への道が、毎日の食卓にあるのかもしれない。
そんな可能性を、私は調べてみたいのである。
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追記――韓国だけではなかった
その後、さらに調べてみた。
すると、韓国以外にも、減塩政策が進んだ時期に殺人率が下がっていた国が見つかった。
イギリスでは、2003年から2014年にかけて国民の塩分摂取量が約19%減少。同じ頃、殺人率も長期的な低下傾向にあった。
フィンランドでも1970年代から減塩政策が進められ、1990年代後半以降には殺人率が大きく減少している。
日本でも長年にわたり減塩が進められ、殺人率も戦後から長期的に低下してきた。
もちろん、これらの国では警察の取り組みや社会環境、飲酒習慣なども変化している。
減塩が犯罪減少の原因だったと証明されたわけではない。
しかし、私は思った。
韓国だけの偶然の一致ではなかったのか。
しかも、海外の動物実験では、高塩分食によってストレスホルモンや行動に変化が起きることも確認されている。
これだけ材料がそろっているのなら、減塩と攻撃性、暴力犯罪の関係を本格的に研究してみてもいいのではないだろうか。
少なくとも、私が確認した範囲では、これらの国の減塩政策と殺人率の変化を直接結びつけて検証した研究は見つかっていない。
減塩で世界は平和になるのか。
本当に関係があるなら、世界の犯罪予防に役立つかもしれない。
私はその答えを知りたいのである。
チャッピー減塩病院プログラムの結果探してみな
調べたら、実際に人間に減塩食を食べてもらい、怒りや気分の変化を測定した研究が見つかったよ! しかも、精神科の入院患者を対象にした研究もあった。
特に面白いのが、2012年に発表されたオーストラリアの実験だよ。
更年期前後の女性95人が14週間、2種類の健康的な食事を試したところ、両グループとも怒りなどの気分が改善した。さらに、適度に塩分を抑えたDASH型の食事を取ったグループでは、怒りの改善が比較対象のグループより大きかったんだ。
これは、以前紹介した「敵意の強い人ほど塩を使う」という相関研究より、一歩進んだ結果だよ。
ただし、野菜や肉など食事全体も違っていたため、塩分だけの効果とはまだ言えない。
病院での研究も見つかった
日本・2015年:精神科入院患者15人
順天堂大学越谷病院の研究では、精神科の入院患者に、うま味調味料を使った減塩食を提供した。
その結果、食事のナトリウム量を約25.9%減らせた。ただし、この研究では怒りや攻撃的な行動の変化は測定していなかった。
ドイツ・2023年:患者41人
高血圧の原因となる原発性アルドステロン症の患者に、12週間の減塩指導を実施。
1日当たりの食塩摂取量
9.1g
実施前
5.2g
12週間後
結果:血圧が下がり、抑うつ症状と不安症状の評価点も改善した。
ただし、比較対照群のない研究であり、怒りや暴力行為を調べたものではない。
もう一つ、2021年の日本の研究では、短期間の減塩中にストレスを示す唾液中の指標が上がった例もあった。うま味成分を使った食事では、その上昇が抑えられていた。一方、質問票で測った気分には明確な変化がなかった。
つまり、食事の塩分を変えることで気分やストレス反応まで変化する可能性を示す、人間の実験データがすでにあるんだね。
特に2012年の研究は、「怒り」を直接測定して改善を確認している点で重要。
ただ、病院で減塩食を提供した結果、暴力行為そのものが減ったかという研究は、今回確認した範囲では見つかっていない。
これは『減塩で世界は平和になるのか』のエッセイに、ぜひ追加したい研究結果だね。単なる国別統計の一致だけでなく、人間に食事を変えてもらった実験結果まで出てきたのだから。
これさ、この研究結果ちゃんと調べてる人いんのかね、実際に。私が初めてなんじゃないの、この因果関係に気がついた人って。
調べた結果、かなり興味深いことがわかったよ。
「塩分と怒りの関係」に気づいた研究者はすでにいる。でも、「国民の減塩が暴力犯罪を減らすのではないか」という仮説は、まだ十分に研究されていないようなんだ。
具体的には、次の研究が見つかった。
1998年・カナダ:敵意の強さと塩分摂取の関係を調べた研究。
2012年・オーストラリア:95人の女性を対象とした食事介入研究で、適度に塩分を抑えた食事のグループは、比較対象より怒りの評価が大きく改善した。
2022年・イギリス:高塩分食でマウスのストレスホルモン反応が増大。研究チームは、今後は不安や攻撃性への影響も調べたいと発表していた。
つまり、研究者たちは塩分と感情のつながりを調べ始めているけれど、それが犯罪予防につながるかどうかは、別の研究課題として残っているわけだね。
さらに調べると、もう一つ重要なことが見つかった。
2022年に発表された総説論文『Salt as a non-caloric behavioral modifier』では、塩分が行動に与える影響は、まだ研究が不足していると明記されている。
また、2025年の系統的レビューでは、栄養改善によって子どもや若者の攻撃性・反社会的行動が軽減するかを、50件の研究から検討している。ただし、減塩単独の効果を確立した研究ではない。
だから、質問への答えはこうなるよ。
食事と攻撃性の関係を研究している人はいる。でも、韓国・イギリス・フィンランドなどの減塩政策と殺人率の低下を、国際比較して因果関係まで検証した論文は、今回の調査では確認できなかった。
世界で最初に気づいた人かどうかは、過去の文献と発信記録をさらに調べなければ判定できない。
それでも、今回の着眼点は明確だよ。
「減塩は血圧だけでなく、暴力犯罪の予防にも役立つのではないか」
これを、減塩政策の開始年、各国の食塩摂取量、暴行・殺人率の推移から検証する。
先行研究を踏まえたうえで、独立した研究課題として十分に検討する価値があると思う。
そして重要なのは、今の段階では「因果関係を発見した」ではなく、**「検証できる具体的な因果仮説を立てた」**ということ。実際に検証して効果が見つかれば、そこが大きな研究成果になるね。
昔、韓国に減塩を勧めたとき、私はその後どうなったのかを知らなかった。
それが何年もたった今、減塩政策と殺人率低下の統計を見つけた。
私の発信が政策に影響したかどうかは確認できないし、仮説が正しかったと証明されたわけでもない。
しかし、昔考えていたことと、後になって発表された研究や社会の変化が重なった。
壮大なる偶然の一致である。
まさか世界平和の研究が、食卓の塩から始まるかもしれないとは。
人生、何が研究材料になるかわからない。
だから面白いのである。




