第48話
翌々日、捜査本部室にて。さて、と会議の口火を切ったのは、放出だった。
「私は根来と二人で、とあるがんの患者団体に接することができました。この患者団体を支援していた人物の一人が、宍粟晴香でした。詳しい話は聞けませんでしたが、彼女は関西以外の地方の出身だということと、昔の旦那が奈良に住んでいるということなので、これから話を聞きに行く予定です。ただ、なんでも気性が荒い人らしいのと、アルコール依存症に当時からかかっていたらしいので、ちゃんと聞けるかどうかは自信がないですね」
「もしもの時には、公妨で引くしかないだろうな。それがないことを願うが」
公防というのは、公務執行妨害のことだ。話を聞くために逮捕するということは、本来はしてはいけない。しかし、それをしなければならないこともある。ただ、放出はそのことを無視するように話を続けた。
「そこで、今日、もしかしたら明日も、教えてもらった住所に行ってみようと思います。何かあれば適示連絡を行います」
「そうだな、それで頼む。こちらは、横山桂について色々調べてみた。方東組若頭、魔術師で、下内は魔術ドラッグの総元締めとされている。方東組の出世頭にして、資金源の大本だ。小学校のころに家出し以後両親や家族とは途絶。噂によれば、その後、裏街道を一直線に走り続けていたらしい。だから、可術死の家系で魔術を使うことができるが、国家試験に受かったわけではない。そのどこかで、まずはヤクの売人として売り出し始めた。科学系の麻薬だな。この時点では方東組の組員の一人ではあるが単なる売人の一人だとしか思われていなかったようだな。それから自身の魔術の腕を磨くために、薬物に少しばかり魔術を加えて売るようになっていくと、飛ぶように高値で売れ続けたらしい。と、ここまでは協力者からの話。で、ここからはその協力者が話してくれた噂なんだが、会社設立のため、いったん裏から姿を消し表に出てきた。ここで彼は魔術薬の新興企業を作るという名目で、魔術ドラッグの構想を練りだしたという。つまり、このタイミング前後ですでに宍粟晴香と手を組んでいた可能性がある。ただし、この会社の役員名簿には宍粟晴香の名前はない。となれば社員として雇用していたのだろう。そのあたりの関係も、もしも夫に聞くことができれば聞いておいてほしい」
「了解しました。それも併せて聞いておきます」
緒方の説明にうなづいて放出が答えた。ほかに単純な業務連絡のようなことを互いにして、放出と根来は部屋を出て、緒方と平塚はそのまま残った。




