第37話
警吏所に戻り、捜査本部へと荷物などを置くと、さっそくホワイトボードを使って今後の話を進める。
「今、方東組に属しているとされる魔族の人がどれだけいるかを調べてもらっている。結果が出次第連絡が来る手はずになっているから、そちらはおいておくことにしたい。で、それ以外に何かわかっていることを、まとめておこうと思う」
緒方がホワイトボードで使う用の黒色のマジックペンの蓋を外しながら話し始める。
「方東組がおそらく出所なのは間違いないと踏んでいます。大阪付近で売買されている魔術ドラッグについては、ここがその総元締めになっています。売人はすでに十数人逮捕されていますが、末端に行くまでに複数の階層があることが確認されています。そのうち、半数が関与しているのが、方東組若頭補佐である宍粟晴香。女性で一般人、おそらく魔術ドラッグ売買の提案をしたと目されています。この人物が今どこにいるのかは不明です」
「キーパーソンだな」
放出の言葉に、緒方が方東組と書かれた文字の下に、キーパーソン、そして宍粟の名前を書く。
「今回はその提案者、そして供給源の一つ、最大のものと目されるこの方東組に焦点を当てて捜査する。それでいいな」
方針は一応決まった。しかし、また負犬地区に入るということは難しいだろう。ならば、外で捜査を行うしかない。
「魔術ドラッグは麻薬の一種で、麻取によるおとり捜査が認められることになっている。しかし、今のところ認められた件数は一件もない。これも、相手が魔術師である可能性が高く、おとり捜査だということがすぐにでも露見することが想定されるためだ。よって、地道な捜査ということが中心になるだろう」
緒方が仕方ないという口調で話し終わるころ、見計らったように電話が鳴る。出ると、それは、警察へ連絡をした暴力団関連の情報が出たということだった。




