第36話
いったん警吏所へと戻り、所長から連絡をしてもらい、そこから警吏研究所へと向かう。目的は、負犬地区でもらったこれらのものを鑑定してもらうためだ。当然、証拠品用の特別な袋に警吏所で入れている者の、実際のところ、証拠能力としてはそれ以前のことがあるためにないと考えている。それでも突破の糸口になれば、という思いで緒方らは警吏研究所へと出向いていた。
「……結論から言えば、この子袋に入っていた粉末は魔術合成薬物ですね。そして御札は神経に直接効果を及ぼすように特別に調整されたものでしょう。これらを合わせて用いることによって、単純に1つだけ使うよりも効果的に麻薬のような高揚感、万能感、他にも様々な効果を及ぼします」
研究員が会議室のようなところで緒方らに報告を直接している。15分かそこらで鑑定は終わったようで、そのために緒方らは警吏所に戻ることなく報告を聞くことができた。
「つまりは、麻薬として使えるということだな。御札の紙は何処製だ」
「自家製でしょう。魔具として認可を受けたところではないのは間違いないです」
違法ドラッグのようなもののほかにも、どこかで殺傷能力がある魔術を行うことを避けるため、法律によって御札を作ることができるところは制限されていた。そのどこで作られた御札用の紙としても、それぞれのホールマークを付けることが義務となっている。それがないということで、自家製だと判断したようだ。
「これを鑑定するところで面白いことが分かりました。この魔術ドラッグは注入あるいは投与されてから15分ほどで生物的半減期を迎えます。しかし、効果はほぼ1日ほど続くということが判明しました」
「15分かそこらの鑑定で分かるんですか」
驚いているのは放出だ。自慢そうに研究員がうなづいてみせる。
「ええ、今回新しい設備を試しで使ってみたので。実時間加速装置というものなのですがね……」
話が長くなりそうな気配を察した根来はほかの報告を慌てて求める。そこで研究員が先ほどの話の続きとして話し始めた。
「少なくとも、1日は酩酊感を味わい続けることができます。それ以上は人による、としかいえないでしょう。9割は肝臓で代謝されるようですが、神経に直接関与するという目的性質上、血液脳関門を突破し、その先、つまりは脳実質で残り1割が代謝されるようになっています。この残り1割は代謝後産物が脳実質にとどまります」
「入りはするが出てはいかないということなのか」
平塚が研究員に尋ねるとそうです、と端的に答えた。
「詳しい説明については医者か生物学者に尋ねていただければ。もっともっと優しく教えてくださるでしょうから」
「そこは後回しにさせてもらうよ。話を元に戻すが、これを作れそうな人に心当たりはないか。方東組の関与なんだが」
「ここまで大規模に作れるとしたら、やはり禁忌官の合格者の中から考えるべきでしょうね。知り合いか、あるいは組員と何らかのつながりがある者と考えます」
「だろうな。その線で当たってみるか……」
緒方はありがとう等礼を言ってから、3人を引き連れて警吏所へと戻ることにした。今後の作戦を考えるためである。




