第29話
少し歩くと、再びバリケードがあった。こんどは人だけではなく、機関銃のような据え付き火器も用意され、さらに言えば、対魔術用の魔法陣が地面に掘られていた。舗装されていないために、少し風が吹くと砂っぽくも感じる。
「組長に会おうってやつらだな」
「組長かは知らん、ただ魔術ドラッグについて知りたいだけだ」
バリケードから複数の男が武器をもって顔を覗かせているが、彼らとは違う人物が、バリケードの向こう側から緒方らに声をかけた。少なくとも今すぐ交戦するという意思はないらしい。
「魔術ドラッグについて、どんなことだ」
「その効果だよ。末期がんに有効だって聞いたんでな」
「……そんなうわさは聞いている。だが、噂は噂だ。本当かどうかは知らんぞ」
「本当じゃなくてもいい。藁にもすがる思いの人はたくさんいるからな。だが、一縷の望みを捨てるのと、それに縋って死ぬのとでは大きな差がある。それでその救いを求めてやってきた」
「……わかった。だがそこで待っていろ」
どうやら話し相手はこのバリケードの主だったようだ。魔術ドラッグの関連でどこかに連絡を取っているようだというところまでは緒方は分かったが、それが誰かはバリケードに張り巡らされている魔術結界のために把握できないようにされていた。




