第28話
「止まれっ」
方東組の建物に向かう道中、十字路を曲がろうとして緒方らは立ち止まらされる。目の前に現れたのは、道横幅一杯に広がるフェンスと、まるで料金所のようにその中央にあるプレハブ小屋。それと8人前後の武装をしている男らだ。1人は確実に魔法が仕えるようで杖を構えている。しかし、他は銃だ。これ見よがしに見せているのはきっと相手を威嚇するためだろう。形状から3人はサブマシンガン、残りも自動小銃の類だと、緒方らは一瞬で見抜いた。
「貴様ら何用だ」
声を上げた男はすでに銃をこちらに構えている。ほかの男らも気付くと同時に緒方らへと銘々の武器を向けた。とてもよく訓練されていると、平塚は感嘆した。だが驚くべきポイントはそこではない。
「魔術ドラッグの元締めの元締めに合いにな」
両手を挙げて、武器を何も持っていないことを緒方は強調する。ほかの3人もそれに倣うようにして両掌を彼らに見せた。
「……知らんな、帰れ。ここをどこかは知っているんだろ?」
「ま、言われると思っていたさ。知らん、と言えばウソだな。ああ。よく知ってる。方東組、河菱組の3次団体。構成員は410名、準構成員が3120名。この負犬地区の支配者。そして魔術ドラッグの総元締め」
「知ってるならここからはいればどうなるかも知ってるだろ。関係者以外立ち入り禁止てところだからな」
「そうだな。だが、入らせてもらわんとここから話が進まないんだ。力づくでも入らせてもらうぞ」
動いたのは敵方だ。銃が撃ち込まれる。タタタと軽い音は、命を奪うにしてもどうやら軽かったらしい。緒方が銃弾が自らの場所に来るよりも半秒ほど前、身体を左へとずらして銃弾を避けると同時に、両手を体の前へ持ってくると手のひら同士を合わせた。
「“目の前の男に火焔を”」
両手の人差し指と親指同士を合わせ円を作ると、そこへ向かって緒方は息を吹く。途端、炎が勢いよく噴き出していき、それが最初に撃ってきた男へと襲い掛かった。
「やるか……」
やれやれ、とした雰囲気なのが平塚だ。銃が向かってこないのを確認してから、人形精霊として体を一瞬で変えだした。
「精霊だっ」
門番の誰かが叫ぶが、すでに平塚は人の形からまるで大砲のような形になっていた。その大砲から撃ちだされるものは当然に砲弾だった。砲弾の威力は甚大で、狙いすませて打ち込んだプレハブに穴をあけ、瞬間爆発させる。
「もういいだろう」
緒方の声で、平塚は元の姿へと戻っていく。
「ば、化け物め……」
誰かが、そんな風につぶやいているように聞こえた。
「ともかく、通らさせてもらうぞ」
緒方はそう言って、スクラップになっている料金所のようなものの横を通って、組の本部の建物へと向かって歩き出した。




