第27話
情報をもらい、方東組本部の建物を目指して歩いていると、少しずつ周りへの興味が出てきた。真っ先に出てきた感想は荒んでいるということだ。スラム街といえば聞こえはいいが、ここに来ることでようやく平穏を手に入れたような、そういう顔をしている人が多い。理由は様々だろうが、少なくとも、ここに来れば安全だということなのだろう。
「子供がいませんね」
ふと気になったことを、放出がつぶやく。確かにそういう視線でみてみると、周りにいるのは、上は結構な歳までいるが、下はせいぜい15くらいが限度だろう。売春をしているのかどうかは、怖くて聞くことができないが、どちらにせよ、みため年齢に惑わされてはいけないと、緒方は思う。
「どこかに集めているのかしら。学校があるという話がなかったけど、この地区の中は本当によくわからないからね」
根来が歩きながら言った。
「ここの組織のことだ。生まれた子を売り飛ばしていても不思議じゃない。そういうところだからな」
「人身売買も十分にあるが、推定無罪だ。憶測じゃなく、証拠に基づいて話をしないといけないし、そもそも今回はそれで来ているのではないからな」
忘れるなよ、魔術ドラッグのこと、と緒方は3人に釘を刺した。




