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ソウルリンカー  作者: クロネコにマタタビ
1章 
12/14

第11話 僕と母

庭の広場でルシェや他の動物達と時間を過ごしていると、エリナさんとナエリさんが現れた。

「坊ちゃま、ウィンディア様が目を覚まされました。」

「そっか、解った。今から行くよ」

ついに来た

母さまが目覚めて嬉しいはずなのに、そう身構えてしまう自分が悲しい

しかし母さまは目の前の2人や父さまと違って、恐らく今の僕の状態を知っているであろう人なのだから。

果たして僕の事を“クリュウ”とみなしてくれるのだろうか…?

僕は母さまを「母さま」と呼んでも良いのだろうか…?

今の僕は一体「何」なんだろうか…?

色んな事が頭をグルグルよぎっていく

しかし、体は目の前の2人について母さまの元へと歩いて行く。

あと数分でこの事に答えを出さなければいけないのだろう。

(それでも、母さまに会いたい)

僕の中の“クリュウ・オルナート”がそう強く願っている


そうして再び母さまの部屋の扉の前に着くと、エリナさんが少しためらいがちに話しかけてくれた

「坊ちゃま。坊ちゃまがお目覚めになられてから少しお変わりになられた事、皆気づいています。」

「えっ?」

「それでもやはりこうして話をして、ご様子を見て、坊ちゃまはやはり坊ちゃまだと皆確信しております。ですからウィンディア様とも存分にお話をして下さいませ。そうすれば必ず解って下さります。」

みんな気づいてたんだ…。

どうやら僕はみんなをバカにしていたみたいだ

「そっか…。エリナさん、ナエリさん、ありがとう、それにごめんなさい」

やっぱり僕は幸せ者だ

こんなに自分を見てくれて、そして気づいてくれるんだから…

だから僕は顔を上げて、母さまの部屋に入るのだった。


「母さま、失礼します」

「クリュウ…。よく来ましたね」

母さまはベッドに体だけ起こした状態で僕を待っていた。

「………」

「………」

話の取っ掛かりが無くお互いに言葉を発する事ができない。

僕は一度目を瞑り、意識を“クリュウ・オルナート”に向けた

「母さま、お体がご無事で本当に良かったです。」

目を開き“心”の思うままに言葉を発する

“僕=クリュウ・オルナート”が一番言いたいことを言う。

「母さまが助けてくれなかったら僕は今ここに居なかったのですよね。だから、本当にありがとうございます」

母さまはじっと僕の話を聞いてくれる。

「それと…母さまをこんな目に遭わせてごめんなさい」

僕は深々と謝った


「クリュウ。あなたはやはりクリュウなのですね。よく元気な顔を見せて下さいました。母はそれが一番嬉しいのですよ?」

母さまは少し目を赤くしてそう答えてくれた。

「はい。僕は“僕”です。ですがそれだけじゃありません」

口の中が乾く

これから言うことはお互いを傷つける言葉だ

でも…言わなくちゃ

「僕の中には別の“僕”が居ます。もう混ざってしまって区別がほとんどつかないけど…」

目を瞑り…僕は心に散らばってしまった“風間颯太”に意識を向ける

「こうして意識をすれば少しの間、僕は別の“僕”になれます」

母さま、いやウィンディアさんは少し目を見開き、少し悲しげな、それでも優しげな顔を見せてくれた

「やはりあの儀式は失敗していたのですね。でも、それで良かったのかもしれませんね。」

失敗…

やっぱりそうなのか…

「この様な事を実の息子に向けて言うのは母として失格かもしれません。」

ウィンディアさんはとても辛そうな顔を僕に向ける

僕は彼女にそんな顔をさせたくないのに…黙って聞くしかできない。

「そもそも私は“クリュウ”を助けようと儀式を行ったのです。この意味が解りますね?」

「はい。“僕”は本来消されていたのですね…。でもあの時僕が暴走しちゃったから…。すみません、僕のせいで儀式は失敗した上に貴方まで傷つけてしまった」

“僕”の心が張り裂けそうになる。

“クリュウ”も心のどこかで泣いている…。

「その様な顔をしないで…。わたくしはそれで良かったと思っているのですよ?それに儀式の本質は成功しています。」

「成功?」

僕は顔を上げて話を聞く

「えぇ。先程も言いましたがあの儀式をすることになったのは“クリュウ”を助けるため。皆には病気だと言いましたが、本当は呪いによって生命力を奪われていたのです。詳しくは別の機会に語りますが、呪いのせいでクリュウの余命は幾許もありませんでした。」

「呪い…」

魔法によって相手を病気にさせたり死に至らしめる方法…。

発動には条件が必要みたいだけど、僕には思い当たらない。

「ですが、貴方がクリュウと一つになってくれたお陰で…いえ、一つにする事でクリュウは助かったのです。勝手に呼び出した私から何かを言うことは許されないのでしょうが、それでもこれだけは言わせて下さい。この世界に来てくれて本当にありがとうございます。あなたのお陰でクリュウは助かりました。」

ウィンディアさんは立ち上がり深々とお礼を言ってくれた。

“僕”がここにいることを許してくれた…。

それが“僕=風間颯太”の一番聞きたかったこと。

そして、

「こちらこそ、“僕”を呼んでくれてありがとうございます。」

それだけは伝えたかった。


あとは今の僕=クリュウ・オルナートが聞きたいことを聞くだけだ。

“僕”は目を瞑り僕になる。

「今日、一番お聞きしたい事があります」

僕は僕になって一番心配していることを母さまに尋ねる。

「僕は…、僕はあなたの息子で良いのですか?」

言ってしまった…

心臓が痛い…

恐らくは数秒、僕の中ではとても長い時間が過ぎ、顔を向けると母さまはとても悲痛な顔をされていた

「な、なにを言うのです。貴方は私の息子ですよ!どの様な事になろうともそれだけは変わりありません!」

「で、では僕はあなたのことをこれからも『母さま』と呼んでもよろしいのですか?」

僕は目頭が熱くなるのを感じた…

「当たり前です!」

母さまも目に涙を貯めて両手を広げ僕を受け入れてくれた。

僕は母さまの元へ行き、自分の涙が見られないようにしっかり抱きしめる。

「よ、よがっだ…えぐっ ぼ、ぼく 母さま達にき 嫌われたらどうしようって…」

「そんな事ありえませんよ。あなたは世界で一番大好きな息子なのですから…」

良かった…

本当に良かった…

僕は僕でいいんだ


「実を言えば、わたくしも貴方と同じ事を考えていました。私は貴方の母親で良いのかと…。ですが、やはり私はあなたの母で居たいのです。クリュウ、私に母で居させて下さいな?」

お互い気持ちが落ち着いて、けれどしっかり抱きしめながら母さまはそんな事を言った。

「当たり前です。“僕達”は母さまが大好きなのです!」

そう、僕達が一人になっても母さまの事、それだけじゃなく屋敷のみんなの事は大好きなのだ。

今日目が覚めてから皆と話してそれが再確認出来た

「あら、そうなのですか?良かった…。ではそろそろ晩御飯の時間ですね。今日は部屋に持ってきて貰うのでここで一緒に食べましょう。そしてたくさんお話ししましょう。」

「はいっ!」

「それから久しぶりに今日は母さまと一緒に寝ましょうか。」

「はいっ!」

「では、お風呂も一緒に入りましょう!」

「は…、いえ、お風呂は一人で入れますっ!」

“颯太”の心が流石に恥ずかしいと思ってる…

「そうなのですか…。母さま悲しい…」

「僕は一刻も早く立派な大人になって屋敷の皆のお役に立つようになるのです!」

それが屋敷の皆の愛情に対する恩返しだと思うから

そう新たに決意をすることが出来た一日だった。



文章に違和感が…

感情表現って難しい。

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