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EP 10

帝国の黄昏。魔導艦隊を撃墜する、黒き焔の矢(地対空ミサイル)

ポポロ村の上空が、ルナミス帝国の『黄金色』に染まった。

マルクス皇帝直属、第1魔導艦隊。

金貨を惜しげもなくつぎ込んだ魔石によって浮かぶ、五十隻もの空中戦艦。その威容は、まさに空を飛ぶ『富の暴力』だ。

「――全艦、照準固定。ポポロ村の『黒泥』の噴出孔、および村長宅を目標とする。……抵抗するならば、緩衝地帯ごと蒸発させろ」

旗艦『パクス・ルナミス』の艦橋で、近衛騎士団長リカオンが、冷徹に指令を下す。

彼の『戦争論』に基づけば、これは戦争ではない。……圧倒的な物量による、迅速な『害虫駆除』だ。

        ◆

「金吾くん! 帝国の艦隊が……! 自警団のクロスボウじゃ、届かないよ!」

キャルルさんが、震える手で『沈黙の春』を抱きしめながら叫ぶ。

村人たちはランプを消し、地下の防空壕へと逃げ惑っていた。

「……慌てないで、村長。……ルルカ、準備は?」

俺は、村の外縁部に建設した、奇妙な『傾斜した鉄パイプの群れ』の前に立っていた。

「いつでもいけるよ、金吾! あたしの『可愛いベイビーたち』が、お空のトカゲを焼き鳥にしてやるって張り切ってるもん!」

ルルカが、油まみれの顔でニヤリと笑う。

彼女の背後にある鉄パイプ。……それは、ドワーフの鋳造技術と、俺の石油化学が融合して生まれた、世界初の『地対空ミサイル発射台(多連装ロケット)』だ。

「――主人マイ・ロード。帝国の艦隊、魔砲の充填を確認。……発射まで、あと30秒」

ヴァルグが、音もなく俺の横に現れ、時計を見ながら告げる。

その瞳には、かつてない『刺激』への飢えが宿っていた。

「アーサー王。……あなたの『黄金の獅子』は、待機していてください。……これは、俺たちの『ビジネス』ですから」

俺は、同盟軍として出撃しようとするアーサー王を制した。

ここで彼らを動かせば、全面戦争になる。……それは、コストに合わない。

俺は、ルルカに作らせた『点火スイッチ』を手に取った。

人参味の飴玉を、噛み砕く。

……よし、営業開始だ。

「ターゲット、敵旗艦『パクス・ルナミス』。……および、随伴艦全五十隻」

俺は、スキル【分子構造編集】を、発射台に装填されたロケット弾頭へと注ぎ込む。

固体燃料の分子結合を、極限まで不安定に。……わずかな火花で、爆発的な推力を生むように。

さらに、弾頭の熱感知センサー(ドワーフ製精密バネとポリマーの複合機構)を、敵艦の魔石炉が発する『熱』へとロックする。

「――チェックメイトだ、皇帝陛下。……俺の石油システムからは、神だって逃げられない」

スイッチを押す。

ボゴォォォォォォォォォォンッ!!

爆発。

だが、それはエンジンの咆哮ではない。……大気を切り裂き、物理法則を置き去りにする、ロケット燃料の『爆鳴』。

シュボボボボボボボボボッ!!

五十本の『黒き焔の矢』が、発射台から解き放たれた。

マッハ2。時速2400キロ。

レオンハート王国のワイバーンすら凌駕する、圧倒的な超音速の突撃。

「――な、なんだ!? 魔力反応のない飛翔体だと!?」

帝国艦隊側が気づいた時には、すでに遅かった。

魔導師たちが慌てて魔砲を放つが、超音速で飛来する無魔導の物体に対し、照準が追いつかない。

さらに、最強を誇る『魔導障壁』。

ガァァァァァァァァァァンッ!!

障壁は、熱と物理質量のみで構成されたミサイルを『攻撃』と認識しなかった。

『黒き焔の矢』は、黄金の障壁を霧のように透過し、五十隻の魔導戦艦の『魔石炉』へと、正確無比に突き刺さった。

ドォォォォォォォォォォンッ!!

ドォォォォォォォォォォンッ!!

空で、五十の『太陽』が爆発した。

魔石炉が誘爆し、黄金の艦隊が一瞬にして、黒焦げの鉄屑へと変貌する。

魔法最強、魔石万能と信じていた帝国の兵士たちが、叫ぶ暇もなく空から墜落していく。

「馬鹿な……。魔法が、効かない……? 魔導障壁を、ただの鉄塊が貫通したというのか……?」

旗艦の艦橋で、リカオン団長が、人生で初めて、計算が立たない恐怖に立ち尽くしていた。

彼の『戦争論』には、魔力を持たない兵器に殲滅される、という項目は存在しなかった。

        ◆

ポポロ村の広場。

墜落していく帝国艦隊の残骸を、月の光が虚しく照らしていた。

「「「…………!!」」」

アーサー王も、キャルルさんも、そして村人たちも。

誰も、声が出せなかった。

彼らが目撃したのは、ただの戦闘ではない。……数千年の魔法の歴史が、たった一人の男が持ち込んだ『黒い泥』によって、ゴミのように切り捨てられた瞬間だ。

「……あらあら。私の抱き枕の材料、結構燃えちゃったじゃない」

ジャージ姿の女神ルチアナが、ビールを飲みながら、他人事のように呟いた。

「でも、面白いからいいわ。金吾くん、今の『爆発』、ソシャゲのガチャ演出に採用できないかしら?」

「金吾! 今のロケット、私の月人君のライブの演出に使いなさい! ……絶対に1位取れるわ!」

魔王ラスティアが、目を輝かせて俺の手を握る。

神も魔王も、石油王の圧倒的な武力(という名の接待ツール)に、完全に虜になっていた。

俺は、墜落した帝国の旗艦『パクス・ルナミス』の残骸を見つめながら、人参味の飴玉をもう一個、口に放り込んだ。

甘い。……だが、少し、焦げ臭いな。

「ヴァルグ。……動けるふねを一隻、接収しろ。……皇帝陛下へ、ポポロ石油公社(PPC)からの『最初の請求書』を届けに行く」

俺は、泣き崩れる帝国の兵士たちを見下ろして、不敵に笑った。

「――魔法の時代は、終わった。……これからは、俺の『油(価格)』が、世界のルールだ」

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