9.メンヘラと愉悦部員の本気
次の日、学校に来ると机の上の悪戯書きが無かった。改心したかと思ってゆりの席の方を見ると居なかった。今朝は遅いのかと思ってたらとうとう来なかった。ついでに言うと長田も来なかった。
また次の日、今日も机が綺麗だったのでまた休みかと思ったが今日は来ていた。ついでに言うと長田も来ていた。
普通に授業があって普通に掃除があって普通に部活があった。特に変なことはなかったんだけど一つ大きな噂がたってたな。
っていうのも隣のクラスのカップルが教室で着衣ナントカをしたとかどうとか。男子がその手のネタを手放さないのは当然で、今日1日はずっとそのネタで持ちきりだった。
帰りの電車でも長田とその話をしたんだけど、アイツも性格的にそういった人が欲に溺れて非常識なことをするっていうシチュエーションが好みなので、ものすごい楽しげに話してたな。
女子もなんだかんだ言ってそういったのに興味があるわけで、彼女たちは特にその女子が落ち着いた感じなのにねー、というギャップに関してアレコレと言っていた。
さらに次の日。
この日に大事件が勃発した。
朝学校に着くと、ゆりが何やらニヤニヤ笑いながらこちらを見てくるのだ。普通にキモい。いやそうじゃなくて、なんだかとても嫌な予感がする。
「おはよーシゲチー!」
「ん? おお、おはよう長田」
すると長田が耳元に口を持ってきた。
「おいおいお前、胡簶さんと何やってんだよ」
うん? なんの話だ? 胡簶さんは今日はまだ来てないし、だからと言っていつも何かやってるかと聞かれても掃除しかしてない。
「は?」
「噂聞いたぞ、放課後掃除の後にヤったって」
は? は?は?は?は?は?
「ツイッターで流れてきてさ、隣の奴らもちょうどヤっちゃったらしいからあーお前らも触発されちまったかーって思ったよ」
頭がクラクラする。何言ってんだよ、俺らがそんなことするわけないだろ。
「俺も見たぞシゲちゃん! 普通に羨ましいわー」
「ウチにも回ってきた! まさか胡簶ちゃんがそんなことするとはねえー!」
「いや、絶対シゲちゃんが押し倒しちゃったんだよ!」
「でも隣のクラスでもヤったらしいじゃん? 胡簶ちゃんも意外とだったりするかもよ?」
「……は? 何言ってーー」
え、なんだよコイツら。あり得ない噂話にこんなに盛り上がって、しかも当事者である俺の話を聞こうともせず勝手に盛り上がってる。
は? マジでどうなってんだよ。
「あ! 噂をしたら胡簶ちゃん! もーだめじゃないこの間まで彼女がいた男の子とヤっちゃ!」
やめろよ。
「ふぇ? やる? 何を? 誰と?」
ダメだって。
「とぼけちゃって! だから、この間までゆりと付き合ってた宮本くんと、ごにょごにょ」
「そぇっ⁉︎ なっ、なな何の話をしてるの⁉︎ 私、そんな……」
だからやめろって!
「照れない照れなーい。ゆりももう怒ってないらしいし、好きにやっちゃっていいんじゃなーい? アハハハハっ!」
耐えられない。なんだよこれ。
「俺らはやってない! やめろよ! 胡簶も困ってんじゃねぇか! そんなことして楽しいのーーーー」
「まあまあ落ち着けよシゲチー。ただの噂ならそう焦んなくたっていいだろ?」
っ! コイツ! 絶対許さねえ。そうか、そうだよな。お前にとって他人は自分が愉悦を感じるための踏み台なんだったよな。
俺とは部活が同じってなだけで別に心を許されてるわけじゃないし、特に恋敵となるとそりゃあそんぐらいのことしてくるわな。
「ああ、わかったよ長田。お前も古川も一生許さねぇ」
小声でそう伝えると、同じく小声で返ってきた。
「フン、何のことだか」
俺はメンヘラと愉悦部員の本気を侮っていたらしい。
需要があると判断したら続き書きます。もっとざまぁしろでも、もっとイチャつけでもご要望があればお教えください