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【BL】勇者推しの俺が何故か敵対する魔王に転生してました。【全年齢版】  作者: のがみさんちのはろさん
一章

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第39話 「お別れの日」



 俺は身なりを整えながら、エルに告げる。

 約束だから。

 これで、お別れだ。


「……お前から言ってきたことだ。次で最後だって」

「ああ、そうだね……」

「それじゃあ……しっかりやれよ、勇者様」


 後ろ髪引かれる思いで、俺はエルに背を向けた。

 意外と俺の心は冷静だ。もう迷いはない。


「イオリ」

「……何だ」

「また、会える日は来るのかな」

「どうだろうな……」


 会えると言えば、会えるかもな。

 お前が望んだ形じゃないけど。でも、それでも俺は決めたんだ。


 お前を勇者という役割から解放してやろうって。

 そのために、俺はお前を殺す。

 魔王としての役割も果たす。

 俺の願いと、クラッドの願い。どちらも叶えられる。

 完全に俺の勝手な願いだ。ただのエゴだ。エルはそんなこと願ってもないだろうけど、それでも俺はお前を苦しめる「勇者」を殺したい。そして神剣を封じてしまえば、もう勇者は生まれない。

 俺を恨んでくれ。俺のことを憎んでくれ。

 俺は魔王。俺は、お前の敵なんだから。


「じゃあ、さようなら」

「……さようなら、イオリ」

「ああ、そうだ。お前はいつでも人の味方であれよ」

「え?」

「勇者は人間の希望なんだろう」

「……それは、どういう」

「それだけだ。じゃあな」


 俺はこの洞窟に仕掛けていた魔法陣を消して、この場を去った。

 これでもう約束の場所も消えた。約束もなくなった。


 これで、もう本当に、一之瀬伊織は消えた。



ーーーー

ーー


 俺は魔王城には戻らず、空を飛んでいた。

 ゆっくり、目を閉じて、揺蕩う。

 冷たい風が心地いい。

 覚悟を決めたら、もう迷うことがない。

 俺のすることが正しいかどうかなんて、今となってはどうでもいい。人の願いなんてみんなバラバラ。万人の願いを叶えるなんて無理なんだ。自分の望みを叶えるだけで精一杯なんだから。

 だったら俺も、俺の願いのために生きてもいいだろ。


 人から恨まれるのは慣れてる。

 嫌われてばかりの人生だったんだから。

 だから、俺はエルに嫌われる道を選んだ。

 それが俺にとって最善策だと思ったから。


「……さぁ、行こうか」


 本当のお別れは、これからだ。




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