潜入
更新遅くなってしまいすみません!
生きてます!
「ねね、あたしね、船乗るの初めてなんだぁ!」
「わ…私…船がこんなにゆらゆら揺れるなんて知りませんでした…!なんだか変な…わわっ!あ、ありがとうございます、ヴェルナー様」
転びそうになるイサベルをヴェルナーが受け止め、姿勢を元に戻してやる。
「気にすんなって、淑女が転びそうになったら先に床に寝転んででも受け止めろってのがウチの家訓だからな。…それにしてもまったく、座席の数が全然足りてねぇ。超過も酷いもんだ」
呆れ声でそうぼやくが、他の乗客の喋り声にかき消されて乗員には届いていないようである。
「ヴェルナー、今の所は普通だね…組合の腕章をしてる乗員も怪しい動きはしてないし」
「目的地はまだ先だからな。今から張ってても仕方ねえさ。力抜いて窓の外の海でも見てな」
「うん…それより僕は、ラニたちの方が気がかりだよ…グレゴさんがいるから一緒にいるうちは大丈夫だとは思うんだけど、彼女短気だから…」
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…私は今、バルディリス商会の建物の中にいる。ヴェルナーが用意できたのは私一人分の偽装身分証だけで、他の二人は別の経路から侵入する手筈になっている。いるのだが…
「だから、私がお前ら二人を怪しい奴らだって言って別室に連れて行くフリするでいいじゃねえか!」
「バカ言うなよ!この地図を見ろよ!本でしか見たことないような、通気口を通って秘密を暴くなんて経験、そうそうできるもんじゃねえぞ!この通気口は男の夢と憧れが詰まってんだ!だから頼む!絶対上手くやるからここから侵入させてくれ!」
通気口に詰まるのはお前らだろ。しかしながら、ハンクもうんうんと深く頷いている。男の夢と憧れというのはここまで成人男性を愚かにしてしまうのか…。
はぁ、本当にあいつら大丈夫なのかな。それにこの制服、早く着替えたい。胸元が妙に開いてるし、スカートの丈も短めだ。どんな商会だよ、まったく。とにかく、まずはあくどい経営をしてる証拠を抑えないといけない。しかし保管されていそうな重要機密がありそうな商会長室へ行くか?それとも書類が多そうな事務所だろうか…総当たりしなくちゃいけないなら結構骨が折れそうだ。早くグレゴたちと合流したい。
「嬢ちゃん、見たことねえ顔だが新人かい?」
「あぁ…はい、そうですぅ。ラ…リシェル・クレーと言いますぅ」
やたら目つきがやらしい老人だ。だけども問題を起こしたらいけないし、愛想よく…愛想よく…
「尻の具合はどうかな〜」
げへげへと笑いながらこのクソジジイは私のケツを揉んできやがった。殺すぞ。
「……あのぉ、やめていただけると嬉しいのですがぁ」
我慢我慢…なんとか手が出る寸前で止まった。怒りの感情は長続きしない。そうだ落ち着け落ち着け…
「ほほ〜胸の具合も見といてやろうにぃ」
我慢できない殺す。振りかぶろうとしたその時
「ダメですよ、エジルさん。うちの従業員にそういうことしないでくださいって言ったでしょ?色街じゃないんだから」
ガタイのいい従業員、確か受付の警備員に助けてもらえた。バツの悪そうな顔をしてジジイは何かぶつぶつと言っていたが大人しく去って行った。ありがとうガタイのいい人。アンタのおかげで私は老人殺しにならずに済んだ。
「怖かったですっ、ありがとうございました」
「気にしないでいい。新人だったよな?あの爺さんいつもこれぐらいの時間に来て女性従業員にああいうことするんだ。もし明日以降もあんなことされたらすぐに呼ぶんだぞ」
「はぁーい!」
うし、気を取り直して社長室か事務所へ行くか。そう足を進めようとした時、ガタイのいい警備員に呼び止められた。
「どこへ行くんだ?新人の持ち場はこの受付だ。先輩方に教えてもらって乗船券を売ったり問い合わせを受けるんだぞ。仕事内容の書類をちゃんと読んでいなかったのか?」
な…なんだって!?んなバカな…計画が瓦解する音がする。いや確かに普通に考えたらそうなんだけども…!
「いやぁ、そのぉ」
「知らないなら教えてやるが、新人は大抵受付からだぞ。何か特別な理由が?商会長からは何も聞いていないが」
ここで商会長に確認を取られたら面倒なことになりそうだ。この場で嘘をついて入るのは簡単だろうが、それがバレると最悪消されるだろう。ここは従うしかない。
「ごめんなさい!書類、お母さんが間違って捨てちゃってわからなかったんですぅ」
言い訳としてかなり苦しいが、どうだ?
「そうか、では早く持ち場につけ」
クソっ、さっきは感謝したが前言撤回だ。どっか行ってくれ!




