空に咲く花
こんにちは。お久しぶりですninonoです。今回はればにらの執筆後に私が少し手を加えています。ラニ達もギリギリの戦いでしたが、私たちもギリギリの戦いでした…。なんとか間に合ってよかったです。
「くーっ!っはぁ…」
起きて伸びをする。外の明るさを見るに、朝日が昇って2,3時間ぐらいだろうか。ここはドレタニアの中央広場付近にある大きめの宿屋。メリッサによると、ここらだと一番人気な宿屋らしい。その理由は、里中に点在する多様な源泉から温泉を引いてきているから。壁の張り紙にも、”肩こり腰痛!”とか”視力回復!”などといったうたい文句が散見され、なんでも予約がなかなか取れない超人気宿だと言う。そこになぜ私たちがいるのか。それは一昨日の夜中に遡る。
無事にドレタニアに戻れた私たちは深夜にも関わらず、大勢の住人たちに迎えられた。救援隊として来てくれた生き埋めになっていた人たちが私たちのことを色々話してくれて待ってくれていたそうだ。私たちが宿がないことを知り、無事に作業員たちを救出したことと、グレーターゴラモスを倒したという恩義からこの宿を提供してくれたという訳だ。
「おはようございます、ラニ様!今日はついにお祭りですね!」
「あたしすっごく楽しみだなぁ!美味しいものいっぱい食べたい!」
「慌てんなよ、急いでもお祭りは逃げないって」
お祭りというのは祝勝会みたいなもんだ。逃げるしかなかった自然の脅威を打ち倒したということでこれから3週間ぐらいは盛大にやるらしい。
宿の一階に降りると、グレゴとマルクが待ってくれていた。武器はもちろん持っていない。
「体の調子はどうだ?キツかったら俺たちがお土産に肉でもなんでも買ってきてやるから寝ててもいいんだぞ」
「体調を気使う相手に肉はねぇだろ…。まあでも、結構調子はいいから大丈夫。行こうか」
「ねぇねぇマルク、このお肉もすごく美味しいよ!」
「本当ですね!柔らかくてしかも香辛料が効いてていくつでも食べられそうです!」
クロエは両手に肉串を持ってお祭りを満喫している。あれでもう5本目だ
「昨日も宿で出たけど、これ一体何の肉なんだろうな。牛でも鳥でも豚でもラビットともなんか違うし…」
「それゴラモスのモモやで!」
後ろから突然声をかけられて飛び上がりそうになった。
「急に後ろから話しかけないでくれよ…心臓に悪い…」
そういいながら、クロエの手に握られた肉串をもう一度確認した。
話しかけてきたのはメリッサと少年がだ。彼が息子の1人だろうか。彼はメリッサに挨拶を促されてたどたどしく自己紹介をした。
「こ、こんにちは!僕、テルって言うねん!兄ちゃん姉ちゃん、僕のお父さんと弟助けてくれてありがとう!」
そういえばメリッサは子供が保育器ってやつに入ってるって言ってたっけ。
「おうよ!みんな無事で良かったぜ!それにしっかり目を見て話せて偉いな、テル」
グレゴがわしわしと頭を撫でる。
「そういえば、ウッディ様はどちらに?」
「旦那?旦那は今下の子のとこおるわ。正午過ぎからウチが下の子のとこ行って、旦那がこの子の面倒見てくれんねん」
そう言うと、彼女はきょろきょろと周りを見出した。
「ハンクはおらんの?ハンクにもお礼言わな思ってたんやけど…」
「ハンクさんの工房に早朝お邪魔しましたけど、まだ鍛造しているようでした。あの様子だとまだ結構かかりそうですね…」
まだ自分の工房にこもっているのか。当然か、あれほど自信に満ちた目をしていたんだ。すぐには終わらないだろう。
「そっかぁ、までもハンクが鍛造に関して凝り性なんは昔からそやったしなぁ。火がついたならあと1週間ぐらい篭りっぱなしちゃうかな」
「1週間もよく続けられるな」
その集中力こそが神童と呼ばれた1番の要因なのかもしれない。
「それじゃ、ウチらはお母さん仲間と息子の友達と合流しに行くからここで失礼するわ。主役は君らやねんから、お祭り楽しんでな!」
少し歩いてから彼女が振り返る。
「そうそう、夜は花火打ち上げるらしいから見てってな!」
大きく手を振って彼女たちは人混みの中に消えていった。
「花火って?」
「色とりどりの火薬を詰めた玉を空に打ち上げるんですよ。お祝い事とか戦勝した時の祝砲みたいなものです」
マルクも楽しみにしているようだ。
「へー…気になるなぁ、すごく楽しみ!」
花火かぁ、絵本でしか見たことないな。私も少し…いや結構楽しみだ。
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あれからかなりの時間遊んで、陽が傾き始めてきたが、まだまだ周り終わる気配はない。
「うーん、これもおいひい!」
クロエはまだ食ってる。今は袋いっぱいに詰められた一口カステラってのを食べて頬をぱんぱんに膨らませている。
「よくそんな食えるな…その体のどこに入っていってるんだ?」
その食べっぷりにグレゴですら困惑している。
「えー?まだまだ全然余裕だよ。ねぇ、ベルちゃん?」
「わ、私ももうお腹いっぱいです…」
「えっ」
かなり驚きだったようで信じられないという表情をしている。
「誰もがお前みたいに朝からずっと食ってられねえよ」
「そ、そうなの?…マルクも?」
「…そうですね」
苦笑いしながらマルクに言われて完全に打ちのめされたようだ。それを見かねたのかマルクはこう提案をした。
「そ、そうだ!ハンクさんのところに行きませんか?!差し入れに何か買っていって」
「そうだな。私の命の恩人でもあるんだしそんぐらいしてやらないと」
ハンクの家に着いた。しかし、いくら呼び鈴を鳴らしても彼は出てこない。
「やっぱりまだ工房で作業してるのか?どうするよ」
「しばらく手が離せないからもし何かあったら勝手に入ってもいいって許可はもらってるよ。入ろう」
そう言ってマルクは扉を開けて入って行ったので、私たちもそれに続いた。
「随分と綺麗になってるな」
「ウッディさんたちが掃除したらしいよ。こんな床が埃まみれじゃお客さんが来ても帰っちゃうって」
へぇ、そんなことがあったのか。そう思いつつ工房の奥へと入っていく。なんだかじりじりと暑くなってきた。一昨日のことが思い出される。進むとだんだんとカンカン、という金属を打ち付ける音が大きくなってきた。
「ハンクさん、お邪魔してます」
「おう、お前らか。進捗はぼちぼちってところやで」
ハンクが鍛えている剣はかなり元の姿に戻りつつあった。彼は剣を置いて、立ち上がる。
「この剣ほんますごいな。打ってる途中に金槌が5本もダメになってしもた。」
「ダメになったって、柄が折れたのか?」
グレゴがそう質問すると、ハンクは首を横に振る。
「ちゃうちゃう、金槌の頭が砕けたんや」
嘘だろ。柔らかい状態で叩いてるはずなのに金槌が負けるのか。
「今まで百以上の鍛造をしてきたがこれほどまでの暴れ馬は初めてやわ。ほんまええもん打たせてもろておおきに!」
暴れ馬で片付けられるものじゃないだろ…
「こちらこそ修繕していただいてありがとうございます、ハンクさん。ああ、そうだ。これ、差し入れです」
「お、ゴラモスのコリコリ串あるやん!これむっちゃ好きやねん、気ぃ効くな!これでもっと作業が進むわ!」
彼は差し入れを食べると一伸びする。
「うし、じゃあさっさと終わらせるからな!もう二、三日待っといてくれ!それに今日はお祭りなんやろ?花火も打ち上げるらしいし、見逃さんように中央広場行っとき!」
「ハンク様、そこまで急がなくてもいいのですよ。くれぐれも体にお気をつけてくださいね?」
イサベルの声かけにハンクはぐっと親指を立てる。
「大丈夫や。オイラはそんなヤワやないから安心し」
その返しはそこまで返事になってないだろ。
彼は腹ごしらえを済ませてすぐに作業に全意識を集中させたのか、黙々と鍛造を始めたので、私たちは工房を後にした。
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町に戻った時、もうだいぶ辺りは薄暗くなってきていた。昨日は昼間と錯覚するほどに電灯が付いていたはずなのにおかしいなと思っていると、中央広場で大規模な焚き火をしていた。大きく積み上げられた組み木の中で炎が爛々と煌めいている。クロエとイサベルがわぁっ、と歓声を上げる。
「すごいな…」
その圧倒的な迫力に私も思わず声を漏らした。
「ほんますごいやろ?」
声のした隣を見ると、ウッディとテルがいた。
「こんなの初めて見たよ。いつもこんな感じなの?」
「俺もここに何十年もおるけど、こんなでっかいのは見たことないな。そんぐらいあの御伽話に出てくる化け物に勝ったっていうのはでかいんちゃうか」
「そういえば疑問なんだけど、その御伽話ってどんなのなんだ?」
ハンクも洞窟内で何度か口にしていた御伽話。妙にそれが気になってしまった。何回も聞いたっていうのもあるが。
「ん?ああ、それはやな…」
「僕が説明する!」
テルが意気揚々と宣言したので話してもらうことにした。
むかしむかし、ずっと昔、ドワーフの里の近くに巨大な帝国が栄えていたころの話。火山にてグレーターゴラモスが暴れ回り、ドワーフたちは閉山をして自然の脅威が過ぎ去るのをただ待っていた。ある時、1人の若者が里を訪れた。聞いてみると、その若者は帝国の皇帝候補者のうちの1人だという。その帝国は皇帝が崩御してからしばらくの間、次代皇帝が決まらずにいた。「私は自分こそが皇帝に相応しい器であると誇示するためにここに来たのだ」と若者は言い放ち、里の者たちの静止する声も聞かず、単身火山へと潜っていった。
当時火山にいたグレーターゴラモスはこれまでたびたび現れていたものより獰猛で、山の怒りどころか、この世の怒りだとも老人たちは怯えた。命を絶つものすらいた。そんな凶悪な獣のために若者が散ってはダメだと数人の里人が後をついて行ったが、目にしたものは信じ難い光景だった。
若者はグレーターゴラモスに対峙すると、魔法を唱えた。一度目の魔法で大地が砕け、二度目の魔法で空気が青く染まり、三度目の魔法でこの世の怒りとまで恐れられたグレーターゴラモスは灰燼と帰した。まだ燃え盛る死体から若者は赤く煌めく玉を取り出した。里のものたちは若者にたいそう感謝し、全財産を持って若者の前にひれ伏す者まで現れたが、若者はその全てを一切を無視し、そのまま帝国へと帰った。その姿に当時の人々は息を呑み、「あの若者は私たちに恩を売るために来たのではなく、ただ自分の志に燃えていたのだ。私たちがいくら感謝しようとあの若者に届くことはなかったのだ」と感じたそうだ。
その後まもなく帝国に新たな皇帝が生まれた。ドワーフの里を訪れた若者が玉座に座ったのはいうまでもない。
そして、ドワーフたちに若者はこのような言葉を発したと言う。
「人は人という種族だけでは量られない。功績と志操によってのみ後世に語られる者となるのだ」と。
この一件を記す上で、若者の名前を私は知らない。しかし、彼の志と焔を思う時、後世に呼ばれるその名を呼ばずにはいられない。
つまり、彼こそが”炎帝”である。
かの炎帝を真の英雄と呼ぶべきか、はたまた厄災と呼ぶべきか。ついには誰も定められないままである。
なんだかすごい話だった。あの化け物を正面から焼き尽くす?そんなことが人間にできるのかよ。
「魔法で灰燼と帰す…ということは、その炎帝という人物は炎系統の魔法で溶岩の魔物を粉砕したというように聞こえるのですが…?」
マルクのその言葉に、自分の顔が少し引き攣るのがわかった。
「ああ、その通りやで。もう大昔の話やからそのへんの細かい部分は信ぴょう性に欠けるけどな。」
「ねえちょっと、さすがに盛ってないそれ?! いくら何でも相性ってものがあるでしょう!」
やかましいエルフだ。
だがクロエの言うことには一理ある。実際、魔法には相性ってものがある。例えば火炎系統魔法に対しては水系統魔法を使うといったセオリーがあるのだ。クロエもあの戦いのとき、パニックではあったが氷の魔法を使っていた。氷属性もれっきとした水系統魔法だ。
炎で炎を粉砕…しかもたったの三撃で。こんな話、いくら御伽話とは言え盛り過ぎだと思うのも不思議ではない。比較的魔法に対して知識のあるクロエなら尚更疑うだろう。
「話の中に空気が青く染まるみたいなことが出てきたが、そういえばあの洞窟、途中からやけに青かったよな。」
グレゴのその言葉に全員が顔を合わせ、そんなまさかな、とでも言いたげな顔をした。
「おっ、そろそろ始まるで」
ちょうどいい感じに時間を潰せたようで、空に一筋の光が登っていくところだった。
「あれが花火?なんだか思ってたのと違…」
そうクロエが言いかけた瞬間、空に大輪の花が咲いた。その花はすぐに消えてしまったが、それはまさに花の火だった。
「この感動を私たちの記憶だけにしか残せないのが残念に思うほど、美しいです…」
イサベルが恍惚とした表情でそう呟く。感動も冷めやらないうちに、また一つ、また一つと花火が空に上がっては美しく咲き誇った。私たちは言葉すらも忘れて空を鮮やかに彩る花を見つめ続けた。
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「すごかったねぇ、花火…まるで夢みたいだったな…」
「そうだな…本当に綺麗だった」
私たちは宿へと戻ったが、花火についてずっと語っていた。それほどまでに衝撃的で、素晴らしい思い出になった。
「あれほど美しいものを見せていただいて…私、明日からどんな試練が来ても耐えられそうです」
「はは、確かに」
普段は試練とかクソ喰らえと感じるが、今は私ですらそう思った。
「あたしはまだ試練は来ないでほしいな!だってまだまだお祭りで美味しいもの食べきれてないし!」
「そうですね、クロエちゃん様!まだまだ美味しい屋台いっぱい回りましょう!」
クロエの食い意地に苦笑いしつつ私たちは眠りについた。
翌々日の早朝、慌ただしく宿の部屋の扉を叩かれた。外は鶏が鳴いている。眠い目を擦りながら開けると、マルクとハンクがいた。
「んだよ…こんな朝っぱらから…私は昨日酒飲んだ後にクロエに食わされすぎて死にそうだってのに…」
「すまんすまん、でもこれはよ見せたくてな!」
そう言ってマルクが前に出てくると、剣を見せてきた。
「それ治ったのか」
「ああ!修繕されたなんてわからないほどだよ!すごく軽いし!手に馴染む!」
修繕された剣は金属の重厚な光とわずかな赤い反射を見せた。柄は革製で握りやすく保護され、剣身の根本には僅かな熱を宿しているようにも見える。
「いい剣になってよかったなマルク。じゃあ…私寝てもいいか?」
彼らはハッとした顔をする。
「ごめんよ、こんな早朝に。つい興奮しすぎて…」
じぁあ、と手を振って扉を閉め、私はまた寝床についた。
起きると正午前だった。
「あ、ラニおはよ」
「おはようございます、ラニ様。グレゴ様とマルク様が剣も治ったので、いつ出発するかと聞かれてましたよ。私としてはラニ様はまだ万全とは言えないと思うのでもう少しだけお世話になろうかとも考えているのですが…」
そうか、確かに剣が治ったならここに長居する必要もない。
「昨日クロエに食わされ過ぎたことによる胃もたれ以外は大丈夫だよ。何もないならすぐ出よう」
「それはごめんって…」
嘘嘘、気にしてないと言って、立ち上がる。
「それじゃ、あいつらとどうするか話に行こうか」
一階に降りると、2人の他にハンクもいた。
「ん?ハンクも一緒なのか」
「ああ、ハンクからも話があるそうだ」
なんだ突然改まって。修繕費が欲しいってか?まあ金槌を何本もダメにしたらしいし値段によっては考えてやらんこともないが
「オイラを君らの仲間に入れて欲しいんや!」
「え?」
それは全く想定外。思わず気の抜けた声が出る。いや、同時に今までの旅の流れがフラッシュバックする。この流れ何度か経験したな。
「頼む!簡単な修繕とか修理なら溶鉱炉とかが無くてもやれる!戦闘もからっきしやが覚えていくし、最悪囮になるから絶対足手纏いにはならんと約束するから!この通り!」
頭を深々と地面に付けて土下座する。
「おいおい待ってくれよ。なんで急に。別に居場所が無くなったわけじゃないだろ?ウッディたちにも店を綺麗にしてもらったのに」
その言葉に頭を地面につけたまま、こう続けた。
「確かに前の一件でオイラは居場所がまた出来た。でも、それじゃあかんねん。それは今だけのことであって、今だに自分の納得いく一振りは出来てないオイラにとっては先延ばしになっただけに過ぎへんのや!」
「だからって私たちの旅に同行するって正気かよ」
「自分だって、ちょっとやそっと旅したところで納得のいく物がすぐ作れるとは考えてない!でも、それでも何か打開する方法が見つかるかもしれへんなら、オイラはそれを掴みに行きたい!頼む!」
これほどまで頼み込まれて、私は断るだけの気持ちにはならない。それにあの洞窟で命を救われた恩義もここでチャラにしておきたい。
「わかった…一緒に来てもいい。だから頭をあげて…」
「ラニ、ちょっと考えてみろよ。こんなに頼み込んでるんだぜ?…ん?」
グレゴが横から入ってくる。でもなんか入り口がおかしい。許可しただろ。
「なんで私が断る前提なんだよ」
「いやだって、これまでの全員最初断ってたし今回もそうかなって」
見渡すと、全員がうんうんと頷いている。なんだこれ私が悪いのか。私が悪いか…
「ほんまか!?ええんやな!?」
「いいって言ってるだろ。あと勘違いしないで欲しいのが、私たちは囮なんか使わないから。死体を放置しないとは言えないけど、囮に使うなんてことは絶対にしない」
彼は立ち上がり、私の肩を掴んで嬉しそうにしていた。喜びが爆発したのかぐわんぐわん揺らされて吐きそうになった。
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あれからさらに数日が経ち、準備を完了させた私たちはいよいよドレタニアを出発することになっていた。
「寂しゅうなるわぁ。また遊びに来てな、イサベルちゃん」
「もちろんです!また花火、見に来ますから!」
イサベルは特にメリッサの手伝いをしに病院まで通っていたようでかなり気に入られていた。
「ほんまに行くんか?」
「おうよ、まあ笑って見送ってくれや」
ハンクはウッディたちに別れを告げているようだった。
「おっさんすぐ帰ってくるやんな?」
「大丈夫やって、ちょっと遅めの自分探しの旅ってとこや。すぐ戻ってすごいの作ってみせたるからな」
テル以外にも子供たちが何人もいたが、彼らはハンクにおもちゃを作ってもらったことがあるために付いた彼のお得意様らしい。
「ハンク、これ持っていけ」
「これ…おっちゃんの大事なやつちゃうんか…ええんか?」
「お前が使ったほうがええ」
さらにハンクはウスターから餞別と言わんばかりに金槌をもらっていた。店で安物を買っていたようだし、それじゃ心配だとも言っていたから良かったな。
挨拶が終わったのか、ハンクが荷車に乗り込む。それを見て、グレゴは馬車を走らせ始めた。
「またな、みんな!絶対無事に帰ってくるから心配すんな!」
彼らが見えなくなるまで、ハンクは大きく手を振り続けた。
「そういえば、なんでハンクは私が洞窟に入る前、メリッサを抑えてる時に広場に出てきたんだ?」
なんとはなしに聞いてみる。
「ん?それはまぁ…初恋の人が家族失うなんて辛すぎるからやろ」
ハンクは少し目をそらした。
「…かっこいいじゃん」
雲ひとつない快晴の中、馬車は走り続ける。
四章、無事終了しましたね…。
そのうち軽い四コマやサントラみたいなものも作ってみたいなと思案していますので、また引き続きよろしくお願いします!




