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九ニャン 着々と進む準備

その後も、かつおからのメールは止まらず、届けられるのはメールだけではなく、彼の体重を平均並にして、『去勢手術』を無事に受けさせる為に、『おやつ』等も定期的に届けられるようになった。

しかも、届けられるおやつの量は、彼の食べる分だけではなく、施設に住む猫達の分も、段ボールで送られて来た。

ここまでくると、職員全員はかつおに感謝するしかない。三毛猫もおこぼれを貰えた事で、彼に感謝している。


「お前の飼い主、すっげーな・・・」


「すごい・・・のかな?

 すごい・・・んだよね?」


かつおのおかげで、体重や体格が徐々に平均並みへ近づき、拾われた当初の彼とは比べものにならないくらい、体が大きく立派になっていく。

もちろん、運動も欠かさない。三毛猫やふれあいルームの猫は既に『術済み』な為、彼は職員と一緒に、個室で一緒に遊んだ。

此処でも、彼は初めて見る『おもちゃ』や『キャットタワー』に夢中になり、持ち前の身軽さを活かして、クーラーの上やカーテンレールの上に登っては、職員達をヒヤヒヤさせていた。

職員がその様子を動画や写真でかつおに送ると、彼は「元気な姿が一番可愛いですね!!」と、職員に送ってくれたお礼を言う。

彼も、職員のタブレット越しにかつおの顔を見た時は、初めて見る『壊れていない電子機器』に戸惑いながらも、かつおが満面の笑みで手を振ると、彼も鳴き声でそれを返す。

彼はずっと、『壊れた電子機器』をおもちゃにしていた為、タッチする度に画面が変わるタブレットを見た時は、全身が固まるくらい驚いていた。

驚きすぎて、自分でもよく分からないくらいおかしな行動をしても、職員や画面越しのかつおは笑ってくれる。

いつも彼がおもちゃにしていた電子機器は、本体を叩いても、コードを引っ張っても、扉を開けても、うんともすんとも言わなかった。

なのに、どうしてあんな『黒いタブレット』から色んな音がするのか、どうして人間の声がするのか、彼は不思議で仕方なかったのだ。

タブレットで遊べるアプリの中にも、猫が遊べるアプリがあったり、猫の体調管理を確認できるアプリがあったり。

もちろんそれらのアプリは、かつおがほぼインストールして、評価をSNSで公表している。

また、スマホアプリの会社から、かつおに『新アプリの宣伝』を申し込まれる事もしばしば。

彼の活動はほぼ『愛すべき猫』が軸なのだが、そこから派生して様々な業界からも目を向けられるようになり、内心ちょっと面倒臭さを感じているかつお。

あまりにも仕事が増えると、『愛すべき猫』を愛でる時間が少なくなってしまうから。

だから彼の仕事は、『愛すべき猫』に貢げるだけのお金があればそれでいい。

無理に働く事もしなければ、どんなに高額な報酬の仕事を依頼されたとしても、全ては『愛すべき猫』を前提として考えている。


「そういえばかつおさん、『ネネちゃん』と『さくらちゃん』は元気ですか?」


「はい! それはもう!

 さくらは相変わらずネネにべったりですけど、最近さくらは窓の近くで景色を眺めるのが日課

 になって。

 雨の日でも風の日でも関係なく窓際にいるんですよ。

 一応窓には二重ロックを施して、ほんの数センチしか開けられないようにしているので、もっ

 と暖かくなったら、外の空気を部屋に取り入れてみる予定です。

 ・・・でもそれだと、一番先輩の『ヤマブキ』がニャーニャー鳴いちゃいそうなので、ちょっ

 と検討している最中です。」


「そっか。ヤマブキ君って、『元野良猫』で・・・」


「えぇ、それで寒い場所が極端に嫌いなんですよね。

 ・・・それにしても、ヤマブキの事までよく知ってますね。」


「私も個人で色々と調べましたから。」


「あっ・・・そうですか・・・どうもです・・・」


やはり、猫関連の話になると、口が高速で動く程の勢いで喋るかつおだが、それ以外の話になると、急に言葉に詰まり始める。

その極端な変わり様は、違和感を通り越して逆に面白く感じてしまう。タブレットを見てパニックになる、彼とそっくり。

かつおは職員と話している最中、近くにいる先住猫を引っ張り上げ、膝の上に乗せる。

そして、膝に乗る先住猫を撫でながら、バクバクする鼓動を元に戻す。画面越しに、そのゴロゴロ音が施設の職員にも聞こえている。

だが、この『リラックス手法』は外では行えない為、外で電話が鳴った際、かつおはその場で出ずに、後から電話を返している。

もちろんその時も、膝の上に猫を常備する事を忘れない。かつおにとって、猫は『薬以外の精神安定剤』なのである。

おかげで彼の膝の上は、万年毛だらけ。しかし、その毛だらけになった膝も、かつおにとっては愛おしい光景である。


「・・・それでですね、かつおさん。去勢手術の件なんですけど・・・」


「どうですか? できそうですか?」


「そうですね、かつおさんの支援のおかげで、彼の体はもうすっかり大きくなって、彼自身もび

 っくりしています。

 なので、譲渡の日をほんの少し延期させて、手術後に譲渡したいのですが・・・」


「・・・そうですね、彼との生活が楽しみではありますが、『先住猫』の事もありますし、そう

 していただければ幸いです。」


「・・・あ、それと。これは私の個人的話になる・・・かもしれないんですけど。

 私、まだこの施設に入職してから半年にも満たないんですけど、かつおさんに教えてもらった

 獣医の方、とても動物に対して優しい上に、知識も豊富で・・・

 かつおさんがあの動物病院で手術を受けさせようとする理由が、ようやく分かってスッキリし

 ました・・・

 ・・・こんな事、あんまり大きな声では言えませんけど、獣医の中にも『ハズレ』があります

 からね・・・」


「だから私の『行きつけ』なんですよ。あそこの院長さんはとても信頼できる上に、動物に対し

 ての愛も本物なので。」


「先日も、猫ちゃんの経過観察の結果を見る為に、行ってきたんです。

 そこで院長さん、


 「彼の猫は『私専門』だからね」なんて言ってました。」


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