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聖魔戦記  作者: 西條
豊雲祭
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異変を知る手掛かり

 聖魔学園と太陽世界の首都ディスモールを繋ぐ唯一の道、サンフレイズ街道を抜けマドカ(とついでにクライン)を連れ私達は太陽世界の首都へやって来た。


 太陽世界の首都――ディスモール。通称、栄光と繁栄の都。


 この街の名前は太陽世界の英雄アレキサンダー・ステリエ=ディスモールの名から付けられた太陽世界の首都である。

 毎日がまるで祭りのように人で賑わっており魔導具、武器、防具、珍しい物までここに来れば大抵揃っている。


 世界のありとあらゆる物は全てここから出荷されていると言っても過言ではないのだ。


 レデレア行きのバス停を目指すべく大通りへと向かう私達。今日はいつも以上に人で溢れていてむさ苦しい。


「この街は好きじゃない。 ………酔う」


 人混みを押し通っている最中、クラインは顔を真っ青にし言う。バス停がある大通りまで目と鼻の先なのに人混みのせいで中々先に進めない。私の顔色も真っ青だ。


「あーもう!人混みウザいぜ。いっそのこと私の鎌で道を切り開いてやろうか」


「……その意見に賛成だ。レデレアに着く前に気分が悪くなる」


 クラインが話した後、私は暫く黙った。いつもならここでマドカが「やめなよー!」の一つや二つ飛んで来る頃だ。しかし先程からあのよく通る声が聞こえてこない。


「ク、クライン?マドカは?」


 私の視界は人混みに囲まれマドカの姿は見えない。


「お前の方にいるんじゃないのか?……というか先程から声がしないな」


 クラインの視界も私と同じく人混みで囲まれているようだ。


 私は更に顔色を悪くし嘆いた。


「あ、あいつ……迷子になりやがったな……!」


「探したらどうだ。バスが来るまでまだ時間があるだろう」


「はぁ……お前は田舎者だから知らないと思うがこのディスモールは太陽世界で一番広い国なんだぞ? 軽く聖魔学園の数千倍は広いぜ」


 聖魔学園も広い方だがその聖魔学園の数千倍という圧倒的面積を誇るディスモール。その中からマドカを捜す……。考えただけで頭痛と眩暈が襲う。


「どうするんだ」


「いやーどうするもさ。私達も動けないだろ?」


 人混みが全く進んでいない事に私は気が付いた。どうやら前の方で何かトラブルが起こっているらしい。喧嘩のような怒声がここまで聞こえてくる。


「よし、剣で道を切り開くか」


 ただでさえ暑いのにそれでいて人混みでむさ苦しい。暑さで脳をやられたのかクラインは剣を取り出そうとする。


「ちょ!待て!落ち着け!落ち着けって!!」


「――我慢の限界だ。俺にも限度がある」


私は「アホーーーっ!?」と怒鳴り人混みを無理矢理押し通りクラインのもとに駆け寄った。





◇◇◇◇


「あっれー? ユカリとクラインいなくなっちゃったなー……」


 私は器用に人混みを避け一足先に大通りのバス停に到着していた。辺りを見回しても二人の姿は無い。二人を置いて来てしまったらしい。


「仕方ないなぁ……戻るか」


 後ろを振り返ると大通りより凄い人混みの数だ。あんなむさ苦しい場所に戻りたくない。というかあんな人混みのなか二人を捜すのは無理だと戻る事を三秒で諦めた。


 どうも今日は混んでいるなと周辺を見渡すと近くで騒ぎが起きている事に気づく。次から次へと野次馬が集まりこの人だかりを更に肥大化させているようだ。


 面白そうという子供特有の好奇心に狩り立たれ私は野次馬をひょいひょいと避け、騒ぎの中心まで辿り着く。


 中心には怯えている白の一族の少年とキレ気味の少女が仁王立ちで立っていた。


「私は今非常に怒ってるんだわー。わかる?」


「い、いやだから何度も謝っているじゃないですか……」


 白の一族の少年は焦りながら言うとキレ気味少女は「ふざけんな!」と怒鳴り散らした。


「テメェが私に話しかけるから私の貴重な時間が潰れてしまったじゃんか。どう責任取ってくれるわけ?あぁ?」


 少女は非常に口が悪く喧嘩腰だ。灰色のワンピースを着ていて薄い水色で青色混じりの髪を首の横に束ねている。健康的に焼けた小麦色の頬には音符に似たフェイスペイントが施されていた。


 少女にメンチをきられている白の一族の少年はキレ気味少女の態度に蹴落とされビクビクしている。今にも泣きだしそうだ。というかもう、泣いている。


「ん?」


私は白の一族の少年の顔をよく見た。やはり見覚えがある。


「あれ? 君、聖魔学園の生徒だよね?」


 聖魔学園の制服は着ていないがあの白の一族の少年は聖魔学園生徒だ。廊下ですれ違ったり挨拶したりする程度だが私と多少の面識はある。


 白の一族の少年は私に気づくと慌てて助けを求めて来た。


「あ!君は!? ……ちょっと助けてくれないかなぁ。実は道に迷ったもんだからこの人に道を聞こうとしたらいきなり怒っちゃってさぁ……」


「テメェは私の貴重な時間を潰したッ!私は忙しいと言うのに!これは万死に値する」


 少女は相当お怒りのようだ。怒りの理由はとても理不尽、『逆ギレ』だ。


 私はひとまず少女を落ち着かせようと間に割り込み仲裁に入る。


「あのー。君、名前は?」


「あぁ?なんだテメェ。部外者は引っ込んでろ!」


「私はマドカ!君は?」


「……クライチャー。名前を聞けただけで死ねる光栄な名だ」


 上から目線な言い方がギュヴリークと同類だ。私は呆れながらクライチャーさんの怒りを沈める方法を考えていた。するとクライチャーさんは頭を搔き毟り焦ったように叫ぶ。


「ああああああああっ!!もうイライラする!!!!!!!!!なんなんだよ全くッ、こんな話聞いてねーぞ!アレキサンダーッ!!」


「え?アレキサンダー?」


 何故ここで英雄アレキサンダーの名が出てくるのだと聞き返さずにはいられない。


 クライチャーさんが私の質問に答えようと口を開いた、その時――。


 空から一本の剣が降って来た。剣は私の目の前で地面に突き刺さった。 あと一歩、前に出ていたら私真っ二つになってたよ……?え?これほんと洒落にならないよ?


「あ、あっぶなー……」


 空から降って来た突然の来訪者(死)に冷や汗を浮かべる私。私はその剣に見覚えがあった。この柄に珍しい紋様が掘られている剣はそう、クラインの剣である。


 私や白の一族の少年……周りにいた大勢の野次馬の視線は突き刺さった剣に集中した。


 私はクライチャーさんの方へ視線を戻すと、そこにはクライチャーの姿は無かった。私や白の一族の少年、野次馬達は「え?」と手品を見せられたかのようにポカンとする。


 クライチャーさんが短時間の間に周りを取り囲んでいる野次馬の壁を安々と押し通れる筈もない。押し通ろうとすれば多少のざわめきはあったはずだ。


 クライチャーさんは何らかの手を使いその場から忽然と姿を消した。その瞬間を見ていた者は誰もいない。周りはざわざわとどよめき、やがて不思議そうにし去って行った。喧嘩を見て帰ると言うよりマジックショーを見て帰ったような反応だ。


「なんでクライチャーさん元校長の事知ってたんだろう」


 私は考え込むが自分の思考では決して答えにたどり着けないな。と賢明な判断を下し白の一族の少年の方を見た。


「あ、え、えと……そ、そのありがとう!」


 この少年、誰に対しても挙動不審な態度のようだ。


「別にいいんだけどさ。 ところで君、名前は?」


「ソ、ソウマ! 白の一族……なのは見て分かるよね?」


「ソウマくんにキレてたあの女の人……クライチャーさん?だったよね。どこ行っちゃったんだろ?」


「剣にみんな目が行ってたからなぁ……」


 空から降って来たクラインの剣の事も気になるが忽然と消えたクライチャーさんの方が今は問題だ。


 クライチャーさんは何かを焦っていた。そして聖魔学園元校長のアレキサンダーさんの事を知っているような口振りであった。一体あの女性は何者なのか。謎は深まる。


「誰かクライチャーさん見た人いないかなぁ」



「いますよ。ここに」



 私の横には聖魔学園の制服を身に纏った一人の幼い少女が立っていた。藍色の長い髪に鋼鉄製のヘッドフォンのようなものを付けている。


 その幼い顔立ちからして歳は私の四、五歳下だと見受けられる。この子の歳ならばまだ外に出て遊んでいる年頃だ。


 だが少女の瞳は明らかに同世代の瞳とは異なっていた。少女の瞳は暗く沈んでいるのだ。十代の子供とは思えない冷淡な目……。子供が宿す目の輝きがこの少女には感じられないのだ。


「あ! さ、探したんだよ!」


「探したのは私の方ですよ、ソウマ」


 ソウマくんと少女、どうやら知り合いのようだ。まぁ二人は同じチームのメンバーであろうと解釈した。



「え、えと紹介するよマドカ」


「貴女の事は知っていますよ、マドカ。私はエリィ・レストア。知っているとは思いますが私とソウマは同じチームです」


 自分とは比べ物にならない程しっかりしている。ちっちゃいのに偉いなぁと私は感心してしまった。



「エリィちゃん。私の事を知ってるってことは結構私ってば有名だったりする?」


「はい。聖魔学園一、二を争う程の駄目人間と言われています。 糞野郎人間として終わっていると言われているバイオレットといい勝負ですね」


 バイオレットさん人間として終わっている人といい勝負と言う事は自分も相当終わっているらしい。


 エリィちゃんはヘッドフォンに手を当てながら言った。なにやらヘッドフォンから何か情報を読み取っているようにも見える。まさかアリスちゃんと同じく魔導アンドロイドなのでは?と思い私はエリィちゃんの頬を触った。


「何をするのですか、マドカ」


 アリスちゃんとは違いエリィちゃんの頬には人間特有の温もりがあった。エリィちゃんは列記としたヒューマン人間である。少しホッとした。


「い、いや!エリィちゃんって頬っぺたすべすべしてるなーって……あは」


「貴女はソウマと同じで嘘を吐くのが下手ですね」


「ええっ!僕って嘘吐くの下手だったの!?」


 ソウマくんが意外そうな顔で言うのを見てエリィちゃんは溜め息を漏らした。


「私はロボットではありませんよ。アリスのようにロケットパンチも出来ませんし目からビームも出せません」


 自分が思っていた事を言われてしまい少し動揺する。この子、サイコメトラー人の心でも読めるのでは?と思ってしまうほどに。


「うぅ……。 で、エリィちゃんはクライチャーさんを見てたんでしょ?どこに行ったの?」


「剣が地面に刺さると同時にあの女性は煙のように忽然と消えてしまいました」


「煙?」


 煙幕弾でも使って逃げたの?とソウマくんが聞くとエリィちゃんは首を横に振った。


「煙……いえ、「雲」と言った方が近いでしょうか。身体が雲のような気体になり空へと昇って行きました」


「それ本当?エリィちゃん」


「私が嘘を言う顔に見えますか?」


「見えません……。でも本当にクライチャーさんが消えちゃったんなら……」


 人間がその場から一瞬にして消えるなんて魔法を使わない限り無理だ。魔法も時空の聖魔の力を借りなくては出来ない大魔法だ。しかもそれだけの大魔法、予め術式を書かなければ使えない。クライチャーさんには術式を書く時間も、魔法を唱える時間も無かったはずだ。


「そ、それって……ゆ、幽霊、なんじゃない……?」


 ソウマくんが青ざめた顔で言った。


「幽霊なんて非科学的なものいる訳ありませんよ。ソウマ」


「うぅ……でも……うぅ。で、でもさ……エリィ。幽霊以外に例えがないじゃんかぁ」


「ミス・クライチャーが聖魔……と言う考えはどうでしょうか」


「「聖魔?」」


 私とソウマくんは声を揃えて言った。


 確かに聖魔ならば一瞬にして消えたのにも辻褄が合う。聖魔なら身体を一瞬にして気化する事も可能だ。そもそも聖魔には肉体が無い。基本は粒子の集合体で自在に姿を変えることが可能なのだ。勿論、雲のようにも。


「それならば話が全て通るはずです」


「すごいっ!流石エリィちゃん!」


「そしてあの聖魔は「雲」のように消えた。……ここまで言えば貴女にも答えは分かるはずです。マドカ」


「雲……?雲のように消えた聖魔?……雲の、聖魔……!?」


「そうです。私の予想が正しければあの女性は雲の聖魔。もっとも私の予想は外れません。外れる事なんて、許されませんから」



 エリィちゃんはこの短時間で相手の正体を完璧に見抜いていた。

 ……私はクライチャーさんが聖魔と言う事にすら気づかなかったというのに。


 年下なのに自分よりよっぽど凄いと思ってしまうと同時にこの子は自分よりどれほどの努力を重ねてきているのかと少しばかり悲しい気分になった。


「マドカ、もうすぐバスが来ますよ。貴女はシオンに雲の聖魔の様子を見てきてくれと頼まれているのでしょう? あの聖魔は何かを焦っていました。早く行かないと手遅れになってしまうかもしれません」


「う、うんっ!そうだね! じゃあ行くね、ありがとう!ソウマくんにエリィちゃん!」 


 エリィちゃんはバスの時間や人の任務情報まで完全把握している。もはや私のタイムスケジュール一日の予定まで把握しているのじゃないかと驚き、私は地面に刺さったクラインの剣を引き抜きバス停まで全速力で走った。




もうすぐ卒業西條です。

もう高校卒業ですよ……はやいですねえ……。

控えめに言って卒業したくないc(`Д´と⌒c)つ彡 ヤダヤダ

眠いので寝ます

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