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聖魔戦記  作者: 西條
豊雲祭
28/36

出発



「……おい」


 肩を揺らされ私は重い瞼をゆっくりと開く。



「ここは……?」



 目を覚ますとクラインの部屋にいた。


「ここは俺の部屋で俺が起きた時にはお前は寝ていた」


「私が、寝てた……?」


 起き上がり寝る前の記憶を掘り起こすが自分が寝たという記憶は無い。


 まず自分はクラインの部屋に入るなりいやらしい本が無いかと部屋を物色したが見つからなかった。そこまでは覚えている。次にクラインを起こそうとしたがあまりに起きないので断念。ここも覚えている。次は――。


 クラインを起こすのを断念した次が分からない……。頭をフル回転し考えるが思い出せない。いや、もしかすると寝ていたのか?という考えが出てくる。


 寝ていたという記憶は無いが起こすのに疲れた自分は寝てしまった……。馬鹿としか言いようが無いがその考えなら普通にあり得る話だ。



「そうだ。お前は寝てた」


「お前を起こすのに疲れて寝てたぜ。可愛さに免じて許してくれ。てへ☆」


「……早く行くぞ。マドカが待っているんだろ」


 クラインは私が寝ている間に身支度は済ませたらしい。すぐにでも出発できる状態だ。

 クラインは部屋のドアノブを包帯が巻かれた右手で回し、部屋を出た。




(……包帯?)




 何か引っかかるがそんな些細な事どうでもいいかと私は部屋を出た。




◇◇◇◇


「おーい!マドカー」


 校門で待つこと三十分。ようやくユカリとクラインがやって来た。待ちくたびれた私は木の下の木陰で「遅いー」と唸る。木陰の下でもやはり暑い。炎天下の中で三十分待たされ溶けかけていた私の気も知らず二人は悠々としていた。


「二人とも遅いよ!? 私あともう少しでスライムになってたよ!」


「悪かった。クラインがあまりに起きないから私まで寝てた。 ……いやーあっついねぇー。黒い服だと余計に暑い」


 ユカリは半袖を肩まで捲り「暑い暑い」と連呼した。私の方が暑いのだがそれは置いといてユカリまで寝ていたとはどういう事だろうか?


「ちょっとどういうことかな? 私まで寝てたって?」


「いやー暑い暑い暑い暑い暑い」


 シラを切るということは何か後ろめたい事があるようだ。ユカリはプライドが高いので自分の失敗隠す為「暑い」しか言わないだろう。


「……黙れ。余計暑くなる」


 相変わらずクラインは黒いサングラスに黒いマントを羽織っていた。ユカリも黒づくめだがクラインもクラインで黒づくめだ。マントは昨日メリーさんに黒こげにされたのだがどうやらまだ替えがあるらしい。しかしそのマントは今日に限り暑苦しいだけだ。


 今日のクラインは少し不機嫌だ。暑いせいか少しイライラしている。


「……。昨日は全然眠れなかった。どっかの馬鹿のせいで」


 一体クラインは昨日何をやっていたのだろうと思うもこれ以上クラインの機嫌が損なわれると任務に支障を招きかねないので私はそれ以上深追いはしなかった。


「それにしてもこんな太陽が隠れないなんてことがあるとはなー。 雲の聖魔は聖魔学園元校長が使役してるって聞いたが――実は雲の聖魔じゃなくて元校長の方に何か遭ったんじゃないか?」


「どういうこと?」


 私はユカリに聞き返した。


「元校長もアレだろ?結構歳食ってるから……老衰とかありえるだろ?ちょっと縁起でもないが。 そうしたら使役が解除ささって雲の聖魔は雲隠しを止めたーみたいな?あくまで私の予想だが」


 ユカリの筋は通っている。無い話ではない。

 かなり物騒な話だが「確かにその線もあるかも」と私は考え込むが待ったをかけるかのようにクラインは「それは絶対に無い」と断言した。



「どうして?クライン」


「……今日の新聞にその元校長が載っていた」


「お前、新聞なんて読んでんのかよ」


「……世間の事を良く知った方が良い。と教わったからな。というか読まないお前の方が逆におかしい」


「お前は本当―――っに一言多い野郎だな」


「お前だけには言われたくない」


 この二人は本当によく喧嘩するものだ。「喧嘩するほど仲が良い」という言葉があるから微笑ましい事なのだが……と私は二人の仲裁に入る。


「まぁまぁ。二人とも落ち着いてさー。 ……とりあえず目的地のレデレアだっけ?まずそこに向かおう?誰か行き先分かる?」


「行き先は確か……」


 ユカリはスマポから立体仕様の世界地図を映し出す。聖魔学園版スマポにはこんなハイテクな機能がついているのに驚きだ。しかも行き先の移動手段まで書かれている。


 目的地のレデレアは現在地の聖魔学園から結構距離がある。


 まずここから数分歩いてディスモールまで行きそこからバスで小一時間ほど揺られればレデレアに着くらしい。


「うへぇ……なんともThe★田舎みたいな場所だねぇ。 はじまりの村、みたいな?」


「こんなに遠いんだからはじまりもクソもないだろ……」


「……おい。話している暇があるんならさっさと行くぞ。日が暮れる」


 クラインの呼びかけに二人は応じディスモールへ続く道を歩き始めた。


自分のバイト先の食べ物のカロリーが化け物クラスだったことをたった今知った西條です。

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