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甘罠バレンタインデイ。



 ドン!バァーン!ドンガラガッシャーン!って感じだった、全体的に。


 部室は黒焦げのハンバーグ状態で、建物が半壊するほどの衝撃だったのに、非常ベルすら鳴っておらず、教室に逃げ帰った頃には当たり前のように5限目の数学が始まろうとしていた。部室棟で手榴弾が爆発したというのに、なにが「二次関数」なんだろうか。


 だーれも、なーんにも騒いでいない。

 浮かれ気分のバレンタインデーが続いているだけ。消防隊や警察が来る気配もないどころか「誰かにチョコもらった?」「……義理チョコなら」とゆるふわトークまで聞こえてくる始末。



(それも、ここが “ラブコメディ世界” だからか?)



 たとえ部室棟で手榴弾が爆発しようが、ショットガンが乱射されようが、すべては学園の『お約束』として片付けられる。

 それが、この世界の舞台設計なのかもしれない。



「…………あ、2,000円返してもらえてねえわ」



 授業なんて聞く気はなくて、あれこれ考えているうちに瞼が自然と重たくなってきて、気がついた頃には意識の中に沈んでゆき、なんもかんもがどーでもよくなっていた。



 ※ ※ ※



「ねーねー、知ってた?」



 暖房が効いた車内。ロックされた補助席の前に立っていた雪柳が飛び跳ねながら俺の肩に触れた。

 車内は暖房が効いてて少し蒸し暑い。


 放課後、俺たちは「ムッシュマニエル」へと向かっている。



「いま【たべっこどうぶつTHE MOVIE】やってるんだって!」 


「ええっ!? いま【たべっこどうぶつTHE MOVIE】やってんの!!!??」



「たべっこどうぶつたちが、世界を救うんだって!」


「たべっこどうぶつに世界が救えるわけねえだろ……」




 スマホで調べてみたら本当に公開されていた。



 どうやら世界征服を目論む『わたあめ軍団』と戦うらしい。なんで『わたあめ軍団』が世界征服を企てて、それをたべっこどうぶつたちが救うんだよ……。ねえ、そんなに悪いやつなの?わたあめ軍団。




「今度、みにいく??」




 雪柳が無邪気に笑っている。


 彼女は子供っぽいところがあるので「クレヨンしんちゃん」「ドラえもん」「エルモ」「スヌーピー」みたいな系統のアニメが大好きだ。付き合う前も、この子に誘われて一緒に「ミニオンシリーズ」を観に行ったことがある。



「……ぐぬぬっ」



 映画は好きだ。サブスクでなにかしらの作品を常に見てはいる。


 だけど、俺は雪柳に自分の好きなものを勧めない。多分それをしたところで「むずかしかった」「こわかった」「よくわかんない」と言われるだけだから。


 でも全然いやじゃない。むしろ、その噛み合わなさすら、たまらなく愛しかったりする。




「もう映画中によだれ垂らして寝ない?」


「よだれ垂らしてないからっ! 米吉くんだってイビキかいて寝てたことあったじゃん!」


「ま〜た隣でハンカチ片手に号泣してるところ見れるのか。さっきまで寝てたのに、ラストシーンあたりでなぜか泣いてるのおもしろいからな〜」


「……いじわるっ!」




 着飾ってなくて、素直で、純粋で、明るくて眩しい。だからこそ、少しでも長く、一緒の時を過ごしたいと思ってる。


 返事はもちろん「いいよ」だった。


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