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爆発バレンタインデイ。



 内側から響くような震えだった。壁が振動して、パラパラとコンクリ片が降ってくる。鵜飼さんが悲鳴をあげて、机の下に隠れた。

 真上をイキったバイク乗りが爆走して通りすぎたような、巨人が天井を殴ってきたかのような、そんな爆音&衝撃&空気圧だった。



「ど、ど、ど、ど、どういうこと!?」



 両手で頭を守りながら、バカみてえに「あわあわ」と身体を震わせている俺。

 粉塵を払いのけていると、



「…………お嬢、お気をつけて下さい」



 背後にいた男がボソッとそう呟き、霧隠さんが俺を右手で制して、階段のほうを睨みつける。







  カツン…



       カツン…


               カツン…


 カツン…







 誰かが階段を降りてきて、霧隠さんがショットガンを身構えた。

 高笑いが、聞こえてくる。



「あははっーー。そんな警戒せずとも、これも全部“パフォーマンス”なんだから、世界に楯突く革命組織ごっこはやめて女子高生らしいコトをやったほうが、顔色も悪くならないし、暗い気持ちにならないと思うよ? あぁそうそう、オススメのファンデがあるんだけど、今度の週末もし空いてたら買いにいかない? まだお金は持ってるよね」



「…………神戸(かんべ)さん」




 ほとんど一息でそう言って、セーラー服姿の女性はフラフラとこちらに歩いてきた。両手には手榴弾を握っている。

 耳まで出したショートヘアに猫みたいな瞳。

 細身で手脚は長く、身長も高め。

 少しボーイッシュな雰囲気のある可愛い年上の先輩だった。



「自己紹介って苦手でさ、一人一人教壇の前に立たされて『自分はこういう人間で〜』って語ることに意味はないと思ってて、だから履歴書や面接とかも苦手なんだけど、“KY系ボクっ娘”という属性がボクにも貼り付けられているわけだから、一応それを開示しておくんだけど、でもよく考えたらボクって一方的に空気を読まずにお喋りしがちだから、実は自己紹介って得意なほうかもしれないんだよね。あ、うん。3年A組の──神戸(かんべ) (まどか)です。趣味はバレー、特技は器械体操。あと、おっぱいは……小さめです。きゃっ//」



「……」



 え、四天女ってこんな奴らしかいないの??



 ※ ※ ※



「…………なにしにきたのですか、神戸さん」


「あのね、来桜ちゃん。米吉くんは彼女さんと“放課後デート”があるんだから、二人を巻き込むのは空気が読めてないよ?」


「……あなたがそれを言いますか。その爆弾は? 私の屋敷から盗み出したものですか? いつ? なんのために?」



 神戸円は「質問が多いなぁ」と少し考えて「うーんとね、」と語り始めた。



「せっかくだし、さっきの来桜ちゃんのように[舞台]で喩えてあげよっか? ふふ。ボクねー、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()んだよ。結構前にね」



「…………なにをいってるんですか? 意味がわかりません」



 ふふ、と含み笑いをしながら、神戸さんは霧隠さんを無視して、俺に目を向けた。

 爆弾を持ったまま、近づいてこないでほしい。



「大丈夫だよ、ボクは味方だよ。来桜ちゃんは変なんだよ。自分のことより他人のことを優先したりして、ボクはあの子のそういうところが大嫌いで、心底苦手で、そんなことなら()()()()()()()()()()()()()()()()のに」



 神戸さんは俺と喋っているようで、自分に語りかけているようだった。

 さっきから独り言なのか、会話なのか、その中間のような言葉を発している。



「ねえ、キミは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の? 受け止められる? それとも拒絶する?」



「……あの、すいません。言ってることの意味が全然わからないです……」



「いーよいーよ、いずれ分かるから」




 ーーと、次の瞬間、手に持っていた手榴弾を奥に投げ込んだ。

 地下アジトが爆発する。

 鵜飼さんが絶叫している。



 突然のことでパニックになっていると、神戸円さんに抱き抱えられた。

 彼女は爆風を利用して、壁を三角跳びして避け、階段の中段あたりに俺を置いた。

 この場から離れて「逃げろ」ということらしい。




「…………邪魔をするなら消しますよ、神戸さん」




 またしても手榴弾が跳ねた。

 今度は、ショットガンの銃声が聞こえた。


 振り返ると、神戸さんは隠し持っていた手榴弾のピンを口で外そうとしていた。

 爆風の中、彼女は両手を広げて高笑いをしながら突っ立っている。



「あははっーー! ごめんねぇ〜、来桜ちゃん。

 ──ボク、()()()()()()()さっ♪」




 俺は急いで階段を駆け上がって、さっさとこの場から逃げ出すことにした。


 だって、死にたくないし!!


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