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第19話 誓いの連なり

《精霊王が統べる国》

世界の西端に位置する世界樹がそびえ立つ深い森。


そこに唐突に姿を現した小さな細身の影。

その影は両手を高らかに上げて全身で喜びを表すと、全身を覆う漆黒のローブを自らはだけさした。


そのローブから覗いた身体は、毒々しい色をした吐泥へどろ

吐泥へどろの身体からは、次々と根住ねずみが生まれ出てくる。


根住ねずみとは、その名の通り根に住まう存在。

腐敗と闇に住まう鼠である。


鼠といっても、その容姿は可愛らしいものではない。


飛び出た一つ目。

長く伸びた暗紫色あんししょくの舌。

とても小さな身体は暗緑色あんりょくしょくであり足が6本。


太古の時代に疫病を世界に齎した脅威の存在である。


「ギャッギャッギャッ!!」

不穏な叫び声を発する根住ねずみは、次から次へと吐泥へどろの身体から生まれ出でる。


小さな細身の影は、目の前にあるエルフの里を見た。

そして笑う。


「やれっ!」


右手を振り下ろした小さな細身の影。

その命令に従って、根住ねずみたちは一斉にエルフの里を襲った。



一方のエルフの里。


エルフとは、精霊王が統べる国の守り手である。

世界樹がそびえ立つ深い森の中で、平穏に暮らすエルフたち。


今更、説明するまでもないことだが、その容姿は華麗で華奢。

長く先が尖った耳が特徴である。


そのエルフたちが集って暮らしているこの場所は、エルフの里と呼ばれている。

エルフが住まう家は大きな樹木の中に作られており、幾つもの扉と窓が備え付けられた大木が立ち並んでいる。

その景色は、まるで自然と調和したマンション群のように圧巻である。


そのエルフの里では、今まさに新たな生命いのちが生まれようとしていた。


立ち並ぶ樹木の中心にある共用スペースで、1人だけソワソワして落ち着かないエルフの男。

新たな生命いのちは、このエルフに授けられる幸せである。


その様子を見ながらニヤニヤする周りのエルフたち。

歓喜の瞬間が、もうすぐ訪れようとしていた。


「アルよ。お前がソワソワしたところで、何の助けにもならないぞ?」

左目が刀傷で塞がったエルフの男が、ソワソワするエルフの男に笑顔で声を掛けた。


「族長、そんなこと言わないで下さいよ~。」


アルと呼ばれたソワソワするエルフの男は、情けない困り顔をして返事を返した。

その様子を見て爆笑する周りのエルフたち。


その時。


「きゃあーーーーー!!」


エルフの里に悲鳴が響いた。

待ちわびた幸せの産声ではない。

絶望の叫びである。


その絶叫は、一瞬で里を埋め尽くした。

至る所から巻き起こる悲鳴。


何かが起きた。

その場にいたエルフは、全員が武器を手にする。


すぐに大木を駆け登るアル。

エルフは、跳躍力と身軽さに優れている為、木をよじ登る必要などない。


そして気付いた。

暗緑色あんりょくしょくをした不気味な何かが、里全体を覆っていることに。


ゾワゾワとした嫌な予感が頭をよぎる。

その不気味な暗緑色あんりょくしょくは、アルが駆け登る大木にも迫ってきた。


その地面では、暗緑色あんりょくしょくの波に飲み込まれていく仲間たち。


「エルザ!」

アルは、大木に備え付けられた扉の一つを開けて中に飛び入ると、すぐに扉を堅く閉めた。


慌てて中に入ってきたアルを見て、お産を手伝っているエルフの女性たちは呆れた。

その中心には、必死にお産の痛みに耐えているエルフがいる。


「アル!気が早すぎるわよっ!まだ外で待ってなさい!」

その中でも年長であるエルフの女性が、アルを睨みつけて叱る。


「やばいんだ!何かが襲ってきた!ここにも来る!」


急ぎ口調で説明するアル。

そして、自分の妻であるエルザの様子を見た。


もうすぐ。

もうすぐなのに。


アルが閉じた扉の外から、ガリガリと引っ掻くような音が聞こえる。


まずい!

そう感じたアルは後ろを振り返ると武器を手に構えた。


ガリガリガリ。


ガリガリガリガリ。


バキンッ!


破壊された扉。

そこから大量に入ってくる根住ねずみ


部屋の中は、一瞬で暗緑色あんりょくしょくに埋め尽くされる。


「ぎゃあーーー!!」


根住ねずみはエルフの女性たちを襲った。

悲鳴と泣き叫ぶ声が入り混じる。


その猛威は、エルザにも及ぼうとしていた。


必死で武器を振り回して根住ねずみを排除するアル。

しかし、あまりにも数が多い。


多すぎるのだ。


アルが打ち漏らした根住ねずみがエルザを襲った。

エルザの口の中に根住ねずみが入り込む。


「うぇ・・ううぇw」

苦しそうにえずくエルザ。


「エルザ!エルザッ!!」

エルザを助けようとするアル。


だが、そのアルの足は暗緑色あんりょくしょくの塊に捕らえられて動かない。


エルザの下半身にも入り込んだ根住ねずみ


まさか。

そんな。

嘘だと言ってくれ・・・。


アルは、膝から崩れ落ちた。


その根住ねずみが口に咥えて出てきたのは新しい生命いのち

授かるはずであった幸せ。

訪れるはずであった幸せである。


「あぎゃっ。」

その幸せが一声泣いた。


次の瞬間。


根住ねずみが新しい生命いのちを埋め尽くす。

その横では、白眼をむいて息絶えてしまったエルザの姿。


「嘘だ!嘘だ!嘘だぁぁーーーーーー!!!」


頭を抱えてその場にうずくまったアル。

そのアルに一斉に襲い掛かる根住ねずみ


その外では、愉快そうに高らかに笑う小さな細身の影がのんびりと歩く。


ベチャ、ベチャ。

その足音は異様。


「アル!大丈夫か!!」


族長である左目が刀傷で塞がったエルフの男が、アルのいる部屋の中に駆け込んだ。


すでに根住ねずみはその部屋から移動した後である。

その部屋の中は惨劇。


全身が暗紫色あんししょくに変わり果てて絶命しているエルザ。

そのすぐそばには、暗紫色あんししょくになって動かない生まれたての生命いのち

そして、藻掻き苦しんだような姿で息絶えたエルフの女性たち。


エルフの族長は左手で目を覆った。

その左手は、所々に暗紫色あんししょくの斑点が出来ている。


「う・・・。」


アルは生きていた。

全身に暗紫色あんししょくの斑点が広がっており、意識は朦朧としているようである。


エルフの族長はアルを肩に担いだ。

そして、部屋の外に向かって口笛を吹く。


その部屋がある大木に向かって飛んできたのは巨大な鳥。

青白く揺らめく炎で形作られた鳥である。


その青白く揺らめく炎で形作られた鳥の背にアルを寝かせたエルフの族長。


「“希望の迷宮”に行ってくれ。そして、あいつに伝えてくれ。助けてくれと!」


族長は、その鳥にそう伝えた。

その右目からは流れ落ちる涙。


青白く揺らめく炎で形作られた鳥は、大きく頷くとその翼を広げて空に羽ばたいていった。


その姿を見送ったエルフの族長。

左手にあった暗紫色あんししょくの斑点は、すでに顔まで浸食が至っている。


「誰だ!誰がこんな!」

唇を噛み締めるエルフの族長。


その真下には、高らかに笑う小さな細身の影があった。


「貴様か!貴様だなぁぁぁぁーーーー!!」


剣を振りかぶったまま、エルフの族長は大木から飛び降りた。



一方。


“鍛冶の迷宮”でげんてつに創造暦を確認した俺。

その答えには2万年の差があった。


何があったのかは分からないが、初代幻鉄むかしのげんてつは2万年後の現代にいる。


時空を超える術など存在しない。

すると、げんてつは2万年の時を眠っていたのであろうか。


「詳しい話は、俺の迷宮に連れ帰ってから聞くとするか。こいつを連れて行っても良いかな?」

俺は、三十三代幻鉄いまのげんてつに確認をした。


「ああ。構わんが、丁重に扱って欲しいだえな。初代だし・・・。」

こいつ次第だな。」


その横から、1本の刀を差し出した紫色フィリア

その刀には鞘がない。


黄色キングストンの形見、柳風秋水りゅうふうしゅうすいである。


「悪いが、こいつの鞘を作ってくれないかな。料金は言い値で構わない。」

「こいつの鞘がなくなったということは・・・。」


「ああ。黄色キングストンは、俺を守って逝ってしまった。」

「そうか・・・面白い奴だったのにな・・・。」


「頼めるか?」

「ああ。すぐに取り掛かるとするだえな。」


その刀を見た初代幻鉄むかしのげんてつ

その目玉のない目を大きく見開いて、柳風秋水りゅうふうしゅうすいをまじまじと見る。


「こいつは・・・素晴らしいだえな。」

初代幻鉄むかしのげんてつが呟いた。


照れるようにして頭を掻いた三十三代幻鉄いまのげんてつ

「初代に褒められると照れるだえな。こいつは、百年費やして鍛え上げましたでえな。」


「いや。この刀の素晴らしさは、素材でも費やした年数でもないでえな。」

初代幻鉄むかしのげんてつは、骨の指で柳風秋水りゅうふうしゅうすいの刃を触った。


「間違いない。この刀には、誰かの想いが託されているだえな。」

骨の左手拳を顎の下にあてて、何かに納得するように頷く初代幻鉄むかしのげんてつ


「そうか・・・黄色キングストンの想いが生きているんだな・・・。」

小さく呟いた俺。


三十三代幻鉄いまのげんてつ柳風秋水りゅうふうしゅうすいを預けると、俺は後ろを振り向いた。


「よし。じゃあ、こいつを連れて、俺の迷宮に戻るとするか。頼むよ黒色ドルトン。」

「かしこまりました。」


紫色フィリア朱色シュウナに左右から持ち上げられたげんてつ

黒色ドルトンの瞬間移動で、俺たちは一瞬で俺の迷宮の迷宮主の間に戻った。


「ふぇああ~。こりゃまた、たまげただえな~。」


瞬間移動にまだ慣れていないげんてつ

辺りを見回した後、自分の骨の身体をあちこちと確認している。


「お帰りなさい。その骨はどうされたのですか?」

「お疲れ様デした。その骨は何デすか?」


迷宮主の間で、俺たちの帰りを待っていてくれた七色ゴラン緑色ミジェル

因みに七色ゴランは合体完成形の超巨大サイズである。


それを見上げたげんてつ

あまりの巨大さに驚いて、口を大きく開けすぎたことで顎の骨がカパッと外れた。

誰も気づかぬ山奥の秘境にある小説を読んで下さいまして、誠にありがとうございます。

更新頻度はまちまちですが、続けて投稿していきます。

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