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神、死する時  作者: わんパチ
串刺し編
9/83

とあるのんびり屋の記憶

 例え夢でも幸せならばいいだろう。

 例え妄想でも幸せならばいいだろう。

 現実はこんなにもつらいのだから。俺はただ、沈んでいく。

 俺には小学校から、今、高校まで一緒だった幼馴染が何人かいた。というのも、俺は島に住んでいて、学校は小学校から高校まで一つしかなかったからだ。

 高校まで一緒にいれば、もう家族同然だった。


「怜音! 遊ぼうぜ!」

 俺は誘われるが断った。

「わりぃ、もうちょっと」

「まじかー。じゃあ、手伝うか」

 夏。蝉が鳴いて、スイカがおいしくて、海で遊ぶような時期。

「課題ってそんな大変?」

「あ、お前ら夏休みの課題やってないな」

「俺はやってるよ。半分終わらせた」

「そうやって油断して後悔するだろ」

「私は終わったけどね」

「うわ~いいな。後で写させてくんね?」

「だめ~。頑張りなさい」

「私ももうちょっとだよ」

「流石女子だな」

 宿題を少し進めて、みんなで遊んだ。

 サッカーで遊んだ。俺の蹴ったボールは全部ゴールに入って、みんなが俺を褒めた。


「怜音! 遊ぼうぜ!」

 俺は誘われるが断った。

「宿題、少し進めたいんだよね」

「まじかー。じゃあ、手伝うか」

 秋。枯れ葉が舞って、サンマがおいしくて、落ち葉で遊ぶような時期。

「課題ってそんな大変?」

「シルバーウィークとはいえ、結構宿題で出るぞ?」

「俺はやってるよ。半分終わらせた」

「答え移さずちゃんとやれよ?」

「私は終わったけどね」

「うわ~いいな。後で写させてくんね?」

「だめ~。頑張りなさい」

「私ももうちょっとだよ」

「流石女子だな」

 宿題を少し進めて、みんなで遊んだ。

 かけっこで遊んだ。俺は最後まで捕まらなくて、みんなが褒めた。


「怜音! 遊ぼうぜ!」

 俺は誘われるが断った。

「もうちょっとやっていい?」

「まじかー。じゃあ、手伝うか」

 冬。雪が降って、おでんがおいしくて、雪で遊ぶような時期。

「課題って縺昴sな大変?」

「冬休みはちゃんと間に合わせろよ?」

「俺はやってるよ。半分終わらせた」

「こりゃ、最終日で泣きついてくるパターンだな」

「私は終わった縺代←ね」

「うわ~いいな。後で写縺輔○てくんね?」

「だめ~。頑張りなさい」

「私も繧ゅ≧ちょっとだよ」

「流石女子縺?な」

 宿題を少し進めて、みんなで遊んだ。

 かくれんぼで遊んだ。俺は最後まで見つからなくて、みんなが褒めた。


「怜音! 驕ぼうぜ!」

 俺は誘われるが断った。

「後、これだけ!」

「まじかー。じゃあ、謇倶シうか」

 春。桜が舞って、筍がおいしくて、花見して遊ぶような時期。

「隱イ鬘ってそんな螟ァ螟?」

「春休みは少ないよ。って油断してると危ないよ」

「菫コはやってるよ。蜊雁?邨わらせた」

「それを油断って言うんだよ」

「遘は邨わったけどね」

「うわ~いいな。蠕で蜀させてくんね?」

「だめ~。鬆大シオりなさい」

「遘ももうちょっとだよ」

「豬∫浹螂ウ蟄だな」

 宿題を少し進めて、みんなで遊んだ。

 ドッジボールで遊んだ。俺の投げたボールは誰も取れなくって、みんな笑ってた。


「諤憺浹? 驕翫⊂縺?●?」

 俺は誘われるが断った。

「ごめん! これだけやらして!」

「縺セ縺倥°繝シ縲縺倥c縺、謇倶シ昴≧縺」

 夏。蝉が鳴いて、スイカがおいしくて、海で遊ぶような時期。

「隱イ鬘後▲縺ヲ縺昴s縺ェ螟ァ螟?」

「夏休みはただでさえ多いんだから、ちゃんとやれよ」

「菫コ縺ッ繧?▲縺ヲ繧九h縲蜊雁?邨ゅo繧峨○縺」

「俺知らねぇぞ? 見せてやらないからな~?」

「遘√?邨ゅo縺」縺溘¢縺ゥ縺ュ」

「縺?o?槭>縺?↑縲蠕後〒蜀吶&縺帙※縺上s縺ュ?」

「縺?繧?ス縲鬆大シオ繧翫↑縺輔>」

「遘√b繧ゅ≧縺。繧?▲縺ィ縺?繧」

「豬∫浹螂ウ蟄舌□縺ェ」

 宿題を少し進めて、みんなで遊んだ。

 サッカーで遊んだ。俺のドリブルで全員抜いて、みんなが俺を褒めた。


「諤憺浹? 驕翫⊂縺?●?」

 菫コ縺ッ隱倥o繧後k縺梧妙縺」縺溘?

「ちょっと待ってて、これだけやっちゃう」

「縺セ縺倥°繝シ縲縺倥c縺、謇倶シ昴≧縺」

 遘九?よ椡繧瑚痩縺瑚?縺」縺ヲ縲√し繝ウ繝槭′縺翫>縺励¥縺ヲ縲∬誠縺。闡峨〒驕翫?繧医≧縺ェ譎よ悄縲

「隱イ鬘後▲縺ヲ縺昴s縺ェ螟ァ螟?」

「こんな時期でも宿題は出てるんだからやっとけよ?」

「菫コ縺ッ繧?▲縺ヲ繧九h縲蜊雁?邨ゅo繧峨○縺」

「全部やっちゃえば楽だぞ~?」

「遘√?邨ゅo縺」縺溘¢縺ゥ縺ュ」

「縺?o?槭>縺?↑縲蠕後〒蜀吶&縺帙※縺上s縺ュ?」

「縺?繧?ス縲鬆大シオ繧翫↑縺輔>」

「遘√b繧ゅ≧縺。繧?▲縺ィ縺?繧」

「豬∫浹螂ウ蟄舌□縺ェ」

 螳ソ鬘後r蟆代@騾イ繧√※縲√∩繧薙↑縺ァ驕翫s縺?縲

 縺九¢縺」縺薙〒驕翫s縺?縲ゆソコ縺ッ譛?蠕後∪縺ァ謐輔∪繧峨↑縺上※縲√∩繧薙↑縺瑚、偵a縺溘?


「諤憺浹? 驕翫⊂縺?●?」

 菫コ縺ッ隱倥o繧後k縺梧妙縺」縺溘?

「繧ゅ≧縺。繧?▲縺ィ繧?▲縺ヲ縺?>?」

「縺セ縺倥°繝シ縲縺倥c縺、謇倶シ昴≧縺」

 蜀ャ縲る妛縺碁剄縺」縺ヲ縲√♀縺ァ繧薙′縺翫>縺励¥縺ヲ縲?妛縺ァ驕翫?繧医≧縺ェ譎よ悄縲

「隱イ鬘後▲縺ヲ縺昴s縺ェ螟ァ螟会シ」

「蜀ャ莨代∩縺ッ縺。繧?s縺ィ髢薙↓蜷医o縺帙m繧茨シ」

「菫コ縺ッ繧?▲縺ヲ繧九h縲ょ濠蛻?オゅo繧峨○縺」

「縺薙j繧??∵怙邨よ律縺ァ豕」縺阪▽縺?※縺上k繝代ち繝シ繝ウ縺?縺ェ」

「遘√?邨ゅo縺」縺溘¢縺ゥ縺ュ」

「縺?o?槭>縺?↑縲蠕後〒蜀吶&縺帙※縺上s縺ュ?」

「縺?繧?ス縲鬆大シオ繧翫↑縺輔>」

「遘√b繧ゅ≧縺。繧?▲縺ィ縺?繧」

「豬∫浹螂ウ蟄舌□縺ェ」

 螳ソ鬘後r蟆代@騾イ繧√※縲√∩繧薙↑縺ァ驕翫s縺?縲

 縺九¥繧後s縺シ縺ァ驕翫s縺?縲ゆソコ縺ッ譛?蠕後∪縺ァ隕九▽縺九i縺ェ縺上※縲√∩繧薙↑縺瑚、偵a縺溘?


縲梧?憺浹?√??驕翫⊂縺?●?√?縲?菫コ縺ッ隱倥o繧後k縺梧妙縺」縺溘?縲悟セ後%繧後□縺托シ√?縲後∪縺倥°繝シ縲ゅ§繧?≠縲∵焔莨昴≧縺九?縲?譏・縲よ。懊′闊槭▲縺ヲ縲∫ュ阪′縺翫>縺励¥縺ヲ縲∬干隕九@縺ヲ驕翫?繧医≧縺ェ譎よ悄縲縲瑚ェイ鬘後▲縺ヲ縺昴s縺ェ螟ァ螟会シ溘?縲梧丼莨代∩縺ッ蟆代↑縺?h縲ゅ▲縺ヲ豐ケ譁ュ縺励※繧九→蜊ア縺ェ縺?h縲縲御ソコ縺ッ繧?▲縺ヲ繧九h縲ょ濠蛻?オゅo繧峨○縺溘?縲後◎繧後r豐ケ譁ュ縺」縺ヲ險?縺?s縺?繧医?縲檎ァ√?邨ゅo縺」縺溘¢縺ゥ縺ュ縲縲後≧繧擾ス槭>縺?↑縲ょセ後〒蜀吶&縺帙※縺上s縺ュ?溘? 縲後□繧?ス槭?る?大シオ繧翫↑縺輔>縲縲檎ァ√b繧ゅ≧縺。繧?▲縺ィ縺?繧医?縲梧オ∫浹螂ウ蟄舌□縺ェ縲縲?螳ソ鬘後r蟆代@騾イ繧√※縲√∩繧薙↑縺ァ驕翫s縺?縲縲?繝峨ャ繧ク繝懊?繝ォ縺ァ驕翫s縺?縲ゆソコ縺ョ謚輔£縺溘?繝シ繝ォ縺ッ隱ー繧ょ叙繧後↑縺上▲縺ヲ縲√∩繧薙↑隨代▲縺ヲ縺溘?


 サッカーをした。俺のパスは一度だってつながらなかった。

 鬼ごっこをした。俺がいくら捕まえようと触っても、何の感触もなかった。

 かくれんぼをした。俺が見つけたと言っても友達は隠れるのをやめなかった。

 ドッジボールをした。俺のボールは誰の手にも渡ることは無かった。

 俺を褒める声は、何と言ってるかわからなかった。

 学校は廃れていて、家は崩れていて、友達の家はもうなくて。俺の宿題は全部木の板で、俺の食べ物はずっと木の実で。

「怜音! 遊ぼうぜ!」

 ボールが目の前に転がっている。

 それを思いっきり蹴る。

「怜音! 遊ぼうぜ!」

 ボールが飛んでいった。

「ごめん、俺。宿題しなきゃ」

 ボールが海へ向かっていった。

「まじかー。じゃあ、手伝うか」

 ボールはそのまま波に消えた。

「課題ってそんな大変?」

 俺は今まで持っていた木の板も海へ投げた。

「課題ってそんなに大変?」

 木の板は海に消えた。

「・・・ああ、そうだよ」

 崩れた家の残骸を海に投げる。

「俺はやってるよ。半分終わらせた」

 投げているうちに、涙が出てきた。

「・・・お前ら、なんで」

 家はもうほとんどなくなった。

「私は終わったけどね」

 俺はそのまま歩き出した。

「・・・なんで、いないんだよ」

 ずっと歩き続けた。

「うわ~いいな。後で写させてくんね?」

 波が俺の足を濡らした。

「いなくなっちゃったんだよ」

 体がどんどん濡れていった。

「だめ~。頑張りなさい」

 もう肩まで沈んだ。

「俺も、連れて行けよ」

 頭まで海の中に沈んだ。

「私ももうちょっとだよ」

 海底に足を付けて、歩きにくかったけど歩き続けた。

おいていかないで。

 俺の友達が目の前にいる。こんな水の中で宿題をしている。

「流石女子だな」

 なんで、水の中で平気なんだよ。

「怜音! 遊ぼうぜ!」

 なんで、しゃべれているんだよ。

「怜音! 遊ぼうぜ!」

 ・・・苦しい。

「怜音! 遊ぼうぜ!」

 ・・・悲しい。

「怜音! 遊ぼうぜ!」

「————」

 水の中で、うまくしゃべれなかった。水が口に入ってもっと苦しくなった。

「まじかー。じゃあ、手伝うか」


 俺の島は人数が少なかったけど、みんな仲が良かった。俺もみんなと遊んでた。

 ある夏休み、俺は一人で集落にある山の向こうへ少し出かけていた。友達の一人が誕生日で、何かないかなって探してた。

 ————それは、この世が終わるような大きな音だった。

 地震が起きたのだった。俺はその振動で頭を打って気を失った。

 目が覚めると、もうすっかり朝で、一夜を過ごしてしまったんだとわかった。

 お母さんに怒られるな。

 そんなことを思いながら、俺は家へ帰った。

 家に帰ったら案の定怒られて・・・。

 宿題をしようって思って、自分の部屋に行って宿題をしてたら、窓から名前を呼ばれた。

 怜音、遊ぼうって。

 ・・・・・・。

 ————集落は無くなっていた。地震の後、津波がこの島を襲ったのだ。家も学校も小さなスーパーも小さな病院も流された。俺は偶然にも山の向こうに行ってたから無事だった。

 その崩壊した集落を山の頂上から俺は見たんだ。


 それは階段だった。苦しいのは消えていた。

「大丈夫か?」

 大丈夫かって、初めて聞く言葉だ。

「わりぃ、もうちょっと」

 もう、これでいいや。俺はずっと記憶の中に————

「もうちょっとって、何を待てばいいんだ?」

————!?

 俺は声の主を見た。

 そこにいたのは俺の友達じゃなかった。

 白髪の男性だった。

「ハハ、夏休みの宿題終わらせてないのか?」

「ああ、そういうことか」

 男性は少し考えて、それから口を開いた。

「夏休みはもう、とうの昔に終わったぞ」

「宿題、少し進めたいんだよね」

 さっきのとは違う感情が沸く。

「もう宿題する必要はないぞ」

「答え移さずちゃんとやれよ?」

 ああ、会話が成り立つ。

「答え移しても、終わるには終わるからいいんじゃないか?」

「アハハ、そうだな。終わるんだ。なあ、触れてもいいか?」

「別に構わないぞ?」

 俺はその男性の手を触った。

「触れた・・・」

「当り前だ」

「さわれた~」

 もう疲れたよ。

「・・・お疲れ様」

 男性が優しく言った。

 ああ、ちょっと、休むよ。


 これは俺の、忘れたい話と、救われた話だ。

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