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神、死する時  作者: わんパチ
串刺し編
7/83

5話

 次の条件として出したのはロイヤルの持っている旗を奪う、というもの。

「場所がダメなら人ということだ」

「俺が面倒なだけじゃないか・・・」

 そう言いながら旗を持つロイヤル。やってはくれるようだ。

「初めに言っておく、参加する者はソード、グリーン以外だ」

 とグリーンを見る。

「わ、わかったよ」

「ロイヤルさんから旗を奪うって、厳しくないですか?」

 フブキがロイヤルを見る。

「俺は手を出さないし、そうだな」

 ロイヤルは指で地面に円を描く。

「俺はこの円から出ない」

「あ~、よくあるハンデですね」

「ちょっと提案~」

ロックが手を挙げた。

「ここって壁が近いじゃん。もうちょっと広いところいかない?」

 確かにすぐそばにワンダー・デストロイの壁がある。

「そうだな。創星に移動するか」

 場所を変え、創星のラストアイランドの中央にある広場へとやってきた。

「ここなら思う存分暴れられるからね!」

 ロックはさっそくやる気の様だ。

 ロイヤルは改めて約半径30センチの円を描く。

「こんなに狭くていいんですか?」

「そういう挑発は旗を取ってからにすればいい」

ロイヤルは円の中心にたち、右手に本を、左手に旗を持った。

「余裕って感じだね」

 僕はグリーンの襟をつかみ、ソードと共にロイヤルたちから距離を取る。

「制限時間は1時間だ。じゃ、始めて」

 そういうと同時にフブキとロックが動く。

 ロイヤルへではなく、他の奴らに旗を取られないために壁を作り上げる。

「残念~」

ボルトはそれを砕く。そのまま壁を作って動けないであろうフブキとロックを一瞥し、ロイヤルの持つ旗へ手を伸ばす。

 それを妨害したのはスラッシュだった。流石に剣を手で押さえられるわけがない。

「ちっ」

 ボルトはその上から振り下ろされた剣を避けるため肘を曲げその場にしゃがむ。

 その隙をつき、スラッシュが旗へと剣を持っていない左手を伸ばす。体勢的には少し無理があるが、旗までは届く。

「させるか!」

 それをまた妨害するのはサクラであった。右腕と左腕が交叉しているスラッシュの剣を思い切り上へはじく。

 それを見たボルトはスラッシュの脇腹を蹴り飛ばし、ロイヤルへ飛ばす。

「まじか」

 ロイヤルはジャンプでスラッシュをかわし、円の中に着地する。

「あれ、大丈夫か?」

 ロイヤルがスラッシュを見ているその背後からボルトは蹴りを入れた足を戻し、また旗を取ろうとする。

 旗まであと数ミリというところでサクラがボルトの腹を蹴り上げた。

「まったく、私を無視するとはいい度胸だな」

 サクラはその場から瞬時に距離を取る。

 というのも、フブキが氷をまっすぐサクラへと伸ばしてきたのだ。その先は槍のようにとがっている。

 その氷はそのままロイヤルへと伸びるが、ロイヤルが何かするよりも前に、フブキへとロックが岩の礫を向けていた。

 それらを横目に今度はサンダーがロイヤルへ近づく。

 蹴られたところをさすりながら、スラッシュがサンダーを視認する。

「サンダーさんなら・・・」

 ボルトはロイヤルの近くでうずくまり、フブキ、ロック、サクラで互いに邪魔し合っている。

 サンダーが旗を取ろうと手を伸ばす。

「やっと来たか」

 ロイヤルは旗を地面に落とす。

「ん?」

 サンダーの目線は地面の旗へと向かう。

ロイヤルはその伸ばされた手をつかみ。

「へ?」

 ロイヤルはしゃがみ、サンダーを右ひざに乗せる。そのまま膝をあげ、サンダーを投げ飛ばした。

 サンダーは背中から地面に落ちる。すぐに上半身を起こし、ロイヤルを見る。

「手は出さないって・・・」

「これは受け流しだ。攻撃ではない」

 ロイヤルはこれを試したかったのか。

「腰打った・・・。いって~」

 ロイヤルは落とした旗を拾う。

「あ」

旗を取ろうとしていたボルトの手は空をつかんだ。

「そうだな。二人がかりなら、奪えるんじゃないのか?」

「嫌味かな~?」

「さあな」

 フブキはロックとサクラとの間に氷の壁を作り、ロイヤルを見る。

「やってみますか? 全員で」

  その言葉に全員が反応した。

「へぇ~? お前が一番、協力という言葉から離れているように思えるんだが?」

サクラが笑みを浮かべながら言う。

「アハハ、目が笑ってないですよ」

 サクラはフブキが土台にしている氷へ近づき、それを蹴りつける。

「ボルトやサンダーはよくこれを砕けるな」

 サクラは刀で氷をそぎ落としていく。

「全てを壊す必要はない」

「あれ? 壊れる?」

 氷は音を立てて崩れ始める。そして、それはロイヤルへと倒れていく。

 それを見たボルトはすぐさま体を起こし、その場を離れた。

「ジャンプでは・・・無理だしな」

 ロイヤルは現在、本と旗以外、何も持っていない。

「はあ。仕方ないか。移し身」

 ロイヤルはその身を狐の姿へと移す。茶色の体で、尾は数百本ある。

 その尾の数本がその氷の柱を支え、それを投げ飛ばす。

「移し身」

 ロイヤルは人へと戻り、旗と本を拾う。

「さて、仕切り直しだな。全員でも一人でもいいが。まあ、一時間以内に取れればいいな」


 ロイヤルは本を読みながら周囲を見渡す。あれから、何分経ったかは知らないが、今だに旗はロイヤルの手元にあった。

 相変わらず、誰かが近づくと他の奴が妨害をし、そんな攻防が繰り広げられていた。

「暇だな」

「隙あり!」

 フブキが旗へ手を伸ばす。

「時間だ」

 その言葉でロイヤルはフブキから距離を取り、円から出る。

僕とグリーン、ソードはロイヤルたちの元へ行く。

「ロイヤルがまた旗を取っているのは知っていたがな。まあ、時間だし」

 フブキがロイヤルの足元に突っ伏している。

「まあ、時間切れでなくとも、また妨害が入っただろう」

 ロックの周囲には、フブキを妨害する用の岩が浮かんでいた。

「もう終わりなんですよね。あ~あ」

 ロックはその岩を落とし、その場に座った。

「次は明日だな。考えておくから、今日のところは解散だ」

「あの~。そもそも、ロイヤルさんから旗なんて取れないですよ。手は、出してはいませんでしたが。あれでは」

「まあ、今回は確かにロイヤルがやりすぎたな」

「手は出してないがな」

「あれは出しているというか・・・」

「俺は単純に運動がしたかっただけだからな。旗が取りやすいとか、そういうのを気にしていなかった」

「すみません、シロさん。また、お願いします」

 全員、拠点へと帰っていく。

「ロイヤル、悪かったな」

「別に。もうやらないだろうな」

「それじゃあ、また明日」

「お前は拠点に戻らないのか?」

「僕は次の条件を考えに、少し散歩に行ってくるよ」

「そうか」

 ロイヤルが僕の肩に手を置く。

「頑張れよ」

無責任な応援。感情の入っていない応援。まあ、別にいいか。

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