4話
「たっけえな」
そういいながらグリーンは見上げる。
「いや、いつも上っているだろう」
「あれ、サクラ知ってたの?」
「私だけじゃなくてほとんど全員知っているが」
サクラが少しグリーンを睨む。
「傷などつけていないだろうな。この樹は百年に一度行われる祭りのシンボル。そして、この天国においてもシンボルなのだから気を付けてくれ」
「傷なんてつけないって、たぶん」
「うぁ~、たぶんって言った。怪しい~」
サンダーがグリーンに聞こえるか聞こえないかで話す。
「聞こえてるぞー。ま、いいけど。上ろうぜ!」
と、グリーンが天空樹に向き直る。
「あ、グリーンさんは一回戦ったので、今回は参加できないですよ?」
フブキがそういった時、グリーンは停止した。
「そうなのか? フブキ?」
「ええ、シロさんが言ってました。あとから来られても厄介ですし、念のため、凍らせておきましょうか」
フブキが満面の笑みでグリーンの首下を凍らせる。完全な追い打ちだ。
「さて、グリーンさんという強敵もいなくなったことですし、上りますよ!」
「じゃあ、私もおっ先ー」
フブキとロックが地面から氷の壁、岩の壁をそれぞれせり出し、上へと上がっていく。
「フブキには負けないよ」
ロックとフブキが競り合っている。
「私達には上に行くすべが樹を上る以外はないからな」
サクラがそう言いながら氷の壁を切ろうとする。
「切れない・・・。私は今回、あきらめようかな」
「切れない。なら、砕くまで」
ボルトが回し蹴りで氷の壁を砕く。
「俺も~」
サンダーも真似して岩の壁を砕く。
巨大な岩と氷の塔がバラバラと落ちてくる。
「おいおい。樹に傷がつかないようにしてくれ」
「大丈夫だって」
岩と氷が落ちきる。すると、フブキは落ちて来ず、ロックだけが落ちてきた。
「いったいな~! あたしは地面がないと作り出せないの!」
かなりの高さから落ちたようだが、なぜかぴんぴんしている。
「岩の壁が倒れたから滑り台みたいにして下りてきたの。フブキはもう旗取ったんじゃない?」
「まだひもが垂れ下がっているからな。今頑張れば何とかなる————」
そうサクラが言いかけたその時。サクラの目の前に氷塊が落ちてきた。
「これ~、死ぬんでは?」
「サンダー! のんきに言ってる場合か!」
サクラがグリーンの足元の氷を壊し、グリーンを抱えその場から離れる。他の仲間も大樹から距離を取った。
「フブキが氷を生み出して、壁キック方式で上っているのか」
「フブキも苦戦しているな」
その時、全員の目の前に巨大な氷の滑り台が出来上がった。そして数秒もしないうちにフブキが降りてきた。
「何度も作っていたら疲れてしまいまして。ハハハ。・・・あれ? なぜみなさんそんなに離れているのですか?」
「・・・・・・」
少し間が空き、サクラがフブキにつかみかかる。
「危ないところだったぞ! 馬鹿か貴様は!」
「ああ、氷の塊ですか? みなさんなら軽くよけてくれると思っていまして」
それは嫌味ではなく、本当にそう思っていたようだ。
「まあ、そうだが。グリーンは貴様に凍らされていたんだぞ? よけれるわけがないだろう」
サクラが頭に手を置く。
「って、グリーンさんまだ凍っていたんですか」
首と足元以外が凍っているグリーンをつんつんしている。
フブキはグリーンを溶かした。
「僕はもう疲れて登れませんし、ロックさんも登れないですよね」
「もう疲れた」
「取らないわけにもいきませんからね。グリーンさんが上ってくれればと」
「この垂れ下がってるひもを引っ張ってもダメなの?」
スラッシュがひもをつかむ。
「頑張れば落ちてくるんじゃないですかね」
「なら」
「旗と共に樹の枝も」
「あ~。うんやめておこう」
フブキはグリーンの肩に手を置く。
「あの、僕らもう樹を上る以外旗を取ることができないんですけど、ちょっと面倒なので、リタイアでもしようかと思っているんですよ」
そうフブキが言うと、グリーンはパッと明るい顔をした。
「つまり! 俺がここで取れれば!」
グリーンが力を使う。地面から根がせり出し、グリーンは上まであっという間に行ってしまった。
誰もが茫然とそれを見ていた。
「いいの? グリーンがとってもシロさんは戦ってはくれないんでしょ?」
「う~ん。スラッシュの言う通りなんだけど。まあ、仕方ないですよ。流石に歩いて登るのも億劫ですよね」
数秒たち、グリーンが旗を取って戻ってきた。
「これで、リーダーとの模擬戦の権利は俺のもんだぜ!」
グリーンが旗を持ってきた。そして、僕の目の前に自信満々に突き出す。
「どやっ! 俺の勝ちだぜ!」
「無効だ」
旗をグリーンから取る。
グリーンが動かない・・・。
「本当に面倒な奴だな。僕は模擬戦にわざわざ付き合っているんだ。またやってほしかったら、素直に従うことだな」
「はい」
グリーンが背筋を伸ばし、啓礼のポーズをとる。
ちょろい。
「すみません。グリーンさんは止めれたんですけど、僕らが上まで行けなかったんですよ」
「別に足で上れば、数時間でつくぞ?」
「え~」
全員があからさまに嫌なそうな顔をした。
こいつら。
「悪いが簡単にはしないぞ? これでも、簡単な方だと思っているしな」
「まあ、取りに行くだけですもんね」
「まあ、今回は誰とも戦わないってことで」
本来ならば、フブキかロックあたりが取れていただろう。仲間同士で潰し合いでもしたか。
「そう何度もチャンスを与えると思うなよ」