ディー姉 出現!
「悪ふざけがすぎるぞ! 猫神さんよ」
俺は気を練り上げる。どんな物質でも破壊する自信はある。ましてや、こんなふざけた像、石材だろうが指先でも粉々にすることはできる。つうか、絶対にぶっ壊す。
「ニャー!」
俺は怪猫音とともに拳を振るう。
「猫パンチ、肉き…」
言いかけると像はあわてて話しかける。既のところで拳をとめる。
―――――おやめなさい―――――
「やだね」
俺はもう一度拳を振りかぶる。しかし…。
―――――ゴタロウやおやめなさい。私ですよ、私―――――
なんだか、オレオレ詐欺のような台詞をいうが、お前、誰? 口調から女だとは思うが。
―――――もう、この子は昔から気が短いというか、ディーテですよ。ディーテお姉さん―――――
「は? ディー姉? 猫の石像にでもなったのか?」
―――――違いますよ。あなたは末弟ゆえに父が死ぬ前に教えておきませんでしたね。これは、猫パンチが代々利用しているターミナルです。―――――
「はあ、乗り物とか出てくるのか? ていうか、本当にディー姉なのか?」
ディー姉は我が流派猫パンチの師範の実の娘だ。もともと、猫パンチは家系で伝承されるが、師匠の子息に男児がいない故に一時はディー姉が後継者になるとか問題になった。
ディー姉は俺より腕が立つしな。他の兄弟子と結婚して血を絶やさずにする話もあったが、皆変わり者でディー姉が嫌がってね。そうこうしているうちに猫パンチの後継者が決めずに師匠が死んだ。皆、葬儀も出ずに好き勝手に外の宇宙に出て行った経緯だ。兄者達どうしているかな? ディー姉もその一人だ。
「こんなところで何をしているんだよ! 皆散らばってさ。師匠の敵を討つって考えは俺だけなのかよ?」
―――――それは、あなたの思い込みです。私たちは後継者とともに八玉の宝玉を守らければなりません。猫パンチ宗家の秘宝八玉は長兄弟子のイチモンジ=キクドウや次兄達にもまかせてあります。そして、ちょうどお前、ゴタロウが宗家近くの猫像にいることがターミナルを通して知りました。だから、それは、あなたに託します―――――
「はぁ! なんでだよ? 意味がわかない」
―――――しょうがない子ですね。今から、そちらに向かいます―――――
猫の像がなにやらガタガタ動き始めた。何コレ? そうして発光してグルグル回転しているうちに見覚えのある人間に出会う。
「本当にディー姉だ」
「当たり前ですよ! もう」
そんなことくらいで機嫌を悪くしないでほしい。俺より年が上で二十代半ばの女性だ。口調は優しいが見た目は激しさがある烈女という言葉がお似合いだ。あるいは女傑とでもいおうか。
端正な顔立ちで身長が普通の女性より高い。いまでもだけど憧れて言い寄る男はいくらでもいたが、この人は男と付き合ったことはない。この人の希望とすれば自分より強くて見た目が趣味にあっているかだそうだ。無論、俺に除外に入っている。恐れ多いので別にいいんだけどな。
「直に合わないと信用できませんか?」
「まあ、そ、そうすね」
この人を怒らすと肉塊になるので言葉には気をつける。猫像の時は偽物かと思ったので信用しなかった。嘘はついていない。
「ゴタロウ、血の匂いがしますよ」
「あ、これな。何者か知らないけど、宝玉を触って、勝手に朽ちた」
「こういうことにならないように各地に秘蔵しているのですよ」
「各地?」
「ええ、宝玉を全て集まれば凄まじい魔力が発して手に負えないので各惑星に保管しています。猫パンチの本来の目的は八玉の管理にあるのです」
「まんざら、宇宙の支配者になれるというのも戯言じゃないな……」
「当たり前です。早速ですが猫像に宝玉を取りなさい。あなたになら耐えられる」
ディー姉がひどく真面目なので宝玉を手にしたら死ぬとか考えことをやめる。というより逆らっても殺されそうなので手にする。
すると……!
「何これ、体の生命力が膨れ上がるような感覚」
「まずは、それになれなさい。体の気が急激に膨れ上がって爆発して死ぬのです。原理は猫パンチと同じですよ。選ばれしものが所有することができる理由が分かりましたか?」
なるほどな、そこいらゴロツキじゃ、すぐにボン! で爆死か……。それゆえにこんな危険物を守る気持ちがわかる。下手に悪党がもって良さそうではないことは直感できる。ろくな利用はしないだろう。
「では、しばらくは父の敵探しはやめなさい。いずれ機は来ます。私と兄弟子は各地に活動しますが、まず未熟なお前は宝玉になれること。そして忘れてならないのは私達猫パンチ意外にも宝玉を扱える物が出てくるということ。肝に命じなさい」
「はい、姉御! わかったぜ!」
と、即答したもののなにか裏が隠されているように感じる。だが。姉御には逆らわないお調子者に徹する。
「そういうくだけた台詞もやめるようにしなさい。では」
そういうと、ディー姉は猫像ことターミナルを使ってどこかへと消えた。
ふう、バトルがないのに疲れたな。そもそも、こんな大事を末弟とはいえ教えてほしいものだ。責任放棄して逃げるから。俺に手に負えるのか? なんだか意図的に巻き込まれたようにしか思えない。
「ひょひょひょひょひょ」
ずっと、傍らにいたじじいが奇妙な笑いとともになんだか勝ち誇っている様に見える。
「わしの言った通りですじゃろ?」
「ああ、わかった、わかった。それ以上調子にのると宝玉を突きつけるぞ!」
「ヒー! それだけはご勘弁を」
老人と色気のないやりとりをしながら、ふと、思う。これから、何をしようかね。宝玉に慣れろか…。それまでがなにか退屈そうだな。まあ、荒事がないだけマシだが。おきないよな? そうあってほしい。
あああ、長兄の名前が間違っているので訂正します。あまり読まれてないから気づかれてもいないとおもいますが…。ミャオ←訂正でイチモンジ=キクドウです。←訂正済み
いい加減ですみません。
↑のようにつじつまがあわないところが再度見直すとあります。
書いた後の手直しのほうが辛い。どこをなおすのか考えどころであるからタチが悪い。
少しでも良作にします。




