正体と元凶
「ようするに俺たちは戦いあうことで八玉の制御方法を身につけるという試練だったわけだな」
突然にシシロウ兄貴は口にする。もう、俺たちにわだかまりはなくなったと思える。昔の兄貴のように親しみを感じる。今までの争いはなんだったのだろうか?
「だけど、終わっていないわ。私たち猫パンチの宿命の決着」
サンゾウ姉貴が深刻に言う。恐れることはなにか?
「ああ、そうだな。宇宙崩壊をとめる役割は誰だということだ」
「それは、ゴタロウでしょ?」
「ああ、それは認める。が、最後の八玉に出会わなければならない」
「それって、人間なの?」
「擬人化したのだ。会えばわかる」
「なにもかも知っているようね。シシロウは」
「そうでもない」
「ところで最後の八玉ってどこにあるんだよ。サンゾウ姉貴が入手した八玉を探す道具を頼ってみるか?」
「それにはおよばない。俺が居場所に案内する。思えば俺の役割は俺の試練ではなくゴタロウ、お前の道標なのかもな」
シシロウ兄貴は吹っ切れたように装い実は悲しみをまだ背負っている。そんな気がした。
「お前が気にかけることはない。お前はお前の役目を果たせ」
「それが、兄貴の勇気付けになるなら喜んでやるさ」
「あなた達、あれだけ争っても本当に仲が良いわね~。妬いちゃうわよね」
「ちゃちをいれるな」
「いいじゃない」
まあ、俺たち三人がこうやって談笑しているのは奇跡的に近い。
殺し合いはロクでもない。だが、終わってみればなにかわだかまりがとけたようにも思える。しかし、俺たちは沢山の命を奪ってきたことを忘れてはいけない。
「いいえ、誇っていいのよ。ゴタロウ、あなたはあなたと関わっていた人間を見殺しせずにすんだじゃない。わたしもシシロウもあなたのおかげで生きているのだしね」
「なんだ? 俺の心中でも読めるのか」
「凄い? わたし凄い?」
「さて、じゃれあいはそこまでにして向かうぞ」
シシロウ兄貴は生真面目に進行する。宇宙の一大事があるのだから俺たちはバカやっているわけにはいかない。
「付いて来い」
端的に言われて俺たちはシシロウ兄貴の後へと同行した。
そこは、緑もない辺鄙な場所だった。もともと、この惑星アネイタは風光がよくない。だけど、様々な施設がありそれなりに栄えているのに。こんな僻地な場所があるんだなと俺は思った。だけど、俺たちは観光にきたわけではないので気にはならなかった。
何もない荒地に石材で作られた神殿のようなものが存在を主張していた。
「あそこだ」
言われるまでもなく、俺たちにもわかる。ただ相槌だけは打った。緊張が身体全体を支配する。俺はつばを飲む。
「頑張ってね。ゴタロウ」
サンゾウ姉貴が俺の状態を察してか勇気づける。託されたのは俺だ。怖気づいてもいられない。だが、緊張した理由は神殿の中から異様な気ではなくてどこか懐かし気が感じたからだ。それが、俺にとっては混乱させた。
「どういうことだ?」
「すぐにわかることだ」
シシロウ兄貴の案内は続く。然程ではないが神殿の中は迷宮のように侵入者阻むかのようにすんなりと前に進ませてくれない。罠はないが外敵を受け付けようとしない作りになっているようなきがする。シシロウ兄貴がいなければ俺たちは迷っていただろう。
小一時間たっただろうか、俺たちは物語の終着点へとたどり着く。そう確信した。
そこには驚くべく意外な人物が俺を待っていた。
「ディーテ姉……」
「待っていましたよ。ゴタロウ」
「どうして、ディーテ姉がここにいる?」
傍らにはミリアとアシアのおっさんの父子が控えている。
「そういうことだったのね」
「そういうことですよ」
「どういうことだ? サンゾウ姉貴教えてくれ」
「もう、察しがわるいわね! ディーテ=パレスあれは……」
「サンゾウ、私から話します」
ディーテ姉に制止され素直に黙り込むサンゾウ姉貴。
「ゴタロウが継承者になりましたか」
「誰が決めた。そんなこと」
「相変わらず素直でないですね。困ったものです。今までのやりとりで私が認めたでありませんか」
「わからんな」
「では、率直に言います。私は八玉の宝玉の本体です」
「は?」
「八玉の宝玉を所有することによりわたし本体はあなたたちを見極めていたのですよ」
「そういうことだったのね。シシロウが気に入らないといった言葉も頷けるわ」
「あなたたちには申し訳ないと思っています。しかしそれが私の役割です。私は人間ではないのですから……」
「それで擬人化というわけか……」
「最後ですから話しましょうか。父というべきカイラスと私の顛末を」
ディーテ姉は悲しそうに言った。
「いや、嫌なら言わなくたっていいんだぜ。姉さん」
「そういうわけにはいきません」
そして、ディーテ姉は語り始めた。全ての元凶であった二十年以上も前の話。
「それは宇宙の疫病」
俺の生まれる前の話だ。昔とはいえそこまで昔ではない。しかし、俺は知らない。知らないほうがいいとさえ思えた。だが、これで最後だ。ラストをおとなしく受け入れることにした。




