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サンゾウの実力

「くらえ! 猫パンチ、伝殺圧(でんさつあつ)!」

 


 相手に気と念の体内エネルギーを送り込み内部破壊することを目的とする猫パンチの基本で奥義に値する技を出す。俺は躊躇することなく拳で伝殺圧をぶつける。ガヴァダヴァダンことGVD(グヴド)だろうが人間だろうが問答無用に爆発する無慈悲な技だが……問題は当たらなければ意味がない。

 


「ハイ! タッチ♪」

 


 サンゾウは俺の手の甲を軽く触るとストンと腕が別の機動へと導く。ようするに攻撃が外れてしまっている。

 


 そして……。

 


「ぐっ!」

 


 肩から血が吹き出る。以前にソー=アンダーから攻撃をくらった位置からだ。

 


「こっちも伝殺圧よ。なんだか、完全には癒えていない新しい傷を見つけちゃたからつい」

 


「嫌なヤローだな。もっと新しい傷跡は土手っ腹にあるって知っているのに手加減か?」

 


「それやったらあなた死ぬし、グロイの嫌いだしね」

 


 しかし、俺の攻撃を払い除けた手の感触がなんだか柔らかい。くっ、何を考えているんだ? 俺は。それだけ鍛えていないだけの奴に無様を晒している……恥じるんだ! 俺!

 


 俺は構える。

 


「それより、まずは止血よ。それに肉体の回復もね。攻撃することしか習わなかったの?」

 


「うるさい!」

 


 しかし、正論だ。俺は敵に攻撃を受けることを前提に鍛えていない。シシロウ兄貴にも指摘されたことだ。性に合わないことを理由に修行を怠っていた。

 


「手が焼ける子」

 


 そういうと、サンゾウは静かにしかし素早く俺に触れる。柔らかい……。

 


「いい? 応用は伝殺圧と同じで微弱な気を体内に押し込んで体内の流れるエネルギーを感じ取ること傷口を癒すというイメージをつくること」

 


「ぐっ!」

 


 肩の傷口から再び血が吹き出る。

 


「しょうがないわね」

 


 サンゾウが俺の手を握ると俺の手から気が流れるのを感じた。サンゾウが無理矢理俺を操作しているようだ。しかし、この抱擁のような感覚はなんだ?

 


 傷はみるみるうちに塞がっていくのがわかる。サンゾウが俺を操作しているとはいえ実際は俺の身体が治癒をおこなっているので自力でコントロールする感覚が分かり始める。

 


「サンゾウ兄貴ありがとうございました」

 


 俺は深々と感謝を表す。

 


「あら、急に態度が激変! 頭でもおかしくなったのかしら?」

 


「いや、俺は指示されて何かを体得してくれる相手には感謝することにしているんだよ」

 


「あらあら、反抗期かと思っていたら……武道家として最低限の律儀はあるようね」

 


「そしてわかったぜ、あんたぐらいは凌駕できなければこの先がない。だから兄者には従っていくこと、そして寝首をかけるぐらい腕を磨くこと」

 


「いやねえ、野心たっぷりで……実質の戦闘力はあなたが上だと思うわよ。資質はシシロウさえ凌ぐと思う。だからね、もったいないとおもったの。おそらく、ディーテもそう考えていたでしょう」

 


「ディーテ姉がね……。もしかして、あんたも世話焼きか?」

 


 サンゾウは覆面の姿でクスクス笑う。そのままみれば何かを企んでいる様にも見える。

 


「利用価値があるだけよ」

 


「そうか」

 


 俺も不抜けたような笑みをクスリと吐き出してしまう。シシロウ兄貴より付き合いやすいのかな? 俺は、サンゾウという男を勘違いしていた。確実に強い。優しさを隠した歪みもある。悪くない。

 


「じゃあ、俺たち手を組むとしようか?」

 


「ようやくいい返事をもらえたわね。裏切ったら手段は選ばないわよ」

 


 そうだな。それがいい。へたな馴れ合いはいらない。だが、確認することがある。

 


「サンゾウ兄貴、俺は見た目を気にしない。どちらかといえば醜悪な人相の方が武人として好きだ」

 


 そう俺は言って、隙を狙ってサンゾウの覆面を俺は剥いだ。

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