勘違いしないでね
兄弟、兄弟といったところで弟子関係に血が繋がっているわけでもなしで相手を知った風に俺は装っていた。シシロウ兄貴はもっとも俺に近くて頼れる兄貴と思っていたが一番計り知れない遠さにも感じる。
で、こんなところでサンゾウ兄貴出くわし……というよりかは向こうからコンタクトしてきたのだろうが俺と組んでもどうしようもなしと思う。
しかし、俺はまだまだ腕を磨いていくし他の兄弟子を超える気概はある。ただ、いまは何もかもが遠い。
それに加えてサンゾウ兄貴は格下を思わせるような感じがする。逆になにか薄気味の悪い何かの皮をかぶった何かの形容し難い生物の怖さを秘めているような気もする。未知数といった感じがする。
「ちょっと~。私をジロジロと見ないでよね」
しかし、男なのに女言葉……。付き合いがあまりないのでよくわからない奴だが気色悪いオネエ言葉はやめて欲しい。これでいてシャイで覆面ときている。
「ところで、サンゾウ兄貴はあまり見ない間に華奢になっていないか?」
「ん? そうねえ~。ごついのって嫌じゃない?」
「そうかな……。まあ、筋肉ゴリラにまではなりたくはないが」
「でしょ~。私自身はゴツイの嫌なのよ。でも他の男なら色んな体型が好きね~細くても太くても。グフフフ」
唾飲む音が聞こえたか聞こえないか、覆面だからよくわからないがあんたの食指なんぞどうでもいい。
「ゴタロウもなかなかにいい男に育ってきたみたいね」
「すまん。俺にそういう趣味はねえ」
「あらあら、なによ~。褒めているのに可愛くないわね」
覆面男がそっぽを向いて拗ねてみせる。おそらくだけど。全然可愛くない。当たり前だが……。
森の中を黙々と進んでいく。拍子抜けするほど何も起きないからサンゾウと無駄話するしかなくなっているように感じる。しかしながら向こうは覆面で表情が見えないのにご機嫌な様子。さっきまで鼻歌を奏でたりしていた。正直、うざい。
「サンゾウ兄貴、こうしても退屈だし競争してみないか?」
無論、競争とはベーザから八玉の宝玉を探す道具をどちらがさきに奪うかのゲームだ。
「だ~め、あなたすぐに逃げるから」
「逃げる?」
「あなた、群れたがらないでしょ? 目的をとげるとすぐ一人になろうとするしね。それに気まぐれですぐに勝手に動くし」
「ああ、まあそういうところはあるな……。ディーテ姉の元から去ったし……。どうも俺のいるべき場所がころころと変わるところはある」
「自覚しているのね。私のもとこそ一番あなたがいるべき場所よ」
「何を根拠に……一番ありえねえ」
「言うと思った」
「あんたもそうだが、猫パンチ一派のなかで俺が一番に抱き込みやすいからだろ? 末弟だから仕方が無いけど舐めすぎだろ?」
「捻くれているわよ。期待しているからこそあなたに皆は絡む」
「利用しているだけだろ?」
「もう~この子は……。じゃあ、そんなあなたにプレゼント」
「プレゼント?」
サンゾウは携帯していたモニターを俺に見せつける。なんだか冴えないおっさんが拷問をうけている。
こんなもん見せてどうするんだ? 人に危害を与える俺でさえ不快にさせる。相手が悪人だとしても。
「じゃーん。これだ~れだ?」
「知らねえよ。アンタが趣味で苛められている人間」
「フフフ、正解はベーザこと、カーム=ツクダニでした」
「は?」
「もう、この子は心配ね。気付かなかったの? 私の部下が既にここを制圧したのよ。だから、こうしてあなたとのんびりお喋りしていたわけ」
気配を感じさせずにか、よほどサンゾウの手下は優秀か俺がマヌケのようだな。俺なんて必要ないんじゃないのか?
「意味のないことを……」
「うん。意味ないことをしたかっただけね。あなたとはろくにお喋りしたことなかったし」
「固執するなよ! オカマが」
「まったく鈍感な子ね~」
サンゾウはヤレヤレとした仕草をするのが俺を苛立てさせる。
「まあ、どの道ゴタロウもシシロウを追うでしょ? 先に八玉を発見するレーダーを手にした私に付いて行くしかないわね。フフフ」
「ふん、テメエから奪うって選択肢もあるぜ?」
「まあ、野蛮(やっば~ん)。でもいいわよ。手合わせしてあげるわ」
そういってサンゾウは組手に構える。おかまでもなよなよしていない。剛毅な風情よりかは流麗のように感じる。
無駄のない佇まい。正直、俺はサンゾウを見下していたが、とんでもないと理解した。
「本気でいくぞ!」
まずは、どう対応してくるかは俺の方から攻撃をしかけた。




