#84 見る側と見られる側 その16
同じ頃、生徒会室では――
修のクラスの6限目は英語であるというわけで先輩生徒会役員全員でその動向をモニター越しから見守ろうとしている。
「ようやく6限目だ……」
「最後の授業ですね!」
「確か6限目は担任の佐藤 美奈先生の授業だよね?」
「ハイ」
雄大以外のメンバーが話している中で、彼は少し違和感を感じ、首を傾げていた。
「……他のクラスより静かすぎではないか?」
それは他のクラスは移動教室の移動中の足音や他のクラスにいる同級生との会話などと廊下は騒がしくしているが、修のクラスはあまりにも静かすぎるのではないかと――
「高橋。吉川のクラス、授業の最初は小テストだぞ……」
「だから、定期テスト並みに教室が静かなのか!」
達也のおかげで彼のクラスが静かにしている理由が分かったため、雄大は画面に視線を向ける。
「さて、たくさんの監視カメラが向けられている中で吉川のテストの回答率はいかほどか?」
「あのー……達也くん。なんだかクイズ番組の司会進行の人みたいだよ?」
「いやー。今日の最後の授業だからさ……」
「まあ、達也くんっぽいからいいんだけどね」
「分かってくれるのは木沢だけだ!」
「そういう時のツッコミ係がほしい……ボク並みとは言わないけど、最低でももう1人はほしいな……」
「木沢。今、なんか言ったか?」
「ううん。なんにも」
「そうか……」
達也が話していた通り、修のクラスは授業の始めに小テストを実施することになっているが、彼の口振りはまるでクイズ番組のナレーター。
他の生徒会役員からするといつものことだと思われ、触れてくれることが少ないが、聡だけツッコミを入れてくれる存在なのだ。
「もうすぐ授業が始まるので、しっかり見届けましょう!」
「なんか鈴奈が仕切っているような気がするんだが……」
「達也先輩のクイズ番組の人よりはマシです!」
「まあまあ……達也くんに鈴奈ちゃん。落ち着いて!」
一旦、ボケや口論が落ち着いたら、また次のボケや口論のようなものがやってくる。
聡のようなツッコミ係はこの学校の生徒会には稀少な人材だ。
そのような状況で本日最後の授業である6限目が始まろうとしている――
†
6限目の開始を告げるチャイムが鳴ると同時に佐藤がトレーを片手に教室に入ってくる。
静かな教室に彼女は本日の授業の流れを説明し、生徒達は教科書やノートを机の中にしまい、すぐに小テストが行えるよう、準備を整えていた。
まるで、定期テストのように小テスト用紙が前から後ろへ回っていく――
窓際の列は不足していたのか女子生徒から「足りません」と声がかかり、佐藤はその生徒にテスト用紙を届けていた。
生徒達のシャープペンシルを走らせている音だけなので、モニターの音量を調整しない限りは何も聞こえてこない。
「ボク達が教室でテストを受けている時はいつもこんな感じなのかな?」
「なんか普段は複数のクラスの授業風景を見ているが、小テストの光景をまじまじと見るのははじめてだ」
聡と達也はそのモニター画面を食い入るように見ている。
そんな2人を見ていた鈴奈は自分も同じようなことをされているのではないかと感じていた。
「ということは……私はこの光景を見られているということですよね!?」
「鈴奈クンには悪いけど、見させていただいているよ?」
「うわぁぁぁ……私のケアレスミスだらけの小テストの数々が……先輩達や木崎くんに見られてる……! しかも、どアップで……!」
雄大から告げられた彼女はショックを覚えているようだ。
なぜならば、普段から教室で授業を受けている鈴奈からすると、とても恥ずかしい光景だから。
「おがすず、安心しろ。おがすずの顔とか手元とかはいつもどアップで映していない。クラス全体の様子くらいしか映らないから」
「木崎くんがいてよかったー。もし2年生の生徒会役員が私しかいなかったら知らなかったことでしたもん」
政則が彼女を宥める。
その会話を聞いていた聡はモニター画面から視線を外し、2人の方を見ていた。
2026/06/04 本投稿




