#83 見る側と見られる側 その15
6限目の授業の序盤は小テストが実施されたため、普段の授業サイクルが少し異なっているが、本来の授業に入っている。
「みんな、現時点で分からないところはないかな? 今日はこの単元の最初のところを私が読んでみただけだけど、次回から本格的に内容に入っていくからね。それと次回の期末テストの範囲は前回の中間テストより広くなるから、しっかり授業を受けること! みんな、分かったかな?」
修達が通っている私立白川大学付属高等学校は2学期制の学校であり、「前期」「後期」と呼ばれている。
通常の2学期制の学校は通常6月に中間テストが行われるが、この学校の前期の中間テストは3学期制の学校と同じ5月に実施されたため、期末テストは9月上旬に行われることもあり、テスト範囲はかなり広い。
後期の定期テストの範囲よりも広いので、この学校に通っている2年生、3年生曰く、前期の期末テストは「魔の期末試験」と言われているのだ。
そして、夏休みが終わると1年生の猶予期間が終了する時期になるため、全校生徒がピリピリすることとなる――
「まあ、後期は学校祭があるからそれをモチベーションにしてもいいかもしれないね。学校祭のあとは後夜祭として仮装パーティーが行われるのが定番だけど……あ、吉川くん。生徒会で学校祭の話題は出てないかな?」
佐藤は唐突に修に話題を振った。
周囲を見回すとクラスメイトからの視線が痛い。
そして、モニター越しで見ているであろう先輩生徒会役員からの視線も――
「……現時点では……まだ出ていませんね……」
彼は苦笑しながら素直に白状した。他の生徒達は学校祭の話題は出ていないのかと肩を落とす。
「――僕の勝手な推測になってしまいますが、現在は夏休みに実施される学校見学会が優先になるとは思うので、学校祭の話はまだ出ていないと思います。僕が教室にいる間に話し合っているかもしれないのでなんともいえません」
彼らが学校行事で知りたいことがあるというのは分かるが、生徒会で決まっていないことがあるのは事実。
たとえ、水面下で内容が決まっていたとしても「シークレットで」と言われることがあるのだ。
1年生の生徒会役員は修しかいないこともあり、彼からネタバレするわけにはいかないので、自ら防止するしかないのである。
現時点では後期に実施される学校祭以前に来年度入学予定の中学生向けの見学会の準備が最優先となる。
「決まっていたとしてもネタバレはできなかったりするからね。なんかごめんね」
「ハイ。答えられないことの方が多いし、生徒会役員の1年生は僕だけなので……」
周囲は修の答えにそういう事情があるのかと驚いたり、妙に納得がいかなそうな表情を浮かべている。
彼はどうして佐藤はこのタイミングで学校祭の話題を出したんだろうと密かに疑問を抱いていた。
「ちょっと雑談を挟んじゃったけど、そろそろ授業が終わりになるね。明日は授業変更はなくて、今朝のショートホームルームで伝え忘れてしまったことがあって……」
彼女はトレーの中身をガサガサと探し始める。
生徒達は佐藤に「なんですか?」「何か重要なことですか?」と問いかけてきた。
彼女はトレーに剥がされ、丸まってしまった付箋紙を見つけ、そこに書かれた内容を読み上げる。
「明日は委員会活動があるから、授業が終わったら各委員会の教室に移動してね!」
「ハーイ!」
「先生、委員会は重要ですよー」
「掲示板に貼られている行事予定表で確認済みです!」
彼らは佐藤に言われる前に自ら行事予定表で調べたりしていたようだ。
「みんな、本当に申し訳ないって!」
彼女がこういうと同時に6限目の終了を告げるチャイムが鳴り響き、本日の授業が無事に終了した。
2026/05/14 本投稿




