赤より赤い
封印はそこにある。
河童の里で 見たものと似てる。
石組みで四角に囲み、
それぞれの角に お堂。
それぞれの辺の中心に 塔。
真ん中にも 塔。
測れないけど、
多分、
正確に「東西南北」だろう。
真ん中の塔から、
黒い煙が 立ち上ってる。
「習字するから 手 離すね」
「手元 照らしてくれる?」
千歳に頼む。
山田さんは 縮んで大の字だ。
お手本を見て 絶望する。
複雑怪奇。
この環境で これを書くって…
イヂメか?
千歳と手を離すと、
目が悪くなった気がする…
…難航したが、
五枚 書いたよ、書いた。
一般人の視界のまま、
それぞれの塔に貼る。
パシ
回路に、
電気が通るような感じがした。
重苦しさが軽くなり、
光の通りがよくなる。
千歳と手を繋ぐ。
結界全体が 淡く輝いている。
でも…
「応急処置ですね これ」
「根本から 建て直さないと、」
「護符じゃ すぐ壊れます」
綻びが 見えるんですよ。
洞窟だからかな?
湿気で構造自体が劣化してる。
「生意気な…」
身体を起こしながら、
「一人前の口 ききやがって」
さて、
帰り道。
今度は登りである。
三人分の手持ちライトで、
見えはするが 歩き辛い。
質問してみる。
「…その身体になったら、」
「瘴気って 平気なんですか?」
「高揚するな」
「人の時みたいに具合悪くは、」
「ならない」
「だが凶暴になる」
「ちょっとトんでた」
ハイ になるんですか?
それはそれで マズいのでは…
「山田さん 分かってたでしょ?」
「あん?」
「自分が封印できないって」
「タダじゃ済まないとは、」
「思ってたよ?」
「道仁さんが『死ぬ気か?』って、」
「言ってましたけど?」
「死ぬの?!」
なんで そこで驚くんだよ?
絶対 この人 説明受けてるはず。
足元が荒れて、
千歳が掴まってくる。
涙と汚れで 美人台無し。
「そろそろ、」
「助けてもらわないと 迷子だね」
手を握ろうとしたら、
叩かれた。
「あの女…」
「なんで 本気なの?」
俺が聞きたいです。
「実際に会ったの 三回目…」
「あ、四回か?」
「俺から 何かした覚えないよ?」
「本当だよ?」
「…いい匂いするのよ」
へ?
「怖いの!」
はい、怖いです。
同意します。
「噛まれないようにしろよ?」
山田さんが言う。
…温泉で 何かあったのかな?
行きは、
迷いながら 来たらしいので、
手を繋いだ 俺たちの、
後をついてくる 山田さん。
千歳のおかげで、
最短ルートを来たが、
初見なら 遭難するぞ?ここ。
探索したら まだ何かありそう。
緩やかなスロープは、
地味に腰にくる。
倒れそうになりながら、
やっと、外に出てきた。
山田さんが暴れ過ぎたおかげで、
本殿が 解体寸前…。
道仁さんが だだっ広い境内の、
真ん中で胡座をかいて待ってる。
「首尾よく 行ったようだな」
結果オーライなだけです。
意外と、
ボロボロになってる道仁さんに、
次第を説明する。
山田さんが 説教されてる。
そもそも おまえは できんのだ と。
「弾けて飛ぶぞ?」
大惨事です。
……………………
ここの再建も 検討するそう。
危険度の見積もりが甘いそうで。
でも、
「元栓」の封じは ともかく、
「場所」の封じは 通り抜けられる。
手段がある。
いずれ、
「琥穴」を解放する手段を、
上津絵里は 手に入れる…
表があれば、
裏がある。
……………………
道仁さんは、
また 走って帰った。
「吸血鬼種」が、
周辺で嗅ぎ回ってるのは、
今後の課題。
「川北正三の件も、」
「もっと 掘り下げねばな」と。
とうとう 月を跨いでしまったが、
騒がしかった 今年の秋も終わる。
全てが終わって、
本殿を見返した時、
後ろの山の赤が、
朝日に照らされた。
赤より赤い。
……………………
「お疲れ」
山田さんが 車を降りる。
帰り道は、
二人とも 泥のように眠ってた。
「はなちゃん、」
「千歳ちゃん、」
「またな」
そう言って、
街に消えていった。
千歳が微笑んでる。
帰るか。
「いつまで休み?」
「一週間もらった、」
「とりあえずね」
「大丈夫なん?」
「役職、降りた方がいいかも」
「…続けるの?」
「だって、」
「楽しかったじゃん」




