第40章 キレイにしてあげるから
第40章 キレイにしてあげるから
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「着いたよ、」尚也は神代をソファに座らせ、彼の足元にしゃがみ込んで優しく言った。「ご飯もちゃんと食べてないだろ。今お腹空いてるんじゃないか? カボチャスープ作ろうか。クルミとアーモンドをいれて、パルメザンチーズを振りかけてさ、どう?」
「尚也、」彼は顔を上げ、瞳に涙をあふれさせた。「隙間クラブがどんな場所か知ってる?」
実は幸子からその名前を聞いた後、尚也は大まかに調べ尽くしていた。しかしそのクラブは違法行為によって解散されて久しく、十分な情報を得られなかったため、彼は首を横に振った。
「永久に知らないで。」
「ああ、俺はそんなクソクラブのことなんて微塵も興味ないよ。絶対人を痛めつけるような場所だろ。琉華、辛かったな。」
それを聞いて、神代はたまらず尚也の胸に飛び込み、大声で泣き叫んだ。
天国に偽装されたあの場所は、巨大な誘惑で世間知らずの少年たちを騙して引き込み、少しずつ泥沼へ引きずり下ろしたのだった。彼らが我に返った時には、拒绝する立場すらとっくに失っていた。
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尚也は彼を思い切り泣かせ、心ゆくまで感情を吐き出させ、彼を強く抱きしめながら背中を優しく撫で続けた。
泣き声が次第に弱まり、神代は尚也の胸から離れた。「尚也、僕みたいな汚い人間が、君と一緒にいたいなんて思って……本当にごめんなさい!」 彼は深く頭を垂れたが、再び涙をこらえきれずに咽び泣いた。
「バカなこと言うなよ、」尚也は彼を引き起こし、指で涙を拭うと、顔を寄せて優しく言った。「どこが汚いんだよ? 中も外も、俺がキレイにしてあげるから。」
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熱を帯びた体が皮膚にまとわりつく水滴を絶え間なく蒸発させ、浴室には湯気が立ち込めていた。
神代にはなぜ尚也のEDが突然治ったのか分からなかった。とにかく、彼の体にこびりついていた“汚れ”は完全に消え去ったのだ。中も外も。
尚也の愛は、彼にとって最高のボディソープだった。
彼との繋がりを解くのが惜しくて、そのままの体势で浴槽の中で強く抱き合い、絡み合っていた。
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尚也は口元を緩ませた。彼は自分がなぜ突然治ったのか分かっていた。心残りのシコリは壁のようなものだったが、深海に落ちた子を救おうとしたその瞬間、その壁は跡形もなく崩れ去ったのだ。
「琉華、」尚也は優しく神代の名前を呼び、彼のお尻をキュッと抓んだ。「そろそろ降りないと、俺、精尽きて死んじゃうぞ。」 そう言うと、彼のお腹が賑やかに、そして盛大に鳴り響いた。
神代は貪欲にもう一度深いディープキスをねだり、それから名残惜しそうに彼の体から降りた。
「この欲張り小馬鹿、そんな顔して、次がないとでも思ってんのか? あるに決まってんだろ。」 尚也は彼の顎を軽く突いた。「あんたはもう俺の嫁さんなんだから。」
「じゃあ、先生はどうするの?」
「どうするって? 彼女は俺とお前がどうこうなるのを気にしてないよ。」
「じゃあ、僕も尚也と先生のことは気にしない。」
「じゃあ俺たち三人で、恥も外聞もなく一緒に暮らそうか。」
「うん!」
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幸せな人間は無限の勇気を持つ。
朝、愛する人の腕の中で目を覚ますことは、全ての出来事を許すのに十分だった。
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昨日の件はプライバシーの拡散に抵触するため、あのコメントと関連リンクはすぐに削除された。しかし、内容はすでに広範囲に拡散してしまっていた。尚也は神代が思い詰めるのを恐れ、自ら申し出て自宅でリモートワークをした。
「バカなことなんてしないよ、尚也。今では逆に吹っ切れたんだ。一番見られたくない無惨な姿が晒されたんだから、もう二度とビクビクしながら生きなくて済む。」
神代はある重要な決断を下した。隙間クラブの株主たちと、自分の知っている常連たちを告発することにしたのだ。
「当時クラブが摘発された後、技術管理をやっていたお兄さんが逮捕されて2年間服役したんだ。彼は何も吐かなかった。出所後、僕を探し出して多くの秘密資料を手渡してくれた。当時は手元が寂しくなった時にその金持ちたちを脅迫するためのネタにしようと思ってたんだけど、数日後にそのお兄さんは“自殺”させられた。僕は怖くなって、その資料を隠し、誰にも言わなかった。でも今、元凶たちは相変わらずのさばっていて、辱めを受けた側の僕が裁判台に送られている。こんなの不公平だ。」
尚也は頷いた。「全力でサポートするよ。でも、警察に直接提出しても揉み消される可能性が高い。記者に渡した方がいい。」
「記者だって、あの人たちの地位や権力を見たら、全部を報道する勇気があるかどうか……」
「じゃあ、先生に相談してみよう。」
「うん。」
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深町には大学時代に新聞学部にいた友人がいた。ここ数年で最も硬派な独立調査ジャーナリスト、椎名徹だった。
彼は神戸から大急ぎで駆けつけ、徹夜で全資料を確認した。
「神代くん、これらが公表されたら、君の生活は二度と平穏を取り戻せなくなるぞ。」
神代は頷いた。「覚悟はできています。当時僕たちの仲間がどれだけ非業の死を遂げたか知っていますか? 僕は運よく生き延びたのに、ずっと暗闇の中に隠れていました。今、誰かが僕をドブから引きずり出し、静かに生きることすら許さない。僕を死に追いやろうとしている。でも、彼らの思い通りになんて絶対にしてやりません!」
「よし、それなら一番効果的な方法を教えよう。生配信(ライブ配信)をやることだ。私の影響力なら十数万人の視聴者を集めるのは難しくない。すべての資料をその場で公表し、その後に警察へ提出する。そうすれば、あの黒幕たちが裏で圧力をかけようとしても、世間が絶対に許さない。」
「同意します。」神代は尚也に向かって言った。「この期間、僕は外に部屋を借りて暮らすよ。君と先生の生活に迷惑をかけたくないから。」
「バカ言え。俺や有紗がそんなこと怖がると思ってんのか? 琉華、俺と先生は味方だ。全力で支えるよ。」
椎名はクスッと笑った。「学生時代から深町は度胸のある女だったからな。ところで神代くん、あのコメントを書き込んだのが誰か、心当たりはあるかい?」
「確証はないけれど、ほぼ夏目監督だと思います。でも関係ありません。彼の卑劣なやり方が、逆に僕の勇気を引き出してくれたんですから。彼を恨んではいませんし、復讐したいとも思いません。ただ、昔の本当の悪人たちが罰を受けないのが不公平だと思うだけです。彼らを告発して、正しいことをしたいんです。そして、」彼は尚也に向き直った。「胸を張って尚也の隣に立ち、君に愛されたいんです。」
「このバカ。」
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それは長く苦しい戦いとなった。三人の関係性も世間からあれこれ取り沙汰され、非難を浴びせられたことで、彼らの正義の告発すら正当性を失いかけるほどだった。
しかし、神代はまるで闘士のように無尽蔵の毅然さを見せ、すべての圧力に耐え抜いた。尚也と深町も犠牲を惜しまず、全力で彼を支え続けた。
かつて悪名高かった隙間クラブが摘発された際、警察は下っ端を数人捕まえただけで、真の幕後や違法な“商品”やサービスを享受していた顧客たちは一切のお咎めを受けなかった。その後、彼らは引き延ばし工作を図り、世間の記憶から風化させていったのだ。だが今回は、関心が前代未聞の高さに達し、多くの調査ジャーナリストたちが参入したことで、戦闘力は大幅に跳ね上がった。
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翌年6月、花開く街のラベンダーが紫の海洋となって咲き誇り、住民たちが続々と新居へ引っ越してきた。
神代の度重なる懇願により、深町は彼女の家と彼の家を連絡通路で繋ぐことに同意した。
「これで尚也は、前半は先生の家で寝て、後半はシーツを被って僕の家に来られるでしょ。シーツを被らなくてもいいけど。」
尚也は呆れて言った。「頭おかしいだろ! 俺がこの連絡通路のために、何回申請窓口に通ったと思ってんだ? もういいや、今夜はどっちの家で寝るんだよ?」
「私、書かなきゃいけないレポートがあるから、琉華のところへ行きなさい。」
「でも僕、今夜原稿の修羅場なんだ。」
「What!? 二人揃って俺を拒絶するのかよ!」尚也は焦った。一体全体、思い描いていた“両手に花”の幸せな生活とどこで狂ってしまったのだろう?
「冗談よ、私のところに来なさい。レポートを書き終えたら……ね。」深町は寄り添い、尚也の肩に腕をまわして、彼の右頬にチュッとキスをした。
「実は原稿なんてとっくに描き上がってるんだ。尚也、今夜は僕のところに来て。また新しいテクニックを研究したから、早く試してみたいんだ。」彼も寄り添い、尚也の肩に腕をまわして、彼の左頬にチュッとキスをした。
「お前ら、わざと俺を困らせてんだろ……?」尚也は情けない顔で天井を見上げた。「母さん、助けてくれ~!」
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