加藤飴太郎
ーーー殺してやる……殺してやるんだから!!!
「はっ!!」
飛び起きた俺は、見慣れた部屋を見渡した。どうやら、いつもの夢だったらしい。
「なんだ、夢か……。最近、同じ夢ばかり見るな……」
飴太郎はここ一週間、毎晩のように同じ夢を見ていた。夢の中では、決まって同じ女が自分を殺そうと追いかけてくるのだ。
「頭も痛いし、夢のせいで十分に眠れていないのだろうか……」
顔でも洗おうと、飴太郎は立ち上がった。傾いた扉と壁のわずかな隙間を縫うようにして、部屋の外へと出る。
「確か、こっちに行けば……っと、あったあった」
そこには、茶色く変色した古びた蛇口があった。飴太郎はいつものように、蛇口を二、三度回す。
しかし、水はなかなか出てこない。
「ん? 水が出ないな……」
いつもなら、何度か回したあと、反対方向に少し戻せば、ジョボジョボと水が出てくるはずだった。
叩けば直る、という話をどこかで聞いたことがある。蛇口にも効果があるのだろうか?
そんな、どうでもいい問いかけの中に、飴太郎はささやかな幸福を感じていた。
それと同時に、怒りも感じていた。
「蛇口のくせに水も出せないなんて……ゴミが……」
飴太郎は、たとえ相手がただの「物」であっても、そこには確かな意思や考えがあると信じていた。
「いっそのこと、捨ててしまおうか……」
そのときだった。
蛇口の先から、ポタリと一滴、水が落ちた。
飴太郎はそれを見逃さなかった。
「なんだ、出るじゃないか」
ニコリと笑い、もう一度蛇口を捻る。
しかし、やはり水は出なかった。
「ゴミ……ゴミ……!!」
飴太郎は目を剥き、蛇口を睨みつけた。歯ぎしりの音は、まるで飴を噛み砕いているかのようだった。
ふと、飴太郎と蛇口の間に目をやると、そこには黄色く変色した液体が溜まっていた。
「ふぅ……ふぅ……」
飴太郎はしばらくその液体を見つめていたが、やがて、おもむろに蛇口を大きく捻った。
その瞬間、どこからともなく声が響いた。
「ぎゃ!!!」
甲高く、全身に突き刺さるような金切り声だった。
「誰だ!!!」
声に反応した飴太郎は、勢いよく後ろを振り返った。
扉のそばに、黒い影が見えた。
「待て!!!」
飴太郎はすかさず、その影を追いかける。
「絶対に捕まえてやる……!! この刑務所に潜む幽霊を!!!」




