00_序章
音がした。
鍾乳石の先端から、水が一滴、石の床に落ちた。小さな音だった。洞窟の冷えた空気の中にかすかに染み込んで、消えた。
しばらくして、またひとつ。
間があいて、またひとつ。
等間隔ではない。急ぐわけでも、待つわけでもない。ただ重力に従って落ちるだけの、何の意志もない音。それがどれほど長い間続いていたのか、知る者はいなかった。知る者など、そもそもここにはいなかったのだから。
だがその音が、何かを呼び起こした。
暗がりの中に、わずかな動きがあった。冷たい石の上に横たわるそれは、長い眠りの底からゆっくりと浮かび上がってくるように、まぶたをわずかに震わせた。まだ目は開いていない。何も見えていない。聞こえているのはただ、水の音だけだった。
また、音がした。
ひとつ。
それが引き金だったのかもしれない。あるいは最初の一滴からずっと、そうなることは決まっていたのかもしれない。そんなことは、目覚めたばかりの何かには、まだわからなかった。
洞窟の奥で、静かに、何かが目を覚ました。
本作はBug&Lavi Projectという創作群の一環として制作しています。
詳しくはこちら→https://bug-and-lavi-project.com/
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